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すれ違い 86

楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

 社交のレッスンが始まり、それぞれがパートナーと手を取りダンスを踊り始める。


 その中でも一際目を引くのは、ハロルド殿下とフィリア嬢であろう。


 皆その姿を見ながら息を呑んだ。


 あれ程までに可憐で美しい様は中々見れるものではない。


 ハロルド殿下はしっかりとフィリア嬢を支え、リードし、踊っていく。


 その姿に、グリードは悲しげな表情を浮かべた。


 お似合いの二人である。


 グリードは、自分でもよく考え、フィリアと少し距離を取ることを選んだ。


 そして、初めて、客観的に二人を見た。


 お似合いなのだ。


 しかも、フィリアがハロルドを嫌いでない事をグリードは知っている。


 だからこそ、辛くなる。


 俺はむしろ邪魔なのではないかとさえ思えてくる。


 勇気がどんどんとしぼんでいく。




 フィリアは、淑女に戻るべくレッスンにも力を入れた。


 だが、入れるほどにグリードが離れていく。


 今までであれば、後をつけたり、ハロルドを睨みつけたりとしていたグリードが、一歩引いたのである。


 そして思う。


 グリードは、私とハロルドが恋愛をする事を望んでいるのだろうか。


 あの、こちらを見守る視線はなんなのだろうか。


 私はやはり、家族でしかないのだろうか。


 そう思うと胸が苦しくなる。


 私ではグリードの恋愛対象にはなり得ないのだろうