第6話
サブタイトル「入隊」
※ほぼ会話です。
ミコトが目を開けると、目の前にミヤビの顔があった。
本当に、すぐそこに。あとどちらかが顔を10cmほど動かせば届く距離に。
「近い……」
「あ、ミコト!起きた!?大丈夫!?」
「まぁ……ある程度は」
「待ってて、村長呼んでくる!」
そう言い残し、走っていくミヤビを見送りながら。
ミコトはふと思ったことを口に出していた。
「やっぱり、俺がやらないと……」
「何を?」
「うおぁっ!?」
「おぉ、そんなに驚かなくてもいいじゃないか」
「フミト、さん?」
「うん。君をここまで運んであげたフミトだよ」
「ありがとうございます……?」
「ま、びっくりしたよね。ミヤビちゃんが焦ってこっちにくるから何かと思えば……」
「どうなってたんですか?」
「君が血溜まりの中で倒れてたんだ。それも、背中から何かに突き破られたみたいな痕があったし」
「突き破られた?」
「うん。それこそ、後ろから刀で刺されたみたいなね」
「刀で……」
「ああ、結構──『ミコトーッ!!!!』
フミトの声を掻き消すほどの大声で呼びながら走ってきたのは齢78にもなる村長だった。
「ちょ、村長、そんな走ったら危な…… うわぁ!?」
「ミヤビ、大丈夫か!?」
「えへへ〜、こけちゃった!」
「大丈夫そうだな」
「それで、ミコトよ!よく、よく生きて戻った!!よくやった!!」
「村長……!」
「まあ、村長が一番ミコトくんのことを心配していたからね」
「そうなんですか?まあ、僕は親もいませんしね」
「自分の村の若者が死にかけているのに心配しないやつなどおらん。……そうだな、今だから言おう。ミコト、お主の出自を」
「……出自」
「ああ。知っておいた方がいい。術刀と契約し、成人も済んだのだ」
「村長、まさか――」
「まずは、ミコトの親について話そう。ミコトの父親、タケルは術刀〈藍染〉の使用者だった。そして、聞いたことがないかもしれんが、『陰祓い』という組織の幹部だった」
「『陰祓い』……」
「お前が見たことがあるかはわからん――多分ないじゃろうが、陰喰らいを退治する組織じゃ。陰喰らい自体はそこまで強くはない。切ればそこで終わりなのだが、『陰招き』という存在がある。」
「陰招き……!?」
「なんじゃ、知っているのか?こやつらが陰喰らいを呼ぶのだが……」
「一度、勝負したことがあります」
「「は?」」
「確か……トバリって人と」
「トバリって……」
「確か、今の副長の名がそんな感じじゃった」
「そう、副長!副長って言ってました!」
「なぜ早く言わない!フミト、お前は今すぐ陰祓い本部へ、フミヤを呼んでこい!」
「わかりました!」
「全く、この阿呆め。なぜ早く言わんのじゃ!」
その後十分もしないうちに、フミトが男を連れて帰ってきた。
「村長、お久しぶりです」
「ああ、すまんなフミヤ、いきなり」
「いえ。最近は陰招きの活動も大人しくて暇を持て余していましたから」
「そうなのか。それで、フミヤ。呼んだのには訳がある」
「そこの子が、例の?」
「そうだ、こいつがミコト。」
「ついさっき、新しい情報がこいつの口から出た」
「新しい情報?」
「こいつは、トバリと対峙したらしい」
「トバリ!? 陰招きの副長じゃないですか!」
「ああ。侵壊術と暗帳術を使っておったそうじゃ」
「なら、本物でしょうね……。侵壊術は、陰招きの総長・副長にしか伝わっていない術ですから」
「そうなのだ。だから、こいつをそちらで、陰祓いの本部で預かっていてほしい」
「本部で、ですか……」
「そうだ。ついでに稽古をつけてくれるとわしとしてもとても嬉しいがの」
「まあ、あの〈瑞穂〉を継いでいる人物なんですからね。確かに、預かったほうがいいかもしれない」
「そうじゃろう?殺されてしまう前に、陰祓いに入れて欲しいのだ」
「入隊許可、ですか。まあ、確実に降りるでしょう」
「だから頼む!こいつを預かってくれ!」
「わかりました……と、言いたいですが。生憎、私にそんな権限はないのですよ」
「そうか……。まあ、こちらでこいつは安全に守っておく」
「待っていてください。明日中には、この子を連れて帰る許可を得てきますから」
「おお、心強い!頼んだぞ、フミヤ!」
ミコトからすれば、わけがわからない話が──しかし自分の身に関する話が──行われている状況。
