研究室3
(この人は……)
実をいうと、政直はこの男が好きではない。破滅願望の持ち主という気がしてならない。まるで、人間がどうやっても樹に滅ぼされる運命であることに自虐的な悦びを感じているように見える。マッドサイエンティストのような、そんなイメージがある。
今の会話だって、政直が糠喜びから絶望させるのを楽しんでいるようだった……
「酷い話だろう?」
有働は皮肉な笑顔のまま言った。
「オレたちの研究は、こんな事の連続だ。頭使って、汗かいて、ようやく僅かな可能性を見つけて、検証してみたらそれが無意味だってわかる。そんな繰り返しさ。
自殺率が高い職業ランキングNO.1は、オレたち研究員だ。鮎貝が壊れちまった理由ってのもな…救いようもねえ研究成果を挙げてしまったからだ。知れば知るほど絶望させられる。世界樹ってのは、そういう相手だ」
政直は思い直した。この男の性格がねじ曲がっているのは、揺らいでいるからだ。正気と狂気の狭間に辛うじてとどまっているからなのではないかと思った。
「鮎貝さんも研究成果が出たからおかしくなった、ということですか?」
「そうだ」
有働は少し迷ったように室内を歩き回った。しばらくして、政直の顔を見た。
「先に言っておくが、こいつはオフレコだ。周知されれば、鮎貝の後追いが続出する恐れがある。とはいえ、鮎貝を看取ったお前には聞く権利があるだろう。
どうする?聞いておくか?耳を塞ぎたくなるような、聞いて後悔するかもしれない話だぞ?」




