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東京ドーム居住区10
涙を浮かべたナオミから、政直は体を離した。
「すまない」
と言って軽く咳払いをした。
「気持ちはわかるけど、無理したっていいことないぜ。別に演技してまでヒーローになんかなる必要ない。
他にヒーローになってくれる人だっているかもしれない。オレ、君のヒーローになりたいけどな」
流石に目を合わせることは出来なかったが、政直なりに決まったと思った。
「こんな下心満載のヒーローなんて、要りません」
政直はナオミに小走りで逃げられてしまった。
「けんもほろろとはこのことか……」
ナオミに見事に振られた政直は、トボトボと廊下を歩きはじめた。
政府の真実を探る目標が絶望的となった今、せめて守るものが出来たらと考えた政直にこれはこたえた。
(こんなじゃ、冗談抜きで人生鮎貝さんコースに乗っちまう……)
政直に更なる難関が待ち受けていたことに、間もなく気付いた。
政直が東京ドームに住んで4日。構内の大凡の地理は頭に入っていたが、彼に用のない区域となると見当もつかない。
(あれ?ここ、どこよ?)
政直はドーム内で迷子になってしまったのだった。




