28話
『き、気まずい… リード様とボートに乗ってみたのはいいが、話すことがない!』
「この間は…」
「えっ?」
「この間はチョコレートありがとう。旨かったよ」
「あ、いえ…」
『心臓に悪いよ~ 』
「あの文字は…」
「あの文字?」
『あの文字って【I LOVE YOU】の事?まさか!』
「いや、やはり何でもない。忘れてくれ…」
『ちょっと最後まで言ってよ… 気になるじゃん!』
「…… 」
「…… 」
『沈黙が恐ろしい…』
「あっ!あそこ。さっきローズが見たがっていた花がありますよ」
「近くへ寄ってみよう!」
湖に浮かぶその花は前世でいうチューリップに良く似た花だった。
「この花は何て名前なのかしら?」
「この花は アナリア という花だよ。綺麗な水にしか生息しないと言われている」
「綺麗ですね。なんだか懐かし… んっ?」
『あれ?今、ここには絶対に生息するはずのないものが見えた気が…』マリーは身体を乗り出し、水面を覗く。
「おい、そんなに体重をかけたら…」
「居た!マグロよ!嘘?何で湖にマグロが居るの!?有り得ない!」
「おい、そんなに騒ぐと…」
マリーはますます体を乗り出す。
「届かない~!こんな大人しいマグロがいるわけない。捕まえなきゃ… 後、少し… キャー!?」
「おわっ?!」
ボートは見事に転覆した。
「マリー嬢大丈夫か?マリー嬢?」
『駄目、ドレスが重くて… 息が出来ない…』
「ぷはぁーゲホッゲホッ。ありがとうございます。アルフリード様」
「私にしっかりと掴まれ…」
「はいっ」
『ひゃー近い近い近い!リード様の首筋が… 頬が… 襟足が… 全てが近い~ しかも、いい匂いがする…』
『な、なんだ?急にマリー嬢から甘い匂いが… これはまずい!嗅いでは駄目だ!』
アルフリードはマリーの首筋に鼻を寄せるとスンスンと匂いを嗅ぐ。
『!?★◇☆▶◇■◆★☆ リード様が!』
マリーの頭はパニック状態である。
『まずい!無意識にマリー嬢の匂いを嗅いでしまう!くそっ仕方ない…』
アルフリードは羽を広げるとマリーを抱き抱えたまま空へと舞い上がる。もの凄い勢いで岸へと舞い降りた。『えっ、今 私 飛んでた?』
「向こうにいるメイドに頼んで着替えてくるがいい。私はこれで失礼する」
「あ、はい…」
『嘘!嘘!今、一体何が起きたの?』
マリーはしばらくその場を動けないでいた。
◆◆◆
「へっくしゅんっ」
「馬鹿ねぇ~濡れたままでいれば誰だって風邪引くわよ。何であんな状態で座ってたわけ?」
「…… 」
あの後しばらく放心状態だったマリーはオゼットが声を掛けるまで濡れたまま地べたに座っていた。
「帰ったら直ぐに温泉に入って来なさい」
「は~い…」
◆◆◆
「ふふん~♪温泉~温泉~」
着替えを済ませたマリーは温泉へと続くドアに手を掛け固まる。
『待てよ… もしかしたら誰かいるかも…』マリーはなるべく音を立てないように抜足で進んでいく。
「なーんだ。誰もいないじゃん!」
「誰だ!」
「へっ?」
振り向いた先の岩影から現れたのは上半身裸のアルフリードだった。
「リ、リ… ハ、ハ、ハダカーーっ!?」
バタンッ マリーは後ろに引っくり返るとそのまま意識を失った。
◆◆◆
「うぅ~寒いっ」
マリーは布団にくるまりガタガタと震えている。
「風邪ね」
「熱もあるわ」
呆れた顔のオゼットと心配そうなローズが薬や食事を運んできてくれた。
「全く、体を温めに温泉に行ったのに、倒れて帰ってくるなんてねぇ~」
「アルフリード様も心配していましたよ」
「リード様が…」
マリーは温泉で見た光景を思い出し、顔をますます赤くする。
「あらっ?熱が上がったんじゃないの?顔が真っ赤よ?」
「大変氷で冷やさなくっちゃ!」
この後マリーは連休いっぱいベッドで過ごす事になった。
そして皆無事に3年生へと進級した…




