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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第四章「英雄は世界に愛を乞う」

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76.追跡


「それで?ユグナはどの方向に行ったの?」

「恐らく、北西方面。何でかは知らないけど、ボクがくっつけた『水鳥』がそう言ってる」

「……便利だね、それ」

「グリュンはいないの?使い魔」

「いな…い」

「めちゃくちゃ不満そうだね」


 だって、スルアヴェラに負けてるって…なんか悔しい。そう思っていると、意外にもスルアヴェラは丁寧に説明してくれた。

 曰く、自分の得意属性の二種を組み合わせた使い魔が出来るのだとか。例えばヴェルは『黒鴉』。闇属性と氷属性を兼ね備えた隠密特化の使い魔らしい。

 ……そういえば俺が城暮らししてた時、鴉が一羽いたような……。

 

「それでまぁ…ガッ!ってやったら出来ると思うんだけど」

「説明下手か?ヴェルと似て」

「うるさいな!あ、でもお兄ちゃんと似てるなら良いや」

「良いんだ……現金なやつ」


 ガッ、ってやるって何?どういう事?

 取り敢えず俺の思う“ガッ”を頭の中で試していると、唐突にスルアヴェラが声を上げた。

 何事か、と思って振り返ると、その視線はクラに向けられていて。


「…どうしたの?」

「いるじゃん、丁度良い“核”が」

「……何言ってんの?」

「あぁー…そっからかぁ。あのね?使い魔の作り方は二種類あるの。

一つは魔力を固めて作る方法。これは今、グリュンがしようとしたやつね。もう一つは“核”に魔力を注いで作る方法。これに関しては“核”がそもそもそんなに居ないから、あんまりしないんだけど」

「……長い。つまり?」

「つまり、それに魔力注げば出来る」


 へー、と思いながらクラを見つめていると、何?と言わんばかりに首を傾げられた。

 俺は取り敢えず、真っ赤なその鋏を撫でながら“魔力を注いでも良い?”と聞いてみると、“よく分かんないけど良いよ!”的な顔をされた。良いのかそれで。

 でも、許可は貰えてしまったので。試しに俺は、クラに魔力を注いでみた。

 すると、淡い光がクラから発せられて。そしてパチパチと、光の粒が瞬いた。

 ……ただ、それだけ。


「えっと……嘘ついた?」

「違うよ!?だってちゃんとその子には“核”の資質あるもん!」

「もん、て」


 えぇー?と思いながらもう少しだけクラに魔力を注ぐ。目に見えた変化は一つもないが、もしかしたらいつか変わってくれるかもしれない。

 そう思っていると、突然、クラへの魔力供給が弾かれて。体に対する容量が一杯になった訳でもないのに何故、と首を傾げていると、隣のスルアヴェラが口を開いた。


「なってるよ、それ。『光蟹』に」

「…え?何も変わってな──い訳じゃないな、確かに……」


 いつの間にやら、クラの背後で小さな光の羽が羽ばたいている。物語とかでよく見る天使の羽を光に透かせたような、そんな形をしていた。

 所持属性は光と風。どうやら防御特化のようだ。


「じゃあクラ、ヴェルと、ついでにスルアヴェラも守れる?」

「ついでって言うな」

「倒せとは言わないし、耐えるだけでも良いから」


 そう俺がクラに伝えると、分かった!と言いたげに俺の手の中から、スルアヴェラの頭の上に移動する。

 そう、俺はきっと、ヴェルやスルアヴェラを護れるほど強くはない。

 自分が感情を抑えるのに精一杯で、他の人がどうなるかなんて気にする余裕がない。

 ──だから、任せたよ。

 そう心の中で呟くと、俺の小さな相棒は片方の鋏を振って、何かを言ってくれたような、そんな気がした。


♢♦︎♢


 懐かしい、夢を見た。

 それは、見たくもない過去だった。

 幾度も裏切られては、幾度も追われた日々。

 自分でも嫌気が差すほどに、自分自身が大嫌いだった。

 生まれてこなければ良かったと、何度思っただろう。

 何度この世界から消えたいと思っただろう。

 ──でも、そんな時に。

 そんな時にあの子と、出会ってしまったから。

 だから俺は、もう少しだけ、生きてみようと思ったのだ。

 

 あの子と生きる世界を。

 あの子がいる未来を。

 …見てみたいと、願ってしまったから。


 くるり、と竜は黒くて長い尾を丸める。

 ぱち、と泡が一つ、弾けて水の中に溶けていったのだった。


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