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調査隊5
「なぜわからん?あれは、人だけを殺すために作られたものだ」
有働は信じられないかのように言った。
「そんなわけはないですよ。地震だって台風だって、別に人だけを狙ったものじゃない。それと同じことでは?」
政直に言わせれば、有働の言い分は病的な妄想としか思えない。
あれが自然に生まれたものだとすれば、余計に有り得ない。人類を滅ぼすためにあの樹がつくられた?被害妄想にも程がある。この人はいったい何と戦っているつもりなのだろうか?
「そうか……。『メッセンジャー』の存在も知らないのか……」
有働は不意に聞いたこともない言葉を使った。
「メッセンジャー?」
何か意味深な言葉だと政直は感じた。
「君には関係のないことだ。報告、御苦労。そろそろ休みたまえ」
有働が急にそっぽを向いた。明らかに挙動が不審だ。
腑に落ちないまま、政直は自室に帰った。
潰れた社宅の四畳一間は、これでも今の日本では平均以上の居住空間だ。政直なりの皮肉のつもりで部屋に置いたチューリップの鉢が、唯一の心の憩いになっている。
「お前の仲間には、どんな秘密があるっていうんだ?」
政直の疑問に花が応えてくれようはずもなく、花はただ無邪気に揺れていた。




