表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食物人間 -しょくにん-  作者: 弦陸 流音
第三章 悪と正義
22/26

第三章 第五話


第五話


たった一人減っただけで、この部屋の雰囲気ががらりと変わる。

彼がいたときはどんな雰囲気だったっけ。


「ねえねえ聞いて聞いて!」


と元気に話すのはユキだ。

きっと耳が膨れる方のお土産に違いない。


「すごいんだよプラント工場って、

工場内をね?バスで回るんだよ!」


バス、俺も乗ってみたい。


「なぜバスなんだ?」

とユキに聞いた。


「あのね、端から端まで歩くと30分くらいかかるんだって!」


なんともスケールが想像出来ない。


「歩いて30分…え、ここから施設まで20分もかからないぞ?」


サラも気になったようで、

「いったい何個工場回ったの?」と聞いた


「え?ひとつよ?」


にわかに信じがたい。

この新宿より広いんじゃないか


「あのね、それでね、私すごい人に会ったの」


通信端末を操作し始めた。

おそらく写真を撮ったのだろう。


「えー、どれどれ?」

とサラは覗き込んだ。


「え?この人に会ったの?」

とサラも知っている人物のようだ。


どーれどれ、と俺も覗き込むことにした。


ユキの隣に立っている人は、かっちりとスーツを着て、

腕を前に伸ばしてピースサインをしている。


「の、のぶなが!?」


そして二人ともニヤニヤした顔がおさめられていた


「だからか、だからのぶながが急にメッセージを送ってきたのか」


たしかメールはお前は変わらないなてきな内容だったか


「おいユキ、のぶながに何の話をしたんだ」


「え~なにって近況報告しただけだよ~?」


最近デルタがお父さんぶって、ちょっとだけ厚かましく感じることがある。

なんてお話をしたのは私とのぶのぶだけの秘密。


それからユキのお土産紹介タイムが始まった。

サラは当番なのでお風呂掃除とご飯の準備をしに行った。


「はい!お土産は以上です。

さぁ久々の我が家のお風呂だ!」


「3日ぶりだろ、行ってらっしゃい」


ユキは立ち上がり後ろを向いた。


ユキの後ろ姿を見つめる。大きくなったなぁ。


ん?


そこでとんでもないことが起きている事に気が付き、

思わず叫ばずにはいられなかった。


「う、うわーーーーー!

さ、サラ!レスキューを呼んでくれ!!!」


手にお玉を持ったままキッチンから飛んできたサラ。


「え、なに?事件!?」

「ユ、ユキが血を流している!!」


ユキが立ち止まった。

え? と振り返った。


振り返ったユキの後ろ姿とズボンの血の滲みを見た。


「デルタ、絶対レスキューを呼ばないで!ちょっとまっていて、

ユキ、私と一緒にお風呂場に来て?」


サラはユキを連れて行った。


「え、なんでサラはあんな冷静なんだ」


デルタはとっさに通信端末のインターネット機能で調べた。

[出血 致死量] と。


2分もしないうちにサラが戻ってきた。


「デルタ、ユキは病気や怪我じゃないから安心して?

ちょっと先に二人でお風呂入るわ」


「ん~まいったまいった。どうやって伝えようかしら」


と頭を掻きながら風呂場に戻るサラだった。



病気や怪我じゃないとしても心配だ。

そわそわしていても仕方がないので晩御飯の準備の続きをすることにした。


出てくる頃を見計らって食事をテーブルに並べた。

そしてみんなでいただきます。


「サラ、さっきのユキのことなんだがとても心配だ」

俺はトマトに手を、いや箸を伸ばした。


「あーうんうんわかってるわかってる。ちょっと待ってね?」


ユキは下を向いて食事には手をつけなかった。


「どうしたユキ!食べて鉄分補給しないと!」

「デルタ、ちょっと黙ってて」


はい といい黙ってパスタを巻く。


「デルタくん、ユキちゃん、

今日は性のお勉強をしましょう!」


お!ついにきた!

「待ってました!!セイの勉強!どんなサバイバル術が聞けるか楽しみにしていた!」


「黙れ」

「は、はい」


「今からお勉強することは、

もしかしたらユキは学校で習っているかもしれないけど、デルタ…というより、

施設で育ったしょくにんは、誰一人しらないことなの」


外の世界に出てわかったことだが、

俺たちしょくにんには与えられていない知識が結構ある。


たくさん驚いた事は当然あったが、

一番驚いた事は、男と女という性別があるという事だった。


「デルタ、しょくにんの三大秘密の二つ目をあなたは今日知ることになる」


三大秘密?

