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食物人間 -しょくにん-  作者: 弦陸 流音
第二章 運命と選択
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第二章 第二話


第二話



なんとなく聞いてはいけないような気がしたんだ。


サラ、彼女は料理人だ。

そんな彼女に、俺達しょくにんの頭を食べてみたいのかなんて、

おそらく彼女の本心は決まっている。


容易に想像できる。


サラは考える間もなく答えた。


「あったりまえじゃない!あなた達の前でいうことじゃないけど、

私の夢は、しょくにんの脳を使った絶品料理の考案なのよ?」


「ま、まさか、お、俺たちを油断させて襲って頭を食べるつもりか!?」


サラはうつ向いて腰に下げたナイフの束に手を当てる。


「ふふ みんなが寝静まった後、

このナイフで首を落としてしまえば簡単にできるわね」


サラがナイフをちらつかせる。


「やはり裏があったのか!?」


「な~んて、この一カ月そんなことできる隙はいくらでもあったわ。

外しょくの私がそんなことするわけないでしょ?

保護中のしょくにんにそんなことしたら、

組織として存続の危機よ?」


「そ、そうだよな。ち、ちなみに食べたことはあるのか?」


「なんて言っていいかわからないけど、

残念ながら喜ばしいことながら一度も食べたことないわ。

ま、あんた達は私が保護したんだから、

もし不慮の事故で亡くなったら、

遠慮なくあんた達の脳をいただくことにするわ」


なんとも不吉なことを。


「あの~サラさん 冗談はやめてくれ」


「冗談言っている顔に見える?」

ふふと笑ってサラも自動販売機のほうに行ってしまった。


「外しょくに助けられて育った…か…」


なんだろう、

その言葉を聞いてとても胸が熱くなったように感じた。



そこからあっという間に3カ月ほど経過した。


たくさんの怪我人やお腹を空かせた人たちを助ける活動、

つまりはサラの仕事の手伝いをつづけた。


ユキは7歳ということもあり、

小学校に通っている。


平日の日中は俺かのぶなが、交互にサラの仕事の手伝い、

残った人がお留守番をして家事を実施している。


「今日は日曜日だ。何の本読もうかな」


休日はその時の予定に応じて全然違うが、

仕事さえこなせばあとは何をするにも自由である。


特に予定のない日は、

ユキを遊びに連れて行ったり、ゲームをしたり。


俺は見たことがない本ばかりあるので、

本を読んだりすることが多い。



「のぶながは今日何するんだ?」


のぶながはよく外に散歩に出ることが多い。

俺がみんなの食べた食器類を洗いながらのぶながに話しかけた。


「なあ、デルタ。脱走して4カ月、

ずっとサラに面倒見てもらっているけど、このままでいいのかな」


話がかみ合わない。

なんてことない、よくある光景だ。


「俺も充実していて特に何も考えたことなかった。

だが確かにそういわれると、サラに申し訳ない気がしてきた」


ソファに腰掛けたのぶながが天井を見つめる。


「俺達って何のために産まれて、何のために生きてるんだろうな。

人間としょくにんっていったい何が違うんだろう」


「のぶなが…」


こんな彼を見たのは初めてかもしれない。


そのあとサラとユキにはいつも通りの態度で接していたが、

どこか覇気が無いように見えた。



俺は、のぶながから「脱走しよう!」

と言われるまで施設で当たり前のように日々を過ごしていた。


仲間内と授業を受けたり、農場で働いたり、

特に何もない日にはのぶながや他のしょくにん達を話したり、

ボードゲームをしたり。


まあ尤もどうも心理戦のボードゲームが俺は苦手らしい。


勉強ばっかしてないでポーカーフェイスも少しは学べなどよく言われたものだ。


そんな生活も楽しかった。

充実していたのだ。


「俺は施設でお前たちと過ごしていた日々も、

とても楽しかった。」


でも、のぶながはどんな気持ちのまま施設で、

日々を過ごしていたんだろうか。


俺が考えもしない事、

鳥のように自分の翼で自由に空を駆けてみたい。


とでも思っていたのだろうか。


「なあ、デルタ…いやなんでもない」


そんなのぶながと一緒に外の世界に出て、

サラの仕事の手伝いをしながらたくさん人を支援してきた。


こんな生活にとても充実して、

のぶながの事を気にかけていない事に気が付いた。


今日、彼の顔を見て、初めて彼のことが分からなくなった。


(のぶなが、今度は俺がお前を導いてやる)



