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小さな花3
「はは。花怜のいうとおりだ。パパ、神様に叱られちゃうかもだな」
(怒ってないよ)
不器用な父親の精一杯の暗示は、賢い娘に伝わったらしい。頭を撫でる大きな手の指に、小さな手が絡みついた。
「でも…ここだけの話、な。
あんなとこに咲いてたら、枯れちゃうかもしれないし、ワンコやニャンコに食べられるかもしれないし、悪~い奴が引っこ抜いちゃうかもしれない。
そうなったら、いくら元気な花だって、ひとたまりもない。いい子で優しい花怜のそばにいるのが一番安全なんだ。
パパが自然の法則をねじ曲げちゃったことは、神様には内緒だぞ」
(俺の悪い癖だ)
清一は自己嫌悪に陥った。
仕事をする上で、自分の主張を通すために相手を論破する能力は欠かせない。
それだけなら必要なことだが、清一はそれを愛娘にまでつい使ってしまう。
たとえそれがオブラートに包まれたものであろうとも、変わりはない。
「そうだ。おとうさん、わるいこ」
花怜の痛くも痒くもない拳骨が、清一の頭を襲った。か弱い鉄拳に、大袈裟に「ギャッ!」と声をあげてみる。
「でも、ないしょで、いいこ」
今度は小さな掌が清一のボサボサの頭を撫でた。
こんな小さな子供に気を使わせるなんて、俺はつくづくダメな父親だ…
清一は反省とともに、幸せを噛みしめた。




