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50.女たちのこたつ会議(会話回)

本日二度目の更新です、一話前がありますのでご注意ください

「ダンナ?寝ちまったのかい?ふふ、可愛いところがあるじゃないのさ」



「姐さんはご主人様を甘やかさないでください。それは私の仕事です」



「まあまあ、昨夜は徹夜だったし、昼寝くらいは許してあげようじゃないか。こちらはさっきの続きをしよう。アレと言ったのはね、魔力による身体強化だよ。先ほどは未熟ながらもそれなりの強度だった。サラ君には無理が生じる程だから控えた方がいい」



「いや、そんなのはやったこともないね。どうやるんだい?」



「普通はダンジョン適応、つまり魔力を取り込んだ上で訓練しないとできないよ。獣人種族は先天的に肉体が優れている代償なのか、魔力総量が少ない傾向でね。そもそもやらないことを推奨したいが、無意識だとすると…これもエリクサーの副作用かなあ…ちなみに食事はいつもあれほど食べているのかい?」



「ふーん、メシかい?さっきはおチビちゃんのメシがびっくりするくらいうまくてね。いつもアレくらい食っていたなら白銀貨を貯め込むことなんかできなかったろうさ」



「おいしかったなら良かったです。確かに姐さんはお肉好きですけど、量自体はそこまででもなかったですね。お替り自由のお店に行ったときは動けなくなるほど食べていましたが」



「うるさいよ、料金が同じならいっぱい食った方が得だろう。アンタだって食い過ぎて青い顔をしてただろうに」



「アレは姐さんがもう食えないのかって何度も何度も言ったからじゃないですか」



「はいはいそこまで。さっきの食事は、まあ美味しかったというのもあるだろうが…過剰に消費された魔力を補うために、体が代謝を上げて対応したのだろう。あまり良い状態ではないから制限する魔道具を使用した方がいいね。それまではお腹が空いたら我慢せずに食事することだ、ニア君には負担をかけてしまうね」



「大丈夫です。姐さんのお世話は私がしっかりとしますので任せてください!」



「なかなか言うようになったじゃないのさ、生意気言うのはこの口かい?」



「あねふぁん。いふぁい、いふぁいでふ」



§



「しっかしさっきは白銀貨を出した時にダンナもセンセイも眉一つ動かさなくて驚いたよ。アタシとしては思い切ったつもりだったんだけどねえ。エリクサーってのはいくらくらいするもんなんだい?命を救ってもらった恩は返しきれるもんじゃないが、せめて薬代ぐらいはってのは人情だろう」



「私はびっくりしました!白銀貨って金貨百枚と交換できるんですよね、さすが姐さんです」



「いや、ボクは普通に感心したけれどね。エリクサーの値段かあ、これは彼は話したがらないだろうからここだけの話という事にして欲しいのだけれども、いいかな」



「もちろんさ。ん、このお茶うまいね。こういうのもできるようになったのか」



「サーシャさんっていう方に教えてもらっているんです。今年はもう来ないそうなので、姐さんには来年に紹介しますね」



「気にしない方がいいと思うけれど…協会買取の最低査定でも白銀貨なら百枚程だね。普通は紙面上でのやり取りになるよ。例外的にどうしても現金というなら霊銀貨が使用される。実際に取引される際は軽く倍以上はするだろう」



「ぶっ!ごめんよ、思わず噴いちまった…」



「…姐さん、働きましょう…私も返済のお手伝いをしますから…」



「汚いなあ、ニア君も顔を拭きたまえ…」


§


「しかし参ったねえ…ちょっと返せそうもないよ…」



「だから気にしない方がいいと言ったのさ、エリクサーを服用した検体として調査協力してくれればいいよ。ボクにとっては値千金だからね」



「そりゃ構わないが、あんまりずっとってのもねえ…アタシだって自分の食い扶持くらいは稼ぎに出たい。年末年始は書き入れ時だし、アタシには稼げる体もある。穀潰し扱いはごめんだよ」



「姐さん、私に一つ考えがあります。姐さんはご主人様をどう思っていますか?もちろん男性としてです」



「ん?そりゃ惚れてるよ。当たり前だろう、命を救ってもらった上に手鏡まで取り戻してくれたんだ。でもダンナはセンセイと結婚してるんだろ?おチビちゃんが厄介になってる家庭を壊すつもりはないからそこは安心しな」



「まあ合ってはいるけど、結婚しているのはニア君もだよ。ちなみにボクが第二夫人だね」



「嘘だろう、いや、悪かった。こいつは驚いた…さすがはダンナってことか。で、アンタはそれを聞いてどうしようってんだい」



「お二人と、もちろんご主人様さえよければ、結婚してしまえばちゃらですよね。姐さんともずっと暮らせますし…」



「アンタ正気かい?それにセンセイだって…」



「ううん…こうなるのは半ば予想していたけれど…この件についてボクはニア君にひとつ借りがあるからね。積極的に推奨はしないが、反対もしない。中立の立場を取らせてもらうよ。それに法律上は彼が了承すればボクらの了解は不要だ」



「え?ロマさんにはいつも助けてもらってばかりです、わがままばかりでごめんなさい」



「…ニア君には敵わないなあ。後は彼を口説き落とせるかどうかはサラ君次第だ。最初に言っておくけれど、うまくいったからといって、その…すぐするのはよく考えてからにして欲しい。ボクの使用している避妊薬を渡すから、それが効くまで一週間はかかるからね」



「センセイならアタシの仕事くらいは予想がついてるだろう?とうにガキなんざできないよ。こっち界隈の薬は強いからね、数年もすれば薬いらずさ」



「その程度の症状がエリクサーで治らないわけがないだろう。もともとの体質だって言うならばどうかわからないけれどね、普通に妊娠すると思うよ」



「マジかい…アタシは生理が重いから助かっていたんだけどねえ…またアレを味わうのか…」



「継続して飲み続ける必要があるけれど、薬が効けばとても軽くなるよ。女性探索者は必ず服用しているものさ。探索中にポテンシャルが落ちたら全員の命に関わるからねえ」



「助かるよ、了解だ。後はアタシ次第ってワケか…男に惚れたのは初めてだが、女は度胸ってね」



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