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僕とふたり3

朝、僕は目が覚める。


「…」


朝、僕は目を覚ます。


「…」


朝!僕は目を覚ましたぁ!!!


「ゔぅ…。うるせえー!」


カーテンの隙間から入り込んだ光の感覚は、僕の顔を覆う様に鬱陶しい。そして、目覚ましの音はうるさくもなく、穏やかに僕を起き上がらせてくれた。


「うるせえって言ってんだろ、毎日毎日俺の睡眠削るようなことしてさ、身体があることはいいことだらけじゃないんだよ、お前は辛さを知らないんだよ!」


 俺は本当に嫌いだ、この体質。

人とは違う体質であることを特別に思っているわけでもなく、将又、この体質を言い訳にして逃れたいわけじゃない。ただ本当に、逃れたいだけ。

 機嫌の悪い僕は身体を起こして、洗面台へと向かう。その途中に昨日の出来事を頭の中で考えていたけれど、寝起きのせいなのか、まだはっきりとは浮かび上がってはこなかった。


 「母さんおはよう」


「あら涼、いつも早いわね。おはよう」


「まあね、目覚ましがうるさくて」


「え?目覚ましなんていつもしないのに、珍しいね」


「いや、なんでもないよ」


顔を洗い、歯磨きを済ませてからリビングに入ると、朝から忙しそうな母親は朝食の支度をしていた。

母親とすれ違いな会話をして、俺は朝から『ふたり』と言う存在の無駄さを痛感している。

信じてもらえない体質で、証明もできない体質。

もし、俺の様なこんな体質を他の人が持っていたのなら、その人とはとても仲良く慣れそうだ。しかし、お互いが俺の様に自分の体質を隠していたなら、一生一人きりだ。

 リビングの椅子に座って、母親が作る朝食を黙って待つ。僕ってどうしてここまで母親に甘えているんだろうか、手伝いの一つや二つでもできると言うのに。


「母さん、俺がちっちゃい頃に言ってたこと覚えてる?」


「えー?なんか言ってたっけ?」


突然に、何を思ったのかなんてわからないけど、僕はそんなことを聞きたくなった。


「もう一人の声がするって、言ってただろ?」


「あー、確か小学生くらいの頃よねー」


朝食の準備をしながら、僕の話に合わせる母親、僕は続ける。


「そうそう!俺、実はさ…」


「あの時はびっくりしたのよ?涼が変な病気持ってるんじゃないのかって。お父さんも凄い心配してたわねー」


「…あー、確かに心配された記憶ある、懐かしいな」


僕は本当を言おうとしたけれど、両親に気を遣ってしまいそんなことはやっぱ言えない。でも、そこには情けなさも、苦しさもなくて、言っても意味がないと言う悲しさが滲む様に感じられるだけだ。

 俺は、やっぱり病気なのだろうか。

こんなこと現実的にはありえないし、良く考えてみたら、病気以外の何者でもないのではないか?そうなれば一度、精神科に行って診てもらったりすれば原因がわかるんじゃないだろうか。


「なあ、お前はどうなりたいんだ?」


「えー?今なんか言った?」


 僕は僕が何処かに行ってしまいたいなんて思わない、だけど、お前といるのが苦しいのは確かだ。もし僕がこの世で生きていたら、僕はお前なんかと会っていないし、会いたいなんてことも思わないよ。それだけは確かだよ。


「いや、なんでもない。学校行ってくる」


「はーい、いってらっしゃい……え!ご飯は!?」


「いらないや」


苦し紛れにも、逃れるようにリビングから出る。そして玄関、学校で定められた白靴を履いて外に出る。


「あっつ、夏だな」


「暑い」って感覚を誰とも共有できないのに、僕は一人呟いて道を歩き始める。そして今日も憂鬱な学校へと歩いて向かうのだ。


「あー、はいはい。そうしますよ」

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