そう決意したものの、

今のデルタにはのぶながと何をすればいいか答えが出せずにいた。



翌朝、のぶながは普段通りの顔に戻っていたが、

一応心配なので声をかけた。


「のぶなが、なんかここ最近のお前ちょっと変だぞ」


なんて言っていいかわからないのでストレートに聞いてみた。


「え、なに?変って何が?」

「ん~上の空っていうか心ここにあらずっていうか」


「ふむ~ こい かな」

「は?滝登りするあれか」

「若くてもな、そういうピチピチじゃねぇよ!」


となるともしかして こい ってあれか。

「ユキが見てたアニメで男女がおかしくなっていったあれか。

え、まさかユキ?」


のぶながは肩を落とす。


「おま、それはねーだろ。

そういうのは犯罪だって知ってるか?お前」


冗談だ冗談。


「ユキは可愛くて愛おしいが、

そういう感じじゃないってことは俺でもわかる。

消去法でサラか」


のぶながは左右を確認し言った。


「ばか!あれはどうみても恋人の対象ってより、

お母さんってやつに近いだろ。ねーよマジで」


続けてのぶながは言った。


「俺はな、サラとかマナミさんとか、

なんかこう逆らえないのがちょっと嫌っていうかなんというか」


あーあ、俺のせいじゃないが一応謝っとくぞ、のぶなが。


「なんかすまん でも、相性いいと思うぞ俺は。

じゃないとお前の暴走誰が止めるんだ」


それはお前とのぶながが言う。


「俺は嫌だぞそんな役目、

お前とは家族だが恋人じゃない、性別も一緒じゃないか」


「そ、そんな見捨てるのかよ俺のこt…」

「あんたたち、さっきからなにイチャイチャしてんのよ」


のぶなが、後ろにも目をつけろ。と後で教えておこう。


「え、あ、さ、サラさん聞いてた?」


ぎこちない笑みを浮かべるサラに、

のぶながが恐る恐る聞いてみると。


「今日の夜はユキと二人で超希少部位でも食べようかな」

「え、なぜ俺が食す側じゃなくて提供する側なんだ。」


サラ、それはおかしい。


「シラを切るなデルタ!かまをかけたのはお前だろ!」


「共犯 両成敗 極刑に処する」

「そんな理不尽な!」

なんてことない、いつもの会話だ。



のぶながは腕を組み言った。


「まあ、本質を言うと、おれは外の世界に恋い焦がれている」


「いや、それは普段のお前そのものじゃないか」

「だからな、そろそろ外の世界での夢を叶えたいなと…」


ぴーんぽーん この時間はユキだ。

学校から帰ってきたようだ。


「ただいまぁ 宿題いっぱいでたぁ デルくんのぶのぶ助けてぇ」

ユキは帰ってくるなり早々にランドセルからたくさんの教科書とノートを出した。


「ま、明日から連休だから仕方ないな。

よし、さっさと片づけてみんなで遊ぶ時間を作ろう」


のぶながは得意げに手を挙げた。

「はいはーい、社会科はこののぶながに任せろ!特に日本史」


ユキは首をかしげる。

「社会科って何?」


サラはのぶながの肩を叩き。

「残念ねのぶなが、社会科の科目が入るのは3年生 つまり来年からよ」


「まじか…じゃっデルタ お前に任せた。」

「おーう じゃあ家事よろしくな」


のぶながは俺の肩を叩き、キッチンへを消えていった。


あ、のぶながの夢聞きそびれた。


そういえば彼の夢って聞いたことなかったな。

また後日聞こう。



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