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最弱(ゴブリン)生活に順応しすぎた結果、最強(ドラゴン)は堅実な努力に生きる。  作者: 秋月みのる
一章 何かがおかしいゴブリン生活
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とある人類最強、転生する


 ――大分長い事眠っていた気がする。


 そうか。眠っていたのか。あの暗い所を俺は脱出することが出来たのか。

 今はもう白くて暖かい光につつまれている。恐怖はない。

 再び世界に受け入れられたという認識がある。


 ……しかし、眠い。こうも眠くちゃ動けねぇ。

 もう少し休ませて貰うか。

 起きたら俺は再び最強を目指す。過酷な修練が待っている。

 五十年頑張ったんだ。今は一度英気を養うときだ。

 

 俺は白い世界で微睡みの中、睡眠と覚醒を繰り返す。

 白い世界の外から何度か衝撃音が鳴り響いて起こされたことがあったが、この白い世界は優しく俺を守ってくれた。この白い世界の中では不思議と不安はなかった。



 ――穏やかな時間にもやがて終わりが来る。

 白い世界に罅が入り始めた。優しい世界で結構気に入っていたんだがな。

 壊れちまったんなら仕方がない。

 不思議と眠気は収まっている。ようやく頭がはっきりしてきた。


 俺の名前はディーク・フリーゲル。

 よし、しっかりと思い出せる。過去の記憶もなくなっちゃいない。

 俺は俺のままだ。違う存在になっちゃいねぇ。しっかりと自我を保っている。

 これで安心して再び最強を目指せるってもんだ。 


 罅の向こうから俺の知っている世界が覗いている。

 どっかの洞窟の中みたいだな。

 洞窟の中に俺はとある生き物を見つけた。

 白い竜の子供だ。


 間違いない。奴だ。

 こうしちゃいられない。

 

 俺はひびの入った世界に手を伸ばす。

 すると、白い世界は呆気なく砕け散った。

 俺は世界に放り出される。

 知らない世界じゃない。知っている世界だ。

 さしずめ言うべき言葉はただいまって所か。


 不安はない。わくわくしている。

 問題は今の俺が何者かって所だな。


 鱗に覆われた黒い腕、鋭い爪。間違いなく人間じゃない。スケルトンでもない。

 背中を確認してみると大きな羽。そして長く伸びた尻尾。

 間違いない。ドラゴンだ。俺がその強さに情景を抱いた存在だ。間違えるはずがない。

 過去を遡って考えても俺がドラゴンになったと考えるべき根拠もある。

 俺は白の王に喰われた。そしてその腹の中で無我夢中でもがいて光に触れた。

 推測するに俺の魂はその時にドラゴンの卵に宿ったと見るべきだ。


 竜ってのは最初から強い存在だ。父親はわからないが、間違いなく白の王の子供ではある。

 潜在能力が高いことは間違いない。生まれとしては当たりだが複雑な心境だ。

 俺は前世の経験から弱い存在が強い存在に打ち勝つことにある種の意義を見いだしている。

 種の超越を目の当たりにする程、滾る事はない。努力が種族差という不条理を覆す。

 ここにある種の美しさを感じているのだ。

 最初から強い竜が、その辺の魔物を蹴散らしたって当たり前でしかない。そこに感動など何も無い。

 だから少しばかり残念だ。だが、その分最強には手が届きやすい。

 最初から強い竜が努力を重ねれば間違いなく最強になれる。俺はそう確信している。

 強烈なブレスに、膨大な魔力、凶悪な腕力に、理不尽なまでの頑丈さ。極めつけは再生力の高さ。

 ここまで揃っていて死ぬドラゴンはアホだ。元人間だった俺はそう思っている。

 俺が竜なら間違いなく最強の座を取れる。

 種を超越する楽しみも捨てがたいが、最強の肩書きはやっぱり魅力だ。

 男なら誰でも世界最強に一度は憧れるもんだ。

 竜として世界最強になって、それに飽きたら今度は弱い魔物になってそこからどこまで這い上がれるか試してみるのも面白いかも知れない。


 楽しみだ。俺は終わらなかった。終わらなかったから今がある。

 そしてありがたいことに早速目の前に一つ楽しみがあるじゃないか。

 人間だった頃は俺の好敵手の一人。ドラゴンになった今では兄弟か。

 今日は奴は血まみれじゃない。万全の状態だ。

 お互いドラゴン。条件は五分。

 ここまでお膳立てされた状況に俺は笑いが止まらない。


 さぁ、早速やろうぜ。

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