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悪の華12
二人の会話を聞いていた看守たちが、話に割って入った。
「佐渡さんっていったね。
あんた、さっきから聞いてりゃ何考えてんだ?せっかく有働さんが好条件を揃えてくれてんのに、断るとか。頭おかしいんじゃねえの?」
「勘違いしてんだろ。反骨精神溢れる正義漢のオレ様カッコいいって。
いらねえよこんな奴。協調性ない人間が仲間にいたら、うまくいくもんもダメになるだろ」
居合わせた二人の看守は政直を非難した。今にも二人がかりで実力行使しかねない剣幕だ。
一人が正面から政直を見下ろし、もう一人が政直の座る椅子の背後に陣取った。
「よせ」
何か仕掛けようとした看守たちを、有働が制した。
「佐渡くんがこういう人間なのはわかっていた。どの道、致命的な障害になるわけじゃない。穏便に檻に帰してやってくれ」
二人の看守は舌打ちをして、政直に手錠をかけ直して立たせた。
「つくづく面白いね、君は」
有働は買収に失敗したというのに、ニヤニヤ笑っていた。
政直の反発は計算のうちだったのだろう。
そもそも、腑に落ちないことがいくつもある話だった。政直がいかなる証言をしようとも、有働を有罪にすることはいずれにせよ困難なことになりそうだ。だが、だとしたら有働はどうして金と時間を費やしてでも政直を引き入れようとしたのだろうか?




