13話
「駄目じゃん!!学祭イベント条件満たしてないじゃん」
朝早く目覚めたマリーはベッドの上で暴れていた。
「よく考えたらオゼットがローズをクラス出し物から追い出すわけないじゃん。しかも、お菓子作る担当だから抜けられても困るし…アーンが見れないなんてあーっテンション下がる、、、あっ、そうだ!こっちからスタッフを派遣して順番に休憩を取って貰えばもしかしたら…アンソニーとローズと私を同じ休憩時間にして、オゼットはジョルズ様を連れてきちゃえば…フフフッ完璧だ!!これでいこう!」
着々と準備を進めるマリーであった。
◆◆◆
学祭当日
「さー、準備は万端よ!いつでもいらっしゃい」
「貴女凄いわね。完璧ね!用意されているコーヒーや紅茶は一級品ばかり。100パーセントフルーツジュースは手作り。朝早くから作ったお菓子はどれも見たことも食べたこともないようなお菓子ばかり、色とりどりで綺麗だわ」
「勿論よ。朝早くからローズには頑張って貰ったし」
「いえ、私はほとんど何もしていないんです。マリーが連れてきてくれたスタッフさんが優秀な方ばかりで」
「何言ってるのよ。ローズも頑張っていたじゃない。クッキーとっても美味しかったわ」
「ありがとうございます」
「所で、貴女その格好は…」
「黒にゃんこちゃんです」
頭に耳をつけて、ミニスカートからは長い尻尾がはえている。ロングブーツを履けば出来上がり。
「貴女からあまり香水の匂いがしないようだけど」
「今日は食品を扱うので、香水は薄く付けてきただけなのですがまずがったですか?」
「いえ、そうじゃないけど、そんな格好をしてもし獣人族のツガイでも居たら…まあ、それはないわね!ツガイを見つけられる獣人族や龍人族は十分の一位しかいないものね。忘れて頂戴」
「オゼットも似合ってますよ。名付けて【セクシーシスター様】です」
「確かに、服がピタッと体に密着していて体のラインがよく分かるわ。しかも、スリットが深く入ってる。普通のシスターの格好とは違うわね」
「そう!そこがセクシーなんです。ローズは絵本に出てくる聖女様です」
「確かに、聖女様ですが…スカートが短くありませんか?」
「いいのです、それで。さぁ、みなさまも着替えてください!あちらに更衣室を用意しましたので、お好きなものに着替えてきてください。あっ、アンソニー様はこれを」
「これは?」
「王子様のコスプレです」
「コスプレとは違う職業の服を着ることではないのかな?」
「そうですが、アンソニー様にはやはり王道を貫いて欲しくて…」
「王道ねぇ、まあいいでしょう。着替えてきます」
『シャァー!!これで王子様コスプレ服売れるわ~』
連れてきたスタッフを1人呼び出す。
「分かってるわよね。色々なコスプレ写真撮るのよ!あと、リード様も然り気無く沢山撮っといて」
「分かっております。任せて下さい」
いつものグー合図で完璧だ!!
「さぁ、コスプレ喫茶の始まりだ!!」
「「いらっしゃいませ」」
◆◆◆
「凄い人ね。凄い列が出来てるわ」
『それはそうでしょ。なんたって王子が王子の格好をして給仕しているんだから。しかも、オゼットとローズはあの雑誌以来みんなのアイドルよ。見に来るのは当たり前だわ!飛ぶように売れるわね。ドルゲスに連絡して至急在庫を持ってきて貰わなくっちゃ』
「マリー嬢 来たよ!」
「いらっしゃい、ジョルズ様」
「凄いね!2年Aクラスだけ人が集まっているよ」
「ありがとうございます。今、オゼットを呼びますので、一緒に学園祭を回ってきて下さい。」
「いいのかな…俺で」
「ジョルズ様がいいんです。オゼットー!」
「何よ、忙しいのに…ってジョルズ!?」
「オ、オゼット!?凄い格好しているね」
真っ赤な顔をしたジョルズは足先から頭の先まで舐めるようにオゼットを見ている。
「見すぎよ」
「ご、ごめん」
ますます真っ赤になったジョルズは首まで真っ赤だ。
「オゼットは休憩してきてください。時間は2時間です」
「えっ、いいの?」
「勿論です。皆順番に行くので平等ですよ」
「ありがとう、マリー!ジョルズちょっと待ってて!着替えてくるわ」
オゼットは嬉しそうに更衣室に急ぐ。
『さて、順番に休憩に入りますか』
ローズとアンソニーに休憩を言い渡すとアンソニーは早速ローズを誘って学園祭を回るようだ。漫画とは違う展開だが、先ず先ずだ。
