第41話:見学
あたしたちが歩いて屋敷に戻る頃には戦闘音は聞こえなくなっていた。流石に四人がかりだと敵を倒すのが早い。
自分たちの部屋に戻ってみると佳那子ちゃんと真夕ちゃんが寝間着に着替えていた。
「二人ともお疲れ~。あれ? 寝間着? 非番だから外に行かないの?」
「まあ私たちの時間が微妙でしたからね。夜から朝にかけてだったので、もう少し仮眠したいかと」
「そっか~。そういえば真夕ちゃん。あたしたちこの世界のお金を持ってないから何も買えないんだけど、その辺どうするの?」
「あ~、考えていませんでしたね。後でナグモさんに相談しますよ。とりあえず今は寝かせて下さい」
そう言いつつ真夕ちゃんは、もぞもぞと布団に潜り込んで行く。佳那子ちゃんに関してはもう爆睡している。
「……梓ちゃん、暇なんだけどどうしよう?」
「ええ? 僕に振ります?」
そう言いつつも梓ちゃんは考える。
「えっと、じゃあ綾乃さんと恭子さんのお手伝いに行くとか?」
「う~ん? それしかやることないかな? そもそもそれがメカ少女の使命な気もするしな~」
などとよく分からないが使命感を演じてみる。実際にこの世界を救うという使命はナグモさんから託されたが、あまりピンときていない。とりあえず二人がいるであろう西側の様子を見に行くことにした。
「やっほ~、元気?」
綾乃ちゃんがこちらを見て呆れ顔をしている。
「元気も何もさっき一緒だったじゃないですか。それにしてもどうしたのです?」
「いや~、あの後魔法屋も見たんだけど、この世界のお金を持ってないことに気付いて何もできないな~って暇だから来ちゃった」
「……暇だからって……。まあ言われて見ればこの世界のお金をわたくしたちは持っていませんね? 真夕さんと相談しないと」
「真夕ちゃんに話したけど、眠いらしくて後でナグモさんと話をするって。あたしたちはすることないから二人のお手伝いをしようかな~? って思ってきました!」
あたしはビシッと敬礼をする。あたしを見た梓ちゃんも恥ずかしそうに真似をする。いや義務ではないからね?
「そうですか。でもダメです!」
綾乃ちゃんが睨みつけるように言ってきた。なぜだろう? 不思議に思い聞いてみる。
「なんでダメなの? みんなでやったほうが楽じゃん」
「わたくしの下着の部品が必要だからです。花鈴さんが加わると、全部花鈴さんがいいとこどりするじゃないですか!」
下着への情熱を語られた。まだできてなかったのか。
「それなら見学しててもいいかな?」
「見学ならいいですわよ」
「じゃあ、見学させてもらうね。よろしく~」
二人の方を見ると、恭子ちゃんが腰の所から何かを取り出した。
「恭子ちゃん、その腰についてるのなに?」
「あ? ドリンクホルダーだけど?」
「ドリンクホルダーって腰に付けるやつなの?」
「そうだよ」
しれっと言うが、あたしの知っているドリンクホルダーは車とかにつくやつだ。本当なのか疑わしいが、実際に手に持っているのは飲み物である。恭子ちゃんのことだから、アルコール入りの飲み物だろうけど……。
それをぐびぐびと飲んでいる。
「ぷはっ! 仕事中の酒はうめぇ~」
「……なんか不謹慎な感じがするのは僕の気のせいでしょうか……」
「気のせい気のせい。あたいのスキルの検証だよ」
「う、言われて見れば確かにそうかもしれませんが……」
梓ちゃんはイマイチ納得いかないらしい。まあそれはあたしも綾乃ちゃんもであるが。綾乃ちゃんに関してはジト目で恭子ちゃんを見ている。
これで戦闘がなく交代の時間になったらただ単にお酒を飲んでいただけになる。
『敵よ来い! そして恭子ちゃんに天誅を!』と、この街の人に迷惑なことを考えたのは恐らくあたしだけではないはずだ。




