選ばれし者14
「佐渡くん、わかってないな」
有働の瞳が寂しげに光った。
「オレが心配していたのは、誰一人イレギュラーが出なかったときのことだ。そうでなけりゃ、素直に服役して塞ぎ込んでた方がまだマシだとさえ思った。
誰も釣れないようなら、それでも良かった。政府が君らみたいなバカ正直者ばかりだったら、オレごときが無茶しなくたって政府は花と戦えるだけの力を持っているって信じられた。オレごとき悪党の出る幕はないまま、この国は大丈夫だって考えも出来た。
その逆で、悪党ばかりのさばる世の中だから、何やってもうまくいかなかったんだからな。オレは君たちに、本音から感謝してるんだ」
政直にはこの男が気味悪く感じられてきた。
『自分のような悪党ばかりでなくて良かった』と宣う悪人が、世の中にいるはずないのだから。そんなことを口にするとしたら、それは過剰な罪悪感を抱えた善人だからだ。
だが政直はその目で見てしまったのだ。人がいるところに火を放つ狂人の姿を。
(もしかしたら……)
政直は面倒な考えにとりつかれ始めた。
この男は思うほど悪い人間ではないのかもしれない。政直と同じく人々を脅かす花を憎む善人なのかもしれない。いや、政直以上に花を憎むからこそ、花を目の当たりにしたとき頭に血が上り、残された人々のことまで頭が回らずに火を放ってしまったのかもしれない……




