第34話:ハサミ虫
あたしたちは夜空を眺める。夜空に浮かぶ星々。そして月。その美しさを見ているととても戦いの世界とは思えない光景である。
視線を薄暗い草原に向けるが敵が来る気配はない。
「暇だね~」
「ひ、暇でいいじゃないですか? 平和で何よりです」
「それはそうだけど、これならベッドで寝ていたかった」
「まあ、それは分からなくもないですけど……」
次の梓ちゃんの言葉は、その希望は夢であるということを語った。
「索敵レーダーに敵が入りました! 数は二十!」
ニ十体か~。多いとも少ないとも感じないちょうど良い数。だが更に梓ちゃんの言葉で緊張感が増す。
「なんかあのシルエット、見たことない敵じゃないですか?」
あたしは慌てて梓ちゃんが指差した方に目をやる。すると確かに不思議なシルエットの者がいる。
「なんだろうあれ……上に二本角がある?」
思い浮かばない。こんなとき小学生とかがいたら昆虫博士的に解説をしてくれたかもしれないな~と思いつつ凝視する。段々と近づいてくるシルエット。カマキリ、蜘蛛、芋虫に混じり、何かが来る。
「花鈴さん、こっちから迎え撃たないと街に接近されます!」
はっと意識が現実に戻った。そうだ。あたしたちは街を守らなければいけない。ぼんやりと敵が何かを考えている場合ではない。敵が何であろうと倒すのみ。
「あたしが行くから、梓ちゃんはここから敵を狙撃して!」
そう言うとあたしは鉄くずの壁から飛び降りた。そして敵に向かいダッシュする。新たな敵が現われたので警戒を最大にする。いやどんな敵だろうと最大にすべきだろう。今のあたしたちの戦力は二人しかいないのだから、場合によってはやられてしまうかもしれない。
走りつつ剣を引き抜く。グレネードランチャーは既に弾薬を装填してあるので問題はない。
梓ちゃんがスナイパーライフルで敵を銃撃したのか、その音が反響した。その音を皮切りに戦闘が始まる。
カマキリ型にグレネードランチャーを撃ち込む。なるべくカマキリ型には近付きたくない。そして撃ち込みつつも、近場の蜘蛛型を片手剣で切り裂いていく。
時折芋虫型が切れ味の良い糸を吐き出してくるが、シールドで受け止める。どうやらシールドの強度は問題ないようである。
あたしが倒しきれなかった近場の敵を、梓ちゃんがスナイパーライフルで狙撃して援護してくれている。あたしは安心して戦える。少し敵と間が開いた瞬間に、新たな敵に目を向ける。ハサミ虫型ロボットである。
ハサミ型は強そうだが、まあ挟む程度だろうと思っていた。
次の瞬間、ハサミ虫型ロボットのハサミの部分があたし目掛けて飛んできた。咄嗟にバックステップをして目の前の自分が立っていた所に目をやると、地面にハサミが突き刺さりえぐれている。
(今の攻撃は受けたらヤバかった)
だがハサミを撃ち込んだら次はもうないだろうと思っていたら、何やらハサミにワイヤーのようなものがついている。それがウインチで巻いたのか一気に元の位置に戻る。どうやら何度でも撃てるものらしい。
あたしは周囲の敵と戦いつつ、そのハサミを警戒する。すると再びハサミが飛んできて地面に突き刺さる。
(このワイヤーを斬っちゃえば)
そう思い剣でワイヤーを切断しようとするが、斬れない。かなりの強度があるワイヤーのようだ。ワイヤーに気を取られていたら、背後からカマキリ型が迫りくる。
左腕のシールドの突起を敵の胴体に肘打ちする。刺さりはしないが敵がノックバックした。まあ刺さった方が危なかったかもしれない。敵と密着状態になってしまっていただろう。
ワイヤーの切断は諦めて、その態勢を崩したカマキリ型にとどめを刺した。
ハサミ虫型が邪魔なので戦いつつ背後に回ろうにも、ハサミ虫型は小回りが利くようだ。背後を取らせて貰えない。
梓ちゃんに連絡を取ろうにも、二人とも通信機は持っていない。連携は取れないと諦めていたら、スナイパーライフルの狙撃がハサミ型型の敵にヒットした。どうやら後方から見てもハサミ虫型ロボットの驚異的攻撃力がわかったようだ。ハサミ虫型は梓ちゃんに任せてあたしは少し距離を取る。他の敵が追ってくるので、その敵を攻撃する。ハサミ虫型は他の敵よりも小回りは利くけど移動速度は遅いらしい。
戦っていると破壊音が聞こえた。そちらを横目で見ると梓ちゃんがハサミ虫型を撃破してくれたようだ。あたしも負けじと他の敵を殲滅した。




