機動騎士参上!!!
間違いない。どこからどう見ても、その巨大な姿は
【機動騎士エクスキャリバーン】である。
「エクスキャリバーン?なにそれ?」
サクラは当然のように、その謎の存在に『?』マークを飛ばす。
だが、それ以上に驚きを隠せないルルルンは、エクスキャリバーンを凝視し、冷や汗を流していた。
「な、なんで……なんでエクスキャリバーンが?」
「はっはっはぁ!!俺様が参上したからには年貢の納め時だ!魔女め!救世の剣が貴様を倒す!!!」
自信満々の俺様キャラ。間違いなく、エクスキャリバーンである。その性格を設定したルルルン自身が、強烈にそう感じていた。
エクスキャリバーンは威勢よく啖呵を切るが、ルルルンとサクラのどちらが魔女か分かっていないようで、指を向ける相手が定まっておらず、ふらふらとしていた。
「ええい!!どっちが魔女だ!!手を上げろ!!!」
面倒になったのか、エクスキャリバーンは直接聞いてきた。
「え?なんでそんなこと聞くの?」
サクラがあからさまに嫌そうに返す。
「なんでって、俺様が魔女を退治しに来たからだっ!間違えて魔女じゃない人を倒したら申し訳ないだろぅっ!!」
あまりにも頭の悪い発言にサクラは呆れるが、ルルルンはエクスキャリバーンの一言一言を聞き漏らさず、神経を尖らせていた。
もしエクスキャリバーンが、ルルルンが設定した通りの性能を持つ存在なら、今すぐにでもサクラを逃がす必要がある。
ルルルンはサクラの手を握り、耳打ちする。
「やだぁ、どうしたのダーリン?急に手なんか握って、結婚する?」
「今からお前だけでも逃がす。転移したら、とにかく遠くに離れろ。てかダーリンってなんだよ」
小声でツッコミだけは忘れず入れるが、今はサクラの避難が最優先だった。握った手のひらに、じわりと汗が滲む。
「どうしたの?なんでそんなに?あなたならどんなヤツでも簡単に追い払えるでしょ?」
「あいつが本当に俺の知ってるエクスキャリバーンなら、相当まずい。だから──」
「あれ?お前……『ルルルン』か?」
ギクッ!!
エクスキャリバーンの口から、ルルルンを認識する言葉が飛び出す。考える暇はない!!
「転移!」
「ダーリン!?」
問答無用でサクラを転移させ、ルルルンはエクスキャリバーンと対峙する。
「見たことのあるその髪!姿!声!!間違いない!!ルルルンじゃないか!!なんですぐ気づかなかったんだ俺は!!うっかりだなっ!!!」
喜びにも似たリアクションを見せるエクスキャリバーン。
「俺の名前を知ってるってことは……本当にキャリバーンなんだな」
「そうか、お前が魔女か。なるほど!なるほど!それならば納得がいく!いいぞ!そうでなくては面白くない!!それでこそ魔女退治だ!!」
実に楽しげに、ルルルンとの再会を喜んでいるようにすら見える。
「お前が本当にエクスキャリバーンで、なんでそんな風に俺の前に現れたのかはよく分からんが……とりあえず、俺の話聞く気ある?」
「お前と語る事は無いっ!!!!!!!!!」
巨大な機械騎士がゆっくりと腕を解き、動き出す。
「決着をつける時だ、ルルルン」
背中に装備された巨大な聖剣・クロスカリバーを手に、正眼の構えを取る。
「ちょっと待て!戦うしかないの?」
ルルルンの額から汗が頬を伝い、顎から雫が垂れる──その瞬間。
「行くぞ!!!!!!!!!!!!!!」
問答無用。エクスキャリバーンは剣を振り下ろす。
巨大な体からは想像もつかない速度の斬撃。モーションの遅れなど一切ない。
「やばいっ!!」
魔法障壁で巨大な一撃を受け止めたルルルン。しかしその衝撃は、サクラの住処を無慈悲に破壊し、大地を裂き、遥か彼方の山を真っ二つにする。
「(やばいやばいやばい……)」
想像していた10倍の威力。危険信号は一気にレッドゾーンへ突入。
