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希望の光8
「終わったぞ……」
有働は両手をはたいて、政直とメッセンジャーを見つめた。
頭にコードを刺された子供は、相変わらずキュッキュッと咽ぶように泣いて政直のYシャツに涙を擦り付けている。そんな様子を、有働は不快そうに見下している。
(有働さん、あんた……)
政直は動揺していた。
この男は、どうしてここにいるのだろう?無理して無罪になるより、精神を病んだことにして入院するほうが遥かに楽だというのに。日本の法律では、精神に異常をきたし責任能力を認められない場合、罪に問われなくなる。
これは判決を捏造する手口の中でも有名な抜け穴であり、有働のような富裕層なら、いともたやすく勝ち取ることのできるはずなのだ。本来なら有働はこんなところで仕事などせず、病院で個室を借りとってうまいものを食べながらゴロゴロしているのがこの国での『普通』なのだ。
酷いのになると、病室に愛人を呼び込みひたすら快楽を貪っていたという例さえ耳にしたことがある。全く、どういう形で精神を病んでいるのか知れてくる話だ。
だが、有働は何故か安易な方法を取らずに、憎き敵を目の前にして眉をしかめている。




