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天使の歌4

「一番肝心なところが残ったな」

今や一軍を指揮するほど出世した政直は、装甲車の中から苦々しげに世界樹を睨んでいた。

九体の“天使の歌”を搭載した装甲車に囲まれながら、世界樹は堂々と聳え立っていた。煙霧にも似た花粉が撒き上がる暗い空気に囲まれて、まるで君臨する魔王のように。


「これを討てれば花は終わりなんです。最期の砦なんだから、手強いのは当たり前ですよ」

助手席にはナオミが座していた。軍を率いる立場になった政直には、そばに置く人間を選ぶ権利を手にしていた。もはや価値の決まったこの戦、女性を前線に出す酔狂も大目に見られていた。


「花を滅ぼしたら君と結婚出来るって決まってるのになあ。恨めしいったらないぜ」

ナオミの頭に置こうとした政直の手は、軽く払われてしまった。


「そんなこと、いつの間に決まったんですか。いい加減なことばかり言ってると、セクハラで訴えますよ」

頬を赤くしたナオミを、政直は鼻の下を長くしながら見つめた。


「言ったじゃないか。花を滅ぼしたら結婚しようって」

「私は世界が大変なときに結婚なんて考えられないって言ったんです!それがどう間違ったら、花を滅ぼしたら結婚に変換されるんですか?」

反論されても政直はニヤニヤと笑うのをやめなかった。最近、結婚という言葉をちらつかせるとナオミは頬を赤く染めるようになった。以前は殆ど無視していたというのに。


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