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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第2章

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22/97

2-8

「『穴掘り』」

「「「おおぉ~」」」

「……さあ、そろそろ柵の強化をしたいので、土をさっきのように固めてくれないか」

「よしっ!皆の衆、やるぞ!」

「「おう」」


 ジーナの声に村長が作業に来ていた村民に指示を出す。すでに作業開始から数時間。やること自体は慣れたもんだ。畑で邪魔な石や他所から持ってきた土などを柵の周りへと運び入れる。そのために、堀と柵の間は50センチほど空いていて、簡単な作業のために入ることができる。普通なら柵の修理だが、今回は補強だ。

 両側から石を置き、土で軽く固める。まあ、そんなに量もないから高さはほんの50センチほど。幅だって、前後に各20センチくらいだ。こいつが、ジーナの魔術――『石生成クリエイトストーン』――で圧縮され、中心に木の柵が入った高さ30センチ、幅20センチのささやかな壁となる。それだけで守りが強固になるもんじゃないけれど、あると無いじゃ全然違う。

 まず、柵が倒れにくくなる。壁との境目で折れる可能性はあるが、倒れにくさはただ地面に埋められた時に比べるべくもない。雨水によって根元から腐ることもない。修理が少々手間だが、元々がこまめに取り換えるもんじゃないからあまり気にしてないようだ。

 そして、柵の低い位置の隙間が埋まったことで、小動物が入りづらくなる。だから、野菜などが齧られることも減る。堀があるだけでかなり減ったとのことだが、空堀だし、そこまで幅も広くないので少しは被害があったのだ。それがほぼなくなりそうなのだから、村人の喜びはどれほどのことか。その気持ちはよくわかる。たとえ一口分だろうが、食事の量が増えるのは何よりも嬉しい。

 もちろん、防御力も上がる。堀と柵との間が今までより狭くなり、より、柵を攻略しづらくなる。柵を掴んで揺すろうにも体重をかけにくいし、そもそも堀から上がるために掴もうとしても、掴める位置が30センチも遠くなるのだ。堀も今回少し深くする予定だし、川からの水も引き込むのだから、これはもう村レベルの柵じゃない。


「……これで安心して眠れるな」

「耳長鼠にも牙兎にも悩まされずに済みそうさね」

「猪だって怖くないさ」

「おいおい。猪が村に来るこたぁ無かろうに」

「……ちげぇねぇ」

「「「ははははははっ」」」


 作業中の村人たちがしているよくある笑い話に、ジーナはきょとんとした表情で小首をかしげている。でも、楽しそうな雰囲気を壊さないようにか、何も聞いてこない。

 淡々と魔術をかけ、村の防御力を向上させていく。それも大盤振る舞いだ。俺が『穴掘り』で堀を強化するだけでも、正直言えばこの村の規模じゃ一年分の収益程度じゃ賄えないくらいの金額がかかる。なにせ、村は現金収入の手段がほとんどないからな。だからこそ、これをこなすことで簡単に俺の借金が返済できたんだが。

 堀の拡張、水路の建設、柵の強化。特に柵は、支えを固めただけじゃなくて、堅牢化のために『鋼鉄化アイアンスキン』すらかけてるからな。『硬化ハードスキン』と違って長期間の効果が得られる『鋼鉄化』は桁違いに高度な魔術だ。それを村を囲う柵の全部にかけて回るんだから、その魔力量に恐れ入る。これじゃ、ゴブリンどころか盗賊程度じゃ柵を超えられない。嫌がらせに矢を放つのが精いっぱいの防御力。そんなもん、辺境の村に持たせて何考えてんだか。

 そんなことを考えながらも『穴掘り』をし続け、気が付けば昼飯の時間になっていた。今のところ終わったのは7割程度。慣れた『穴掘り』はそれほど魔力量を消費しないからそっちは問題ないが、時間的に夕方までに水路を完成されるのは難しいかもしれんな。


「順調順調。

 お~いディグ。何を難しい顔をしているんだい?」

「いや。今日中に水路までは終わらんなと思ってな」

「ああ、それか。気にしなくていい。

 水路は引き込みも流れ出しも半分ほど作れれば十分さ」

「そうか?そろそろ収穫だから手間は少ない方が良いだろうに」

「逆さ。収穫の合間に少しずつ掘り進めて、開通を収穫祭の目玉にしたいらしい。派手好きな村長らしい考えだが、村人は喜ぶだろう良い案だ」

「収穫祭の目玉か……そう言われると、なんか照れるな」

「それだけのことをしたのさ。少しだけ角度をつけた『穴掘り』。できるようになったんだろう?堀の底がほんの少し斜めになっていたよ」

「よくわかったな。

 ああ、そうだ。あっちが流れ出す側だろ?底は固くしないって話だったからその通りにしてあるぜ」

「思った通り、君の『穴掘り』は便利だね。私では練度が低くてそこまで色々とできないから尊敬するよ」

「……よせやい。

 さて、飯も食ったしちゃっちゃと終わりにしようぜ」

「そうだね。作業は早めに終わりにして、言葉遣いの勉強でもしようか」


 やべっ。

 そう思った時には後の祭り。すでにジーナの中で勉強の予定が組まれていた。はぁ仕方ない。気が抜けて口調が素になった俺の自業自得だ。早めに取り掛かれるようにしないと、夜遅くまで勉強する羽目になるぞ。

 午後からは時間短縮のため、『穴掘り』と『穴掘り』の間の移動を歩きから走りに変える。走りながら掘れれば一番速いんだが、まだまだそこまでの練度はない。掘るときはゆっくりとした歩きだ。それでも、午前中は移動は歩き、掘るときは立ち止まってだったから今かかっている時間は半分ほど。午後が始まってすぐに残りの堀は終わった。終わらした。

 頃合いを見計らってダグが剣術教室を終わりにしてこちらに来てくれた。村の外で水路掘りをするときの護衛としてだ。万が一ってのがあるからな。最初は子供だけだった剣術教室だったが、いつの間にやら大人も複数混ざっていたな。


 『穴掘り』


 村長に指示された上流の川から少し離れた場所、そこから村まで浅めの水路を掘る。村周りの堀と同じく、底は斜めで固めるのは左右だけ。横幅も深さも堀の半分なので、その分、1回で少し長く掘れる。だから、村を一周する長さと同じくらい水路を掘っても、そんなに時間がかからなかった。村の堀から流れ出る部分も、引き込み水路と同じサイズ感で作成。そこまでやっても陽はまだ高く、魔力の残りも十分。久々にたくさんの『穴掘り』を実践したが、まだまだできるぜ!

 意気揚々と村に帰ったが、思ったよりも中途半端な時間だった。夕食にはかなり早いが、勉強するとなると飯を作る時間が困る。ダグ?あいつの飯は可能な限り喰いたくないな。火が通ってれば良いってのは食事じゃないぞ。少しは味にこだわってほしい。

 ちーっとばっかり時間が余ったので、ジーナが面白い提案をしてきた。

 ……良いじゃねぇか。やってやるよ!

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