第十三章 ちゃっくん
「お母さん、庭に大きな犬がいるよ」
「え?あら、本当だ。こんな雪の日に一体どこから来たのかしら」
あはは、ゆき婆ちゃん若いなあ。まだお母さんって呼ばれているのか。
「あの犬、笑っているよ」
「日本犬っていうのは、笑っているような顔をしているのよ。それにしても首輪もしていないのに、毛並みが綺麗ね。野良犬とは思えないわ」
やだなあ、ゆき婆ちゃん、じゃなかったお母さん。他人行儀で。おいらだよ。お母さんの子だよ。
「まきちゃん、犬がいるよ」
すると、この子がみきちゃんか。あ、もう一人中から似たような子が出てきたけど、そっちがまきちゃんだな。お母さんから聞いて知っているぞ。二人共まだ四歳のはず。可愛いなあ。
「わーい、わんちゃんだ」
「まき、みき、危ない。そんな大きな犬に抱きついて・・・、あら」
おいらまだ一歳だから、二人の方がお姉ちゃんだね。くんくん、こっちがまき姉ちゃんの匂いで、こっちがみき姉ちゃんの匂いか。もう忘れないからね。
お母さんは、不思議そうにおいらの目をじっと見つめている。その眼差しはとってもやさしい。
「お母さん、この犬飼いたい」
「お願い、飼っても良いでしょう」
二人は、当然「ダメ」と言われると思ったらしく、必死でお母さんに訴えかけた。
「早速登録とか狂犬病の予防接種に連れて行かないとね。あ、そうだ、この子の食べ物も買いに行かなくっちゃ。生肉がたっぷり入っているおいしい餌にしましょうね。きっとお腹空いているでしょう。あなた達もちゃんと仲良くしてあげるのよ」
まるで飼うことが、運命付けられていたかのようにお母さんは即答した。
二人はしばらくの間あっけにとられていたが、その後思い出したかのように歓喜の声をあげた。もちろんおいらも嬉しかった。
「ありがとう、お母さん。おいら、ちゃっくん。みんなよろしくね」




