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第27話 チャンスと意外なるかえでの盗塁

『さっきは得意のシンカーを打たれてる……しかも、相手の僕は左バッターだからカウラさんも投げにくいはずだ。実際、何度か練習試合で対戦してるけど左だとカウラさんの球の出どころがまるわかりだからな……ここで打たないと本当にかなめさんに射殺されるな』


 誠はそんなことを思いながらバットを握る手に力を込めた。


 カウラは何度か大野のサインに首を振った後、納得したように投球動作に入った。


 その様子に合わせるかのようにかえでは完全にカウラのモーションを盗んで三盗を狙って走り出した。


『このタイミングで単独スチール?大野さんはキャッチングは下手だけど方は一流なんですよ!無謀ですよかえでさん!』


 そう思って我を忘れた誠は高めのストレートに思わず手を出してしまった。


 打球は高々とセカンド上空に舞い上がった。


「オーライ、オーライ」


 そう言いながらいつもの無表情でリンが高く舞い上がった内野フライを簡単に受け止める。

 

 誠は一塁に走る気力もなく立ち尽くし、マウンドからは何事もなかったかのようにカウラが歩き始めた。


「誠君、僕の盗塁を助けるつもりならそこは空振りをしてくれないと困るよ。あそこのあたりの高さの球は追い込まれるまで手を出すべきでは無いな。あの球はベルガー大尉の中でも力の有る球だ。打ってもヒットにはならないよ。追い込まれたらあのコースに来た球はカットして三振だけは逃れるようにするのがお勧めだね」


 サードベースから歩いてきたかえでは誠にそう言うとそのままキャッチャーの防具を捕りにダグアウトに飛び込んだ。


「神前!テメエ高めの球が好きだからってあんな球に手を出しやがって!打つんならちゃんと外野まで飛ばせ!」


 相変わらず勝手なことばかり言うかなめにうんざりしながら補欠のファーストが持ってきてくれた大きめのグラブを受け取るとそのまま誠はマウンドに上がった。


「さっきのミスは気にしない方がいい……それじゃあ、行こうか」


 ダグアウトから飛び出してきたかえではキャッチャーのポジションに就くとすぐに投球練習を始める事を促すように座った。


 誠はそれほど力を入れずにストレートを三球投げた。


 その様子をレギュラーチームの不動の一番バッターの島田が打つ気満々の視線で見つめている。


『島田先輩は右とか左とか気にしないからな……あの人はともかく守りは当てにならない。かといって選球眼の良い島田先輩はきわどいコースでもボール一個を正確に見極めて来る……一番嫌なバッターと最初に当たることになるんだ』


 誠は何度も素振りをしながら左バッターボックスに向う島田を見ながらすでに島田の闘志に心で負けていた。

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