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悪の華10
そんな馬鹿な
政直はそう言いたかったが、言えない。有働の説を下らない妄言だと思いたかったし、本来そうでなくてはならない。だが政府の現実を目の当たりにした政直には、脳内を花畑に出来なかった。
「わかるか?犯罪者である君の証言は、おそらく重要視されない。むしろ政府に都合の良い理屈を作り上げられるオレの方は、充分に無罪を勝ち取れる希望がある。
それどころか君がオレの無罪を裏付ける証言をすれば、君の罪が軽減される可能性だってある。何故なら政府に耳障りの良い発言をしたことによって、反逆の意志がないことを表明するからだ。
断言する。君自身のためにも、オレを弁護すべきなんだ」
有働は間違いなく人間のクズだが、一理あることは政直も認めた。政府自体がクズの集まりなのだ。お偉いさんの都合次第で、白は黒になり黒は白になる。政直も納得はしないまでも、長いものに巻かれる選択をときには選ぶことが賢いといえる。
それは有働が人殺しの狂人であるのと同じくらいに、明らかな真実だった。有働の後に行われるだろう政直の裁判で罪を逃れるには、まず有働に有利な証言をすることが鍵となることは間違いないだろう。




