第5話
サブタイトル「『陰招き』とヨミ」
遅れてすみませんでした。orz
「な……で……」
その言葉を最後に、ミコトの意識は飛んだ。
それを確認した後、逃げることもせずに背を向け歩き始める犯人。
その姿が消え、ミコトが1人になった時だった。
「ここは……境中? なんで……」
ミコトは確実に意識を飛ばした。
だが、今のミコトは確実に生きているし、動くこともできる。いつもより体が軽く感じるくらいだ。
ミコトがいたのは、〈瑞穂〉の境中だった。
「あいつはまた何かやらかしたのか?全く……」
そんな声が聞こえた方を咄嗟に振り向いたミコトの視界に映ったのは、自分によく似た男。
カグラだ。
「カグラ……さん?」
『なんだ』
「いえ、なんでここに飛ばされたのか、知っているのかと思って……」
『知らん。だが、見当は付く。大方、現実のお前が致命傷を負ったんだろう』
「確かに、後ろから刺されたから……」
『誰にだ?』
「わからないです……」
『そうか、まぁいい。それで、こいつ――〈瑞穂〉は、使用者が致命傷を負うと、即座にその敵ごと境中に連れてくる癖があるんだ。刀のくせに、こいつは親切というか……』
「ということは……」
『お前を刺した敵もここのどこかにいるだろうよ。探すか?』
「そうですね」
ミコトとカグラが境中を歩き出す。
一方その頃。
「なんだ、ここは…… まさか、〈瑞穂〉の術?」
そんなことが、と呟きながら歩いている男がいた。
その腰には黒い鞘が差してある。
「侵壊術〈陰裂招来〉」
その男が口にしたのは、瑞穂境術とは違う術の名前。
言い終わると、男のもとに現れたのは陰喰らいだった。
「いけ。ミコトを発見し次第、殺せ」
「ミコト、気を抜くなよ。陰喰らいの気配がした」
「え? あ、はい。俺は何も感じませんでしたけど……」
「お前とはやってる年数が違うんだ」
「……すみません」
「ほら、早速お出迎えだ。これくらい、お前が1人で行け」
「え!? ……わかりましたよ」
暗に嫌だと言おうとするミコトに対し、有無を言わさぬ目つきでやらせようとするカグラ。
「グォォォォ!!」
「瑞穂境術〈境断〉」
「……いた」
「!? 誰だ、お前は! 邪魔はさせんぞ!」
「落ち着いてくださいよ、カグラ様。初代の意思を受け継いでいますから、私はね」
「!! そうか、お前――」
「ええ、そうです。 あなたの最大のライバル、ヨミ様が創設された『陰招き』。その5代目副長です」
「ここで俺と殺し合うつもりか?」
「いえ。私の狙いはあくまでミコト1人。カグラ様を相手取って勝てると思うほど私の脳はお花畑ではありませんよ」
「……そうか。なら、好きにするといい」
「いいのですか? 私は確実にミコトを殺す。そこに躊躇はありませんが」
「今の俺はただここに住まう亡霊のようなものにすぎない。俺が止める権利はない」
「……そうですか。それでは、遠慮なく。 ――手出ししないでくださいね」
「しないさ」
「あれ、消えてく!? なんで……」
「ソレは私の手駒に過ぎないからですよ、ミコトくん」
「誰だ! なんで俺のことを知ってる!」
「そう攻撃的にならずとも、教えて差し上げますよ。私はね、『陰招き』という組織の一員なんです。そこのトップから、君を殺せという命令が出た。だから君を今、ここで殺すのですよ」
「なんで……! 俺は何もしてないだろ……!」
「さぁ? 理由なんて私は知らないし、理由があるのかも私は知らない。私は君を殺すだけの存在にすぎない」
明らかに殺意を放ち、会話もする気がなさそうな敵と向き合う。
