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悪の華13

「これも『実験』だったんですか?」

政直はそう考えた。有働という男にとって、政直の反抗など計算のうちであったのだろう。有働は試したのだ。政直が金と利益に(なび)くかどうかを。

「実験は失敗ということですね」

生憎だが、政直は有働の思うようには動かなかったのだから。


「君は科学者に向いていないようだな」

有働は椅子で足を組んだまま、笑みを浮かべた。

「実験に成功も失敗もない。初めからただ一つの結果しか求めないものを、実験などと呼ぶのはおこがましい。そんなものは作業と呼ばれるべきだ。

オレのやっていることは現実との闘争だ。だから、狙い通りの結果が出るとは限らない。どんなに万全を尽くしたつもりでも、イレギュラーは発生する。だからこそ実験というものは興味深いものなのだよ。

もう一度言おう。佐渡くん、君は実に面白い男だよ」


酷くひねくれた褒め方をされて、政直は面白くない。

「そうですか」

と、一言だけ残して取り調べ室を後にした。



政直には一つだけ、極めて私的な悩みを抱えていることに気付いた。もし檻に戻ったとき、あの政直にしてやられた研究員が残っていたら色々と面倒なことになることを懸念した。

が、檻には誰もいなかった。たった一つしか置かれていない檻には他に誰もいなかった。


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