79/122
選ばれし者7
「筋合いはないだろうが、君たちだからこそやれることがある」
呆れたことに、有働に引く様子はない。
「それに、中身を知れば君たちは断らないということをオレは知ってる。世界を救うことに直接繋がることだからだ」
政直は鼻で笑った。
「カッコいいですね。まさかあなたに、今さら世界を救うつもりがあったなんて。大変素晴らしいニュースですね」
満面の笑顔で大盛の皮肉を添えた言葉を贈った。
「そう思ってくれるなら助かる。やはり君は期待していた通りの人材だ」
有働は明らかに皮肉に気付いていながら、敢えてそれを単純な賛辞として受け取った。
政直は身構えた。いかなる方法を用いようとも、この男は政直たちの頭を縦に振らせる方向に動こうとしているのを察した。裁判のために買収しようとしたときでさえ、断ることを選択肢に残していた有働が、何故か今度は罵詈雑言すら凌駕する皮肉を黙殺してでも断るという選択肢を消そうとしていると感じた。
有働にとって、裁判で無罪を勝ち取ることは通過点でしかないように政直には思えてきた。もっと別の、より大きな考えが先にあるように思えた。




