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東京ドーム居住区7
(食い付けっ…!)
上原は自己顕示欲の強い人間だ。他人より自分が優れていることを誇示するチャンスがあれば、あっさり墓穴を掘ってくれると踏んでいた。
「よくわからないなら、わからないままの方がいいことも世の中にはあるんですよ……」
上原は意味深なことを口にした。
「それは、どんなことでしょう?」
逃がしてたまるか。政直は引かないつもりだった。
「言えません。言えません。言うわけありません。私は知りません。言いませんったら言いません。言っていいわけないんです……」
上原はそっぽを向いたまま、いやにはっきりと復唱するように同じような言葉を繰り返し始めた。
何か変だ、と政直は訝しんだ。上原の目線の先をふと見て気付いた。そこには季節柄動いていない暖房器具が置かれていたが、格子の隙間に反射して光る点があった。
(隠しカメラかよ)
政直と上原のやり取りは、監視されていたのだ。
政直は上原からこれ以上聞き出すことを断念しなくてはならなかった。それどころか、今まではさほど警戒されていなかった政直が見直される。おそらく上原は仕事を外され、より間違いない者を寄越してくるだろう。
今度こそ八方塞がり
政直は頭を抱えた。




