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第28話 怖い先輩の秘策と誠以外の男の存在を認めない女キャッチャーの卑怯な一手

「へへーん、神前!フォーク投げろよ!フォーク!日野少佐相手なら投げられるんだろ?じゃあそいつを打ってやるよ!」


 バッターボックスに入るなり島田は挑発するようにそう言った。


 バッターボックスの一番前、しかもホームベースギリギリに立ついかにも自信にあふれた笑みを浮かべる島田の顔を見て誠は動揺していた。


『あんなにベース近くに立つなんて……気の弱い僕の事だからとても島田先輩にはぶつけられないと思ってあんな所に立ってるのか?それにあれだけ前に立ってるってことはフォークの落ち際を狙ってるな……ここまで馬鹿にされると僕でも……』


 そんなことを考えながら相変わらず余裕の表情をマスクの下に浮かべているかえでのサインを待った。


 かえでが要求したのは内角ギリギリの高めのストレートだった。少しコントロールをミスすれば確実に島田にぶつけることになる。


 誠は首を振った。しかし、かえではサインを変えない。


 仕方なく誠はうなずいてゆっくりと左腕に力を込めた。


 インハイ、島田がバッターボックスの真ん中に立っていれば完全に打ち頃の球だが、ホームベースギリギリに立つ島田が打つには窮屈すぎるコースに伸びのあるストレートは投じられた。


 ストライクゾーンの球には本能的に反応してしまう島田はなんとか腕を折りたたんでこれに対応するが、あまりにホームベースギリギリに立っていたためにスイングはどうしても窮屈なものになる。


 なんとかバットで球を捉えたもののその打球は真上に高々と舞い上がった。


 かえではまるでそれが当然というような顔でマスクを外すと数歩歩いただけでキャッチャーフライを処理した。


「卑怯だぞ!俺はフォークを投げろと言ったんだ!オメエのストレートなんざさんざん見てる!神前!オメエは卑怯な奴だな!」


 悔しがってバットを叩きつけながら島田は誠に向けてヤンキーらしくガンを飛ばした。


「野球というスポーツはそう言った騙しあいだよ。そんなにホームベースの近くに立ったら誠君並みに力の有る早いストレートがインコースに来たら対応するのは元々インコースが好きなバッターくらいのものだ……所詮薄汚い男である君を騙しても僕は一切良心が傷つくことは無いね」


 冷静に落ちたマスクを拾い上げながら背中を向けて打席を去る島田に向けてかえではそう冷たく言い放った。


『かえでさん……本当に僕以外の男には容赦がないんだな……でもあとでそのイライラをぶつけられるのは他でもない僕だということまで考えて欲しいよな……』


 ダグアウトまで歩く間に何度となく誠に威嚇の視線を送ってくる島田に怯えながら誠はそんなことを考えていた。

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