「三大秘密…とはなんだ?セイの知識がそのうちの一つなのか?」


といわれても、俺達には開示されていない知識が多数あるため、

全く検討がつかない。


サラが深呼吸をしながら口を開いた。

「まず一つ目、男女という性別の概念、これが禁じられた知識よ」


「納得だ。外に出て一番驚いたことだ。

三大と言うだけの事はある」


だが実際に男女両方の性別で施設員は構成されているので、

未知への接触という感覚はなかった。


「で、二つ目がその セイの話 というわけだよな?」


サラは静かに頷いた。


「まず、今日ユキに起きたことを正直に話すわ

今日、ユキは少女から大人の女になりました」


どういうことだろう?


「サラ、大人というにはまだ君と比べて小さいじゃないか」

「もちろんまだ体は大きくなるわ、でもね」


サラが言った言葉を理解したとき、

俺の見る世界が一気に広がった。


それは紛れもない事実だ。


「ユキは赤ちゃんが産めるようになりました」


「赤ちゃん?産む?産むって卵を?」


サラはユキの身を案じるのではなく、

ただただ俺を見つめた。


その目はどこか切ない眼をしていたのを覚えている。


「デルタ、あなたはもしかしたら今日あなたの人生で一番のショックを受けるかもしれない、

けどちゃんと私も教えるわ!覚悟してね?」


俺はサラの眼を見て頷いた。


「まず、人間は卵を産まないわ。

あなたの言った卵から産まれるのは卵生というの」


「らんせい?卵の生か」


「そうそう、そして我々人間は、胎内で育てて産むの。

それを胎生というの」


あ、この間のあれはそういうことか

「ミユさんはあの時お腹の中に赤ちゃんがいたってことか」


「そっ、そういうこと、本当にお腹の中に赤ちゃんがいたのよ」


俄には信じがたい。だとしたら、

人間の身体は素晴らしい。


「人間は、女しか子供を宿せないの」

「え?それは本当か?ではなぜ男がいる」


女しか子供を産めない。

男と女、一体なにが違うと言うのだ。


「人間の場合、男がいないと子供ができないのよ」


全くわからん。


「あ、男が働くからか?」

「ん~当たらずも遠からずってとこね」


「赤ちゃんができるには女だけが持つ卵子に、

男だけが持つ精子が入り込むことで受精卵となって、

そこに新たな命が宿る」


といわれてもイメージがわかない。

聞いたことの無い単語ばかりだ 。


「そして胎盤で赤ちゃんは育つのよ」


「胎盤!俺たちは人工胎盤で産まれた!そうか」


知識が繋がった。

そんな感覚があった。


「ランシとセーシという男女が持つものを人工胎盤に入れて人間を成長させるのか」


「んー近くなってきたわね、あなた達しょくにんの作られる行程はほぼ正解」


違うと言うのか、

これが人間としょくにんの違い?


サラは続けた。


「でもね、女の身体には胎盤が存在するの。

つまり、0からお腹の中で赤ちゃんを育てるということ」


「おお。それだと低コストで人間をたくさん作ることができるということか!」


人工胎盤ではなく、

女の数だけ赤ちゃんが出来るということだ。


「ん~まあいいか、続けるわよ?

男だけが持つ精巣で精子が作られる

女だけが持つ卵巣で卵子が作られる

だから男と女が必要になるの」


「サラ、それってつまり!」


やはりこの世は美しい輪を描いている。


「俺の精子を君にあげれば、

君は子供が出きるということか!」


「あ、デルくん言っちゃった…」

ユキが口元を抑えてホホを赤らめた。


それだけじゃない!

「あ、ロージーにあげればロージーにも子供ができるのか」

「あ~あデルくんのバカ」


ユキが頬杖をつきサラを見た。

サラは何一つ表情を変えることなく静かに口を開いた。


「それがね…どちらもできないのよ…」


「え?なんで?」/「なぜだ?」

俺とユキはサラに聞いた。


「なぜってそれは…

あなたたちしょくにんには、

精巣も卵巣もないからよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