連れてきたスタッフに「後は任せた」と告げるとマリーは急いでカメラを片手に2人の後を追う。今日は学園祭のため、カメラの許可がおりている。使いたい放題だ。
アンソニーとローズは早速色々な食べ物を買うと静かな場所へと移動した。
「そろそろかな…」
壁に体を密着させ、カメラを構える。
「さあ、いつでもこいっ」
「おい、あそこにミニスカート履いたメスの獣人がいるぞ。ちょっと声かけてこいよ」
「お前が行けよ。お前と同じくネコ科じゃないか」
『えっ、ネコ科?もしかして私の事じゃないよね』
後ろから聞こえる声がどんどん近づいてくる。
「やあ、君。そこで何してるの?」
「…… 」
『ちっ、邪魔な』
「あれ?聞こえてる?君、本当に獣人かい?(スンスン)微かにヒト族がつけてる香水の匂いがするようだけど?」
振り向いたマリーは満面の笑顔で答えた。
「ヒト族ですよ。これはコスプレです。是非コスプレをお買い求めになるようでしたらアリア商会にご連絡下さい。さようなら」
それだけ、言うと素早くまわれ右をし、カメラを構える。
「ヒト族か~でも君からはあまり香水の匂いもしないし、それに可愛い。良かったら一緒にお茶しない?」
「お構い無く~」
カメラを構えたまま答えるマリー。
「ちょっとだけだって。向こうに美味しそうな物がいっぱい売ってるから買いに行こう」
急に手を強い力で引っ張られる。獣人族はヒト族より何十倍も力が強いのだ。
「ちょっ…止めてください!私やらなくちゃいけないことがあるんです」
「少しだけだから」
全く人の話を聞かないネコ科の獣人は強い力でマリーをぐいぐい引っ張っていく。
「い、いた…」
「おい、その手を離せ」
『嘘!?この声は…』バッと後ろを振り向くとそこにはアルフリードが立っていた。
「聞こえないのか?その手を離せ」
「龍騎士… す、すみません。失礼しました!」
獣人2人組は凄い勢いで走っていってしまった。
「君はここで何をしている?」
「あ、や、あ、…」
「全く… んっ(スンスン)何か甘いものを持っているのか?」
「いえ…」
「(スンスン)だが、君から何故か甘い匂いがするぞ?(スンスン)」
『近い、近い、近い!それ以上近くに来ないで!』
「んっ、今日はいつもみたいに香水の匂いがしないようだが…」
「今日はあまりつけてません!!」
「そうか、ではこの甘い匂いは君から出ているのか…」
『誰か助けてヘルプミー!鼻血が出そう…』
「そうか…」
アルフリードはそう一言 言うと頭をコテンとマリーの肩に乗せた。
『でこ、でこが!!リード様のでこが!!??』
肩を伝ってアルフリードの でこ熱がマリーの体を駆け巡る。
『もう、無理…』遠退きそうな意識の中、音が聞こえた。カシャカシャ カシャカシャ
「あ、す、すみません。シャッターチャンスだと思ってつい… お邪魔しました!」
そこにはスタッフAが立っていた。
「ま、まって!何か用?」
「お店が混んで回らなくなってきたのでマリー様を呼びに来たのですが、どうやらお邪魔したみたいで」
「そ、そ、そ、んなことない!戻る 私」
「はぁ…」
「で、で、ではアルフリード様ありがとさんしたー」
お礼だけ言ってダッシュで走るマリー。スタッフAも走ってついてくる。
「君、名前は?」
「はい、クリスティーと申します」
「クリスティー、良くやった。君昇格ね」
「あ、ありがとうございます!」
力が入らない足を必死に動かし、なんとか教室まで戻れた私を誰か誉めて欲しいと思いながらマリーは営業を続けるのであった。
◆◆◆
「なんだ!!何が起きた?今、私はマリー嬢に何をした?」
『全く覚えていない。ただ、あの匂いが甘くて…くそっ、失態だ!!こんなことアンソニー様に知られたら…』
「おや、どうしたんだい?アルフリード」
「あ、や、何でもないです」
「ふーん、私とローズはもう戻るから君達も食事にでもいってきたらどうだい?」
「食事… 」
『あの甘い匂いを思い出す…』
「どうした?なんかいつもと違うみたいだか?」
「何でもありません。では、お言葉に甘えて…」
『アルフリードやつ、何かあったな。こんなに動揺している姿を見るのは初めてだ』
アンソニーは目を輝かせ、そんなアルフリードを見つめるのであった。