俺とふたり2
俺が別の何かを考えて行動をしていても、俺の中にいる奴。一人称が「僕」で、透き通っていて一般の女性よりも低そうな声。だから、男性と言うよりも女性の声に近い声。そんな『ふたり』の声。
それが脳内に響いてきて、毎日が集中できない。
こんな現象は、俺が物心がついた時にははじまっていた。
だからもう、『ふたり』の声と言う概念に対しても当たり前になっている。でも、その声に対して慣れというものは一切なく、まるで俺とは別の、他人の声が脳内に響いている。そんな『ふたり』と仲良くなるわけもなくて、ほぼ毎日、当たり前のように喧嘩をしている。
小さい頃なんかは、両親や周りの大人、友達にもこの現象を話していたけれど、次第に変な奴と思われる恐怖を感じてから、こんな俺の悩みを隠してきた。もし、こんな体質から逃れられると言うのなら、俺は一刻も早く逃れたいと思っている。だから、俺はこの答えを探しているんだ。答えを知れば、俺は他の人と同じになれるんだろうか。
「なあ、こんな日だから聞くんだけどさ。お前は俺と別れたいのか?」
僕がそう口を開く理由、そして今日に限ってそんなことを聞く理由。それは今日が僕の誕生日であるからだ。そして、自分で解いたその質問に僕が答えなくてはいけないのだから、僕がその質問に返答しても、しなくても、僕が心の中で解決して終えばいいだけなのだ。
だから、何も言わない。
「そんなに焦らしたんだから何か言えよ、もしかして本当は別れたくないのか?」
別れる別れないというよりは、分離という方が適切だろうか。もしかすると、この男は僕と恋愛対象的な意味合いで付き合っているとでも思っているのだろうか。果たして、この男は僕の身体をなんだと思っているのだろうか。
「本当に口悪いよな、あとその話し方はどうにかならないのか?小説読んでるみたいで、すげえ頭痛くなるんだけど、それに身体なんてないくせに」
あのさ、僕の楽しみに文句言うのはやめてくれるかな?好きでお前の身体にいるわけじゃないし、それに…口なんてないし。
「そっか、なら早く分離でもなんでもして、お前はお前の意識がどこかに宿ればいいな」
僕に対しても他人事な奴。きっと友達にもそんな奴で、そもそも友達程の関係を感じた人なんて居ないのだろう。もし、僕の身体と僕の意識が逆ならきっと、人としての正解に近かったはずだ。
「だから!そーゆーことを言うのやめろ!結構傷つくんだぞ!」
『ふたり』の遠回しな嫌味に突っ込むけれど、俺は本当にこの身体で生きていて意味があるのだろうか。『ふたり』が言うように、立場が逆であったなら、俺的にはどれだけ楽であったのだろうか。いや、もしかすると、今の『ふたり』の様に嫉妬していたのだろうか。そんなことを『ふたり』に聞く勇気はなくて、『ふたり』が俺の思考までは読み取れないと言うことに、ただ安堵している。