第47話:おとり
「ふぅ~」
やっとゴキブリ型ロボットの検証が終わった。攻撃力も防御力も大したことなく、機能が嫌がらせ特化ということが分かった。どうやらこれはあたしたちメカ少女に対する試作機らしいという結論になった。
「みなさん、今後は怯えたり恐怖したりしてみせないで下さいね。敵がどのようにこちらの状況を把握しているのかは分かりませんが、こちらが怯んだら、これを大量に製造されると心に刻んでおいてください。そんな状況いやでしょ?」
「「「は……はい」」」
みんな声が力なく返事をする。今後これに出くわしても、悲鳴を上げても逃げてもいけない。もしもこれを破ってしまい逃げたりしたものなら、大量に生産されるであろう。頭の中に気持ち悪い光景が浮かぶ。
そんな光景を頭をブンブンと振り、かき消す。
「よし! とにかく進もう! いつまでもここに居るとビビっているように見られちゃうかもしれないしね」
「そ、そうですわね」
あたしと綾乃ちゃんに続いて他の人も無言で頷く。コメントすることすら既に疲れている様子である。こんなことで平気なのか?
堂々と胸を張っているが、実のところ内心、びくびくしつつ歩いていく。恐らく他の人もそうだろうとチラッと横目で確認してしまう。
しばらく歩くが敵の気配はない。
日も暮れつつあるので野営にすることにした。
各自レーションを取り出す。あたしは和食が恋しくなって、かつ丼という渋いチョイスにした。恭子ちゃんが視界に入ると、もつ煮というもっと渋いチョイスをしていて、なんか敗北感を感じた。
食事をしていると、佳那子ちゃんがとんでもない爆弾発言をしてしまった。
「なあ……さっきのゴキブリって、魔物でもいるかもしれないんやよな? それでこの世界の人達は魔物を食べたりするんやよな? ってことは今までの食事の具材って……」
「「「ストォォォォォォップ」」」
全員が止めた。今現在お食事中なので想像もしたくもない。だが既に手遅れで想像はした。
あたしはお箸でカツを突っつく。これは元の世界の材料だよね? この世界の材料は入ってないよね?
みんなびくびくしつつ食べ始めた。余計なことを言い出した佳那子ちゃんまでびくつきながら食べている。それなら言わなければいいのに~って思ったが、ふと考えた。実は佳那子ちゃん、一人で察してみんなを道連れにしてないか? やんちゃな佳那子ちゃんの性格だと有り得そうで怖い。
「「「ごちそうさまでした」」」
約一名を除き食べ終わった。美味しさが半減した夕食であった。ちなみにまだ食べてる一名とはもちろん恭子ちゃんである。食べてるというか焼き鳥でお酒を飲んでる……。
あたしも酔っている恭子ちゃんにでも、そっとゴキブリ料理を食べさせてみたいな~なんて思ってしまって、あまり佳那子ちゃんを責めれない。
「あたいが見張ってるからみんなは寝ていいぞ」
なぜか殊勝な発言をする恭子ちゃん。あたしは、はて? と首を傾げつつ恭子ちゃんの後ろにこっそりと回る。そして小声で囁く。
「恭子ちゃん、恭子ちゃん、自分から働こうとするなんて恭子ちゃんらしくないね? どうしたの?」
「あたいらしくないってなんだ! これでも成人してるから大人の貫禄ってやつを見せてやろうと思って」
「……で本音は?」
「ゴキブリを見つけたらお前らを犠牲に逃げようと思って……あ……」
ノリよく口を滑らせてくれた。この人とんでもないことを考えていたよ!
恭子ちゃんは少し酔っている分、声が大きかったのか、他の四人も聞こえたようでジト目で見ている。
「流石恭子やな。大人なだけあるな。ほらもっと飲みいや」
佳那子ちゃんがお酒を差し出す。
「まったくですわ。感心しました。わたくしからも感謝の気持ちです。これ受け取って下さい」
綾乃ちゃんもさらに沢山お酒を差し出す。
そして恭子ちゃんは酔いつぶれて寝た。
「「……ははは」」
真夕ちゃんと梓ちゃんの乾いた笑い声が、夜の草原に虚しく響く。
恭子ちゃんがおとりにされたというのを察していたのであろう。
まあ何事もなく一夜は明けた。




