31話
「まだ怒ってるのか?悪かったよ… 」
「…… 」
「無視すんなよ… 頼む…」
「なんなのよ。何か用?」
「明日少し時間あるか?大事な話があるんだ…」
余りにも必死なザックにマリーは明日時間を作ることを約束した。
◆◆◆
「話って何?」
アリア商会にあるアトリエで待合せをした2人だったが、真剣なザックの様子にマリーは困惑している。
「もしも… 俺がお前に求婚したら、どうする?」
「なっ!なんなの急に… 」
「もしもって言ったろ?俺は将来、アリア商会を継ぐ。共同経営するなら結婚が一番効率良くないか?」
「そうかもしれないけど… ザックを男として見れないし、、、」
「好きな奴がいるからだろ?それは分かってる。だけど、相手は龍騎士だ!ツガイが現れるかもしれないし、何より年が全然違うじゃないか!お前が辛い思いをするのは決まってる!なら…」
「そんな理由で諦められるならとっくにそうしてる… 私だって頭では分かってるんだよ。ツガイが現れるかもしれないって… だけど!心が嘘を付けないの!リード様が好き、リード様を見ていたい、リード様に触れたい、リード様に触れて欲しいって…」
マリーは止めどなく流れる涙を拭いながら『ああ、自分はこんなにもリード様の事を好きになってしまったんだ』と自覚する。ザックはそんなマリーを黙って見つめていた…
◆◆◆
「ギースお兄ちゃんが勉強を見てくれる事になったのだけど、皆もどう?」
『可哀相… 多分ギースは2人で勉強したかっただろうなぁ。』ローズはあろうことかアンソニーにまで声を掛けている。勿論アンソニーの答えは「行く」だった。
「俺も行ってもいいか?」
知ってる声に振り向くとそこにはやはりザックが居た。
「まっ…」
「ザックは確か、留学経験があるのだったかな?是非一度ゆっくり話してみたかったんだ。」
マリーの声はアンソニーによって消され、結局ザックも行くことになってしまった。
◆◆◆
ここは王立図書館…
「これは随分と大人数だ!」
ギース先生は嫌な顔ひとつせず、平等に勉強を見てくれていたが、マリーはそれ所ではなかった。『久しぶりのリード様… なんだか少し色気を増した?』オゼットの提案を思いだし、1人ソワソワしている。
「ちょっと資料を取りに行ってくるね!」
『よし、リード様を探しに行こう!』アンソニーから離れたアルフリードは図書館の中を見回っているはず。マリーは例の事を実行するべく歩き出した…
「リード様は… 居た!」
珍しくアルフリードは本を片手に読書に耽っていた。
『ドキドキしてきた…』マリーは静かにアルフリードに近づく…
「アルフリード様…」
「マリー嬢… 久しぶりだな…」
「はいっ、本当に…」
『いく?今行っちゃう?このまま真っ直ぐ突っ込めば間違いなくリード様に抱き付けるはず… 行くのよマリー!女は度胸!』マリーは目をぎゅっと瞑ると全速力でアルフリード目掛けて突っ込んだ!
「マリー嬢危ない!?」
「へっ?きゃっ」
足元にあった山積みの本に気づかなかったマリーは見事に本につまずいた…
「大丈夫か?」
『嘘!私 リード様にだ、だ、抱き抱えられてる!?ひゃぁーー!』アルフリードの筋肉質な腕がマリーの背中に回され、すっぽりと包まれていた。マリーは嬉しさのあまり体を小刻みに震わせて喜んだ。『このまま時が止まってしまえばいいのに…』
「ア、アルフリード様… 私、貴方の事が…」
「マリー嬢分かっている!それ以上言うな…」
「えっ?」
アルフリードはそれだけ言うとその場を後にした。
◆◆◆
「やはりか…」
『そうだと思っていたが、まさか震える程とは…』
アルフリードは先程まで自分の腕の中にあった温もりを思い出し 体が熱くなるのを感じていた…
「これほどまで嫌われているとはな…」
『でもこのままでは俺はマリー嬢の事を… これでは父と同じではないか…それだけは…』ぎゅっと拳に力をいれ、体の熱さを痛みで消し去ったのだった。
◆◆◆
「お前そんなところに座って何やってるんだ?」
「どうしよう…」
「はぁ?大丈夫か?頭でも打ったのか?」
ザックは床に座るマリーを覗き込む。
「おい、顔真っ赤だぞ!熱でもあるんじゃ…」
「バレてた… バレてたのよ!!!」
「何が、バレたんだよ。意味わかんね~」
「気持ちがよ!もうここには居られない… 皆には先に帰るって伝えて!荷物もお願い…」
マリーは慌てて、図書館を後にした。『次からどんな顔して会えばいいの… んっ?いや、これはチャンス?好きだってバレてるなら堂々とリード様を見てても… グフフっ』開き直ったマリーであった。




