4話
『まさか、今日の放課後イベントはあるよね?』
放課後、中庭のベンチでローズは手作りクッキーを食べながら読書をする。そこにアンソニーが現れて、2人で手作りクッキーを食べるはず。そして、クッキーを気に入ったアンソニーのために、ローズがクッキーを作る約束をするシーンなんだけど…
「マリー様、今日放課後お時間ありますか?」
「ご、ごめんなさい、ローズ様…今日はちょっと予定が…」
「そうなんですね… 残念です」
『あっぶなー、動揺しちゃった… でもこれで、放課後イベントあるよね?』
◆◆◆
「ふふふっ、先回り成功!ここに隠れて様子を見よう!あっ、ローズが来た」
「折角頑張ってクッキー作ってきたのに、マリー様に食べてもらえないなんて残念だわ。しょうがない…そこのベンチにでも座って読みかけの恋愛小説でも読みましょう!」
ベンチに座ったローズはクッキーを鞄から取り出すとベンチの上に広げた。
「(モグモグ)なかなか上手に出来たわ。確か、ここまで読んだはず…」
クッキーを食べながら、小説を読み始めたローズ。
マリーは今か今かとその時を待った。
◆◆◆
「ねぇ、アルフリード、あそこにいるのはマリー嬢だよね?」
「そうですね…」
「フフッあんな体勢で何やってるんだろう?」
「やはり、怪しいですね…ベンチに居るローズ嬢を見張っているのでしょうか?」
「マリー嬢には、どうやら声をかけてはいけないようだからローズ嬢の所へ行ってくるよ」
「私はあの者を見張っています」
◆◆◆
「やあ、ローズ嬢 読書中かな?」
「ア、アンソニー様!?食べながら読書なんて…お見苦しい所をお見せ致しました」
「美味しそうだね。私も一つ貰っても?」
「こんなものでよければ…」
アンソニーはローズの隣に座るとクッキーを一つ摘み、口の中に放り込んだ。
「美味しいね!君が作ったのかい?もう一つ頂いても?」
「はいっ!好きなだけどうぞ… 喜んでいただけて嬉しいです」
「本当に美味しいよ!ははっ、沢山食べたからもう無くなりそうだ。すまないね、ローズ嬢」
「いえ、そんなに喜んで頂けるならまた作ってきますね」
「ああ、頼むよ」
◆◆◆
『放課後イベントゲット!!生ボイス、スチル残せたら最高なんだけどなぁー。あれ?そういえばリード様はいずこ?』キョロキョロと周りを見渡してもどこにもいない… 代わりに違う龍人騎士がアンソニーを守っている。『なんだ…今日はリード様居ないんだ…もう帰ろ』
いつの間にかアンソニーもローズも居なくなっている。草むらに隠れるため、うつ伏せに寝転んでいたので、制服は草だらけ… 手で草を払い除けていると…
「おい、そこで何をやっている?」
後ろから声をかけられた…『間違いない!このイケボはリード様だ!』マリーは振り返ることが出来ず、うつむき固まる。
「何をやっていたか聞いている」
「アリ…」
「アリ?」
「アリを観察してました!!さようならーー」
最後までアルフリードの方を振り向かず、そのまま寮へ猛ダッシュで帰った。
「おい、ちょっと待て!!」
そんな声が後ろから聞こえたような気がするが、待てるわけがない。『あんな間近でリード様を拝んだら、間違いなく失神するわ』ぜいぜい言いながら自分の部屋の前に着く。
「ど、どうしたのですか?マリー様」
丁度通りすがったローズは心配そうに駆け寄る。
「だ、だい…だいじょいぶ…はぁはぁ、ちょっと運動…をね…」
部屋に戻るとヘナへなと力が抜け、へたりこむ…
「ちょっと、運動しよ…」
◆◆◆
「で、どうだった?マリー嬢は?」
「アリの観察をしていたそうです」
「あはははっ 本当に面白いね彼女…」
「面白くないですよ!ますます怪しい…」
「そう?まあ、そういうことにしといてあげる」