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42.三人パーティ

「しかし食料品などのお金をどうこう相談するなんて、パーティの最初の頃を思い出さないかい」



 全くである。あの頃は駆け出しのリリアは特に金が無かったのもあって、よく皆で相談し合っていたものだ。俺たち三人もまだまだこれからであるので、これからもよく話し合っていくのは大事だろう。



「なんだか私も仲間の一員になれたみたいでうれしいです。もしも私がパーティに入るとしたらどんな役割でしょう」



「ふふ、もう身内じゃないか。そうだねえ、ダンジョンはお勧めできないけれど、旅をするのであれば小切手は使えないし、携行食だけでは気が滅入るだろう。炊事役は大事なのじゃないかな、街を拠点にしていたボク達はからっきしだからねえ」



「あはは、今とあまり変わらないかもしれませんね。とはいっても自分が戦うところを想像できないので、そちら方面で頑張ります」



 そう笑うニアの様子を伺えば残念そうな気配はない。よかった、仮に本人が希望したとしても自衛を除き、戦わせるつもりなど毛頭なかった。サーガのような華々しさはあくまでお話の中だけであり、ほとんどの場合は泥臭く、ただあっけなく命を落とすのみであるからだ。



「ではそろそろお昼にしましょう。私も行ったことはないのですが、落ち着いて休憩できそうな場所を知っていますので」



「ああ、行ってみよう。遠いのかい?お昼ごはんには少々早いような」



§


 ニアに連れられてついたのは、商業区域と住宅地の間あたりにある閑静なエリアであった。生垣で囲われたこぢんまりとした家々がまばらに点在しており、表札には数字が書かれている。見慣れない光景であった。モデルルームというやつだろうか、それにしては家々に個性が無いが。



「ニア君。もしかしてなのだが、ここが目的地かい?」



「はい!えっと…かんり、とう…多分ここかな。ちょっと行ってきますのでお二人はここで待っていてもらえますか?」



「えぇ…ぼ、ボク達も一緒に行ってはダメかな、ここで待つのはその、どうもね…」



 ロマは何となく察しがついたということだろうか、俺は思いつけない…そんなに難しい問題でもないだろう、ちょっと悔しいので俺はここで待ちながら考えてみることにする。ロマと二人なら不安もない。



「わかりました。すぐ戻ってきますからね、じゃあ行きましょう」



「うん、キミはそれでいいのかい?」



 ロマに頷いて二人を見送り、俺は再度周囲を見渡す。先ほどと同じような感想しか浮かばない。建売住宅地…しかし庭が無いのは妙だ。管理棟があるなら賃貸住宅?家々が微妙に離れているのはどういう事だろう、土地が無駄な気もするのだが…



 考えていると管理棟から出てきた一組の男女がいたので何かのヒントになるだろうとそちらに意識を向ける。



 その二人は仲の良い様子で腕を組みながらこちらに歩いて、そのまま俺の横を通り過ぎて行った。すれ違いざまに変な目で見られてしまったが、道の往来で考え事をしているのが不自然に映ったのだろう。



 二人は夫婦だろうか、女に比べて男の年が少し行っているように見えたが、まあそんなこともある。



 視線の端でその二人を捉えて続けていると、二人はそのまま家の一つに入っていった。やはり賃貸住宅というのは当たらずとも遠からずといったところじゃないだろうか。え、そうだとするとここに何の用事があるのだ。



「ご主人様、お待たせしました。さあ、行きましょう」



 ニアが番号の書かれたカギを手に元気よく先行していく。俺は俯きがちのロマに並んでニアを追いつつ、彼女に俺の予想を伝え、もしかしてニアは自宅を出て一人暮らしをしようとしているのだろうかと聞いてみる。



「え?あ、いや。そんなことはないよ、キミの予想も、そうだね、半分以上当たっている。賃貸と言っても一日だけれどね…はは」



 一日単位での戸建ての賃貸、なるほど。利用したことはないが貸別荘、所謂コテージだ。先ほど旅をするような話をしていたし、差し詰め我々駆け出し三人パーティ初の小旅行といったところか。なかなかに粋な計らいではないか。



「う、うん…そうだね…」



 何故かもじもじとして歩みの遅いロマの手を取ってニアを追う。見失う程に離れてはいないが、あまり離れているのは少し不安だ。



「あ、お二人ともずるいです!私も混ぜてください」



 ニアがこちらを振り向き駆け寄ってきたので、ニアを真ん中に三人で手を繋ぐ。まあ周囲に人の目もないし、恥ずかしさは許容内である。



 借りてきたカギの番号と同じ表札のコテージについた。家の外観に何か引っかかりを覚える…そうか、外回りの壁面に大きな窓が無い。



 これでは家の中はさぞ暗かろうと思いながら扉を開ければ、部屋の中は不思議と明るい。外からは分からなかったが、家の内側には中庭があり、こちら側から採光する仕組みの様だ。普段見慣れない建築様式にちょっとした異国気分を感じて心が弾んだ。



「…なるほど。こうやって人目を避けているというわけだ…」



「わあ!素敵なベッド!大きい!これってなんていうんでしたっけ、お部屋もとっても広く感じますね!お庭が見えるせいでしょうか」



「…天蓋だねえ。防寒、虫よけ…視線対策だよ」



 ニアもこの異国情緒?溢れる作りにはしゃいでいる。一方のロマは何かを分析しているかのようだ、いつものことであるが、きっと彼女なりに楽しんでいるのだろう。



 部屋を見れば大きなベッドが鎮座している分、少しでも部屋を広く使えるようにとの工夫だろうか、細かい部屋に分かれているわけではなく、リビングと寝室を合わせたような大きなL字の部屋と大きめの風呂場とトイレだけ。



 ふむ、風呂付とはなかなかに豪華である。中庭には薪が積んであり、そちらから火の番ができる仕組みか。我が家とは違った秘密基地的な作りは風呂係の俺をわくわくさせてくれた。



 何はともあれ暖炉に火を入れよう、一晩泊るのだから部屋は暖かくしておくべきだ。



 荷物を下ろして部屋内を見て回ったりしていたら昼の鐘の音が聞こえる。ちょうど良い時間となったし昼食にしよう。ニアの手作り弁当が今日一番の楽しみであった。



「はい。すぐ準備しますね。お二人ともテーブルにどうぞ」



「…ふう。そうだね、お昼にしよう。今日のお弁当はボクも楽しみにしていたのだよ」



 暖炉の薪がパチパチと音を立てる中の昼食、いつもと違う場所でいつもの三人で食べているだけなのに妙に楽しい。弁当のうまさも手伝って皆笑顔だ。サンドウィッチもシャキシャキとした歯触りを伝えてきて、まるで食べられるのを喜んでいるようである。



「これおいしいよ、また作って欲しいなあ。ところ変わればというか、野遊びなどは野営と似たようなもので何が面白いのか理解できなかったけれども、今ならわかる気もするよ」



「気に入ってもらえましたか?でも寒い時期にしか採れないらしいので、また近いうちに作りますね。野遊びですか、私はお家で皆さんと食事できるのを特別に感じていますよ。今も特別ですけど」



 俺も常々感じていたことだ。二人と生活するようになって毎日が充実していると思う。家で「おかえり」と「ただいま」がある毎日のなんと素晴らしいことか。改めて二人に感謝である。



「私も帰るお家がある、だれかが待ってくれているって感じた時に、たまらなくうれしくなります。これからもよろしくお願いしますね」



「こちらこそ、ボクも充足しているよ。こういうものはなってみないと分からないものだねえ」




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