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小さな花4
「本、進んでるじゃないか。面白いか?」
じゃれ合う手を動かしながら、清一は聞いた。
「うん。とっても。
でもね、ときどき怖いの」
清一の指が止まる。
「怖い…?」
花怜の手も止まる。
「そうなの、怖いの。人間はそのうち地球をダメにしちゃうのかな、って…」
そこまで辿り着いたか…
清一は花怜の手を外した。
「そうだな……。
人間は、地球と仲良くやっていく方法を探さないといけないな…」
それがいかに困難な道であるか、清一は専門外のことながら知っていた。
人間の欲望は抑制不能なもので、地球にそれに応えるだけのキャパシティーは圧倒的に足りていないことを知っていた。
「パパは……お医者さんの手助けをする学者さんになったわけだが…」
清一は知っていた。
人類がなぜ地球を危機に追いやったのか、知っていた。
家族を安心して食わせてやるためなら、人は環境保護のことまで気にかける余裕など持てないことを知っていた。
「花怜は地球を救う学者さんになってみる、なんてのもいいんじゃないか?」
もしも目の前のたった一人の少女を救えるのなら、地球の一つや二つは平気で犠牲にするだろう。清一自身が、そういう自分を否定できないでいるのだから。
『地球を救う学者さん』とやらがどんな絶望に出くわすだろうか、知っていながら軽々しく口に出した軽率さを密かに自嘲した。