ミコトにとって、対人戦はこれが初めてだった。
「さあ、楽しい殺し合いの始まりです! ――侵壊術〈陰裂招来〉」
「瑞穂境術〈境断〉!」
「それだけですか? 変わり映えしないというのはつまらないですよ!」
「うるさい! ……クソッ! 瑞穂境術〈境断〉!」
「侵壊術〈影傀〉」
「すまんな、5代目副長。それ以上は好きにさせられん」
「言っていたことをもう破るのですか、カグラ様よ」
「ミコト、下がれ。ここからは俺だ」
「全く、ヨミ様と同等のあなたを相手取るつもりはないのですよ。だから――」
「ごちゃごちゃ煩い。――行くぞ」
「――侵壊術〈冥降〉。あなたの相手は私ではない」
『久しいなぁ、カグラよ』
そこに現れたのは、今までの陰喰らいとは違う存在。
人の姿をして、言葉を話す。腰には黒の鞘が差してあり、その顔には幾本もの刀傷がついている。
何より、女であること。そして、カグラを知っている存在だということ。
今ミコトの目の前で起きている全てが、ミコトに驚きを与えていた。
「お前こそ、何の為に帰って来た? ヨミよ」
『久々にお前と刀を交わらせることができるな。今日こそケリをつけようか』
「望むところだ。 ――瑞穂境術〈注連引〉」
『侵壊術〈壊潰〉』
カグラが新しい境中を創り出し、ヨミが即座にそれを潰す。
その応酬を、ミコトはただ呆然と眺めていた。
「何をしているのですか? 私の相手は君ですよ?」
「お前……! まだいたのか!というか、誰なんだ!」
「おや、言っていませんでしたか。これは失敬、私はトバリ」
「トバリ……」
「あと、君を殺すまで私は君から離れません。」
「なんでなんだよ……!」
「ハァ、全く頭が弱い。理由なんて知りません。こう見えても私は『陰招き』の副長だ。人殺しなど幾度もやっている。今更躊躇するつもりはない」
「だからなんだっていうんだ! 俺はまだ生きるんだ」
「そうですか、それではせいぜい楽しませてください。――暗帳術〈闇縫〉」
「技が違う!?」
「ああ、侵壊術というのはあくまでヨミ様の術。私の――術刀〈黒檀〉の術はこの暗帳術です」
「瑞穂境術〈境断〉」
「馬鹿の一つ覚えみたいにその技ばかり…… それしか使えないのか?」
ミコトはその問いかけに答えない。答えられない。
口元を裂かれ、頬には刀傷が増えていた。
「お遊びはここまでだ。その命、頂戴する。――暗帳術〈冥葬〉」
鮮血を吐き、白目を剥いて倒れたミコトにとどめをさすべく近づくトバリ。
その刹那、トバリの右腕が千切れていた。
「瑞穂境術〈神裁〉! ――おい、生きてるか、ミコト!」
「なんで……! ヨミ様は……!?」
「あいつなら逃げたぞ。 トドメを刺しきれなかったが、しばらくは呼んだって現れないだろうさ」
「クソッ、クソッ! 今回こそ、陰招きの総長になるはずだったのに……!」
「お前にはまだ早いってことだな。 ここで潔く殺されるか、尻尾をまいて逃げるか。どうしたい?」
「逃げられないのをわかっているのに聞くなんて、あなたも趣味が悪いですね」
「さっさと決めろ」
「はぁ、全く今日は悪い日だ。逃げさせてもらいますよ。次こそミコトの命はもらう。瑞穂も、ね」
そう言い残し、フワッと煙を残すようにして消えていくトバリ。
カグラは意識を失ったミコトを抱えたまま、境中を歩き進めていた――
厨二っぽさ満開。「鬼○の刃」かな?と思った人は鋭いですね。
勘のいいガキは嫌い……ではないですが、温かい目で見守ってください。
似てしまっただけです。決してパクったりはしません。誓います。