「俺様の本気を受け止めるとは、さすがルルルンだ!!」
だが、魔法障壁を貫通した衝撃により、ルルルンの腕はズタズタに引き裂かれていた。
「大治癒魔法」
高位回復魔法により、致命的なダメージも一瞬で回復する。
「やっかいな回復魔法だ!だがしかし!!攻略方法も単純!!回復を上回る一撃を繰り返せばいいだけ!!!さあ行くぞルルルン!!!今日こそ、貴様を倒す!!」
「異世界に来てまで、ライバル設定再現しなくてもいいんじゃない?」
エクスキャリバーンは【※ヨコイケイスケの強い要望】により、ヨコイケイスケ自身の抑止力として設計された魔法使いキラー。いわゆるルルルンの天敵のような存在。
魔法障壁を貫通する『クロスカリバー』、あらゆる魔法に耐性を持つ『究極魔法障壁※命名ミズノカオリ』を備えた、対魔法使い特化型の機動騎士なのである。
「うぉぉぉぉぉ!!!!!」
「双呪接続」
咆哮とともに振るわれる剣撃。
一撃ごとに山一つを吹き飛ばしかねない威力。それらを、ルルルンは魔法の力で受け止める。
「威力転換魔法か!小癪な!」
威力転換魔法は相手の魔力を吸収し、自分の魔力へと転換していく魔法だが、その吸収量は無限ではなく。
「くそ!吸収しきれない!!?」
6撃目で転換可能な魔力量を超えた。イレカエが限界を迎え、剣がルルルンに届く。
「2・身体鋼鉄化!」
直撃の瞬間、咄嗟に肉体を硬化。イレカエで得た魔力すべてを注ぎ込むが、相殺しきれず派手に吹き飛ばされる。
「ぐはっ!!」
冗談のような勢いで吹き飛ぶルルルン。追撃のため、エクスキャリバーンはその速度にピッタリ張り付いていた。
「まだまだ!!」
「調子にっ!!!のるなよ!!!」
魔力を込めた蹴りで、張り付くキャリバーンをはじき飛ばすが、エクスキャリバーンは体制を立て直しすぐにルルルンへ向かい突進してくる。
「まったく、バカげた強さだよ」
回復魔法を使いつつ、自身の拘りに改めて後悔するが、考える余裕は少しもない。
「双呪接続、1・身体超熱巨大化魔法!」
即座に二重詠唱。ルルルンの腕に炎が纏われそれは、巨大な拳を形成する。巨大な炎の拳が向かってきたキャリバーンをカウンタ―で殴り飛ばす。
「ぐへっぁ!!!」
殴り飛ばすが、その感触はほとんどなく、威力は相殺されていた。
「どうしたぁ!!そんな程度か?俺様にそんな魔法は効かん!!」
絶界級の超熱魔法ですら、傷一つつかない。設定通り、完璧すぎる耐性。
「2・大地障壁牢獄!」
瞬時に巨大な岩の牢獄を展開し、キャリバーンを閉じ込めるが。
「こんなもの!!一瞬の時間稼ぎにもならんぞ!!」
エクスキャリバーンは岩の牢獄をいともたやすく切って破壊する。視界が晴れた瞬間自分の頭上にいるルルルンをすぐさま確認するが、ルルルンは既に次の魔法の準備を完了していた。
「一瞬で十分!!」
大地障壁牢獄が生み出した1秒の猶予、ルルルンが詠唱を終えるには十分な時間であった。
「四重呪接続!」
火、風、光、滅──四つの魔法陣が瞬時に展開され、ルルルンの周囲に回転する。それぞれがうなりを上げて共鳴し、中央で収束していく。
そして顕現する、世界にただ一つの『極界魔法』──
この魔法を使えるのは、大魔法使い『タンザナイト』ただ一人。
その力を今、ルルルンが行使する。
それは、世界のあらゆる防御手段──肉体、障壁、装甲、結界、属性耐性──
そのすべてを『意味のないもの』に変える、文字通り【絶対に防げない魔法】
「穿て!!!!!!!!爆砕嵐槍!!!!!!」
詠唱と同時、魔素が光の奔流となって収束し、一本の『槍』を形作る。
白熱した光が空気を焼き、大地を焦がし、空間そのものを震わせる。
それは音速を超え、雷鳴のような咆哮と共にエクスキャリバーンに向けて撃ち放たれた。