どう反応するか迷っているうちに、二人の会話は終わっていた。
「あの、村長……」
「なんじゃ、ミコト」
「俺は、この先どうしたらいいのですか……?」
「何、心配することはない。明日以降、おそらく明後日だと思うが、それまではここで絶対安静じゃ。それからの話は、またその時にするつもりだ」
「そうですか……」
結局、ミコトがどうなってしまうのかはさっぱりわからないまま、話を切られてしまった。
そこに割り込んできたのは、フミトだった。
「ミコトくん。少しだけ、俺から説明させて欲しい。いいですよね、村長」
「まあ、どうせすることじゃからの」
「まず。さっき来たのは、俺の兄のフミヤ。〈金雷〉と言う術刀と契約して、今は陰祓いの本部で勧誘の役割をしているんだ。そして、君はおそらく明後日、保護と称して陰祓い本部へと連行される」
「連行……?」
「心配しなくていい。君は〈瑞穂〉継承者。本来であれば、陰祓いのトップにいるはずの人材だからね。雑には扱われないさ。──そこで陰祓いの上層部と話して、入隊許可が下りれば君は晴れて陰祓いの一員だ。稽古もつけてもらえるはずだよ」
「本当ですか?」
「ああ、もちろん。陰祓いは、基本的には陰招き以外の人間には優しいからね。あ、そうそう。もしかすると、君にはしんどい話──具体的には、君の家族の話をされると思う。そこでは、まあ頑張って聞いてくれ」
「家族の話」
「そうだ。まあ、悪くは扱われない。これは絶対だ。安心していい」
翌日のことだった。
村長に呼ばれ、村長の家に出向くとそこにいたのは、フミトだった。
「おはよう、ミコト。もう少しで、兄貴が来るはずだから」
「フミヤ……さんが?」
「そう。今からここで少しこの3人と兄貴の4人で会議をする。会議といっても、君は聞くだけになると思う。というか、ほぼ兄貴からの説明になる」
「説明?」
「うん。昨日言っただろう? 君は陰祓いに入隊するだろう、って」
「あ〜、はい。言ってましたね」
「そのことの説明だよ。あとはまあ、君自身のこととか、君の家族のこととかね。ま、我慢してくれ」
そんなことを話していると、扉がノックされた後に開けられる。
「おはようございます、村長」
「うむ。おはよう、フミヤ。もう全員揃っておるから、早速始めようか」
「わかりました」
そうしてまず始まったのは、ミコトの陰祓いへの入隊許可が下りたこと。
加えて、ミコトは陰祓い本部、隊員の寮のような場所で暮らすことになること。
そして、隊員たちと基礎稽古をすること。
「あの、いいですか?」
「ん? なんだい、ミコトくん」
「陰祓い本部って、どこにあるんですか?」
「ここから2時間くらいの場所だよ。山の中にある」
「ありがとう、ございます」
「じゃあ、次はミコトくんについて教えてくれ」
「僕ですか?」
「うん。 ミコトくん自身のこと」
「わかりました……」
そうして、自己紹介のようなものが始まった。
自己紹介といっても、それは単純に好きなものを話したりするわけでは無い。
ミコトが〈瑞穂〉と契約してからのことを、根掘り葉掘り全て聞かれた。
〈瑞穂〉の境中で、カグラと会ったこと、技はほとんど何も知らないし使えないこと。
陰喰らいとの対戦経験から、トバリと対戦したことについて。
全部を話した。
「わかった。ありがとう。じゃあ、このことは陰祓いの隊長と副隊長に確実に伝える。それと、刀の扱い方とかは基礎稽古中に教えるけれど、〈瑞穂〉については、本部で保管されている本を読んでもらうか、カグラ様に会えるなら会って直接教わってほしい」
「なんでですか?」
「そんな大きな理由じゃない。単純に、〈瑞穂〉を使えるのは君以外だとカグラ様しかいないからね。そのカグラ様も、〈瑞穂〉の境中でしか会えないとなると、君自身に頑張ってもらうしか無いんだ」
「……わかりました」
「じゃあ、最後に、君の家族について話そうと思う。心して聞いてほしい。村長も、何も言わないでくださいね」
「わかっておるわ。しっかりと頼むぞ」
久びさすぎました。忘れ去れてないことを祈っています。
176日ぶりの投稿です。遅くなり申し訳ありません。
この続きはここまで空くことはないと思います。
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