第267話 それぞれの女の愛……それは誠の理想とははるかにかけ離れたものだった
「だったら……何が言いたいのかな?僕はアメリアさんの指摘の通りこのあなた達もうらやむような豊かな胸のせいか母乳が多い体質でね。少しでも早くこの胸の張りをなんとかしたいところなんだけどな」
あくまで虚勢に近い笑顔を浮かべつつかえではかなめ達にそう言った。
「だから何度も言ってんだろうが!神前はアタシんだ!オメエにゃ渡さねえ!」
椅子に座ってギターの調整をしていたかなめはそう叫んで弦を思い切り叩いた。
「まあまあ、かなめちゃん。それこそかえでちゃんは身を削って誠ちゃんに求愛してるんだから……私から見るとその行為はどう見ても誠ちゃんの心の琴線には届きそうにないみたいだけど。それはそれとして……誠ちゃんはかなめちゃんだけのものじゃ無いの。私も欲しいの。だから、かえでちゃんにはあげない」
いつもの糸目で腕の前で腕を組むとかえでの前にその長身を生かすように見下ろしてアメリアはそう宣言した。
「アメリア。それは貴様の決める事では無いな。だが、神前が西園寺のものでない事だけは間違っていないし、日野のやっていることは常識の範疇を超えた違法ではないが十分異常な行動だと私には思える。神前は遼州人の知らない地球の血を引く女が持つ『愛』と言う物を求めているんだ。『ラスト・バタリオン』として地球人の遺伝子を操作されて作られた私にはその『愛』がある。貴様等のように『モテない宇宙人』である遼州人の心にどっぷりと浸かっておかしくなった女とは違って私の愛は『純愛』だ!」
珍しく強い調子でカウラは誠に語り掛けた。
「社会不適合者同士争っても意味はありませんよ。結婚生活は長いのです。それを支えるには信頼できる社会的常識と思いやりが何よりです。今回もかえで様がこの提案をしてきたときは『この馬鹿何考えてるんだ?』と思いましたが、隊長の悪名のおかげで『策の家』と呼ばれることもある甲武四大公家末席嵯峨家当主としてかえで様には『策士策に溺れる』と言う言葉を理解していただく言い機会だと思って協力させていただきました。こうして人を思いやる心を持つ渡辺リンこそが誠様の連れ合いとしてはこれ以上ないのは誰もが認めるところです。ああ、かえで様の搾乳が終わったらともにホテルに出かけるというのが私から誠様に提案できる最上のおもてなしと思いますが……社会不適合者の皆さん……いかがでしょうか?」
『そんなの認めるか!』
どさくさ紛れに誠を連れ去る計画を暴露する腹黒いリンの言葉に誠は苦笑いを浮かべた。
『地球ではこの状態を『モテる』というのかな……それだったらそんな生活地獄だぞ……地球人はなんであんなに結婚して子供を産んで増えるんだ?遼州人の僕には全く理解できない……』
誠はリンの暴走で言い争いに拍車がかかり、今にもつかみかからんばかりのかえでやカウラ、そしてそれを笑って見守るアメリアとこちらは好き勝手にギターで歌を歌いだしたかなめを見ながらただ地球人と言う理解不能な生き物の持つ『愛』というものがかなり自分の思っていたものとは違う物らしいということを身にしみて感じていた。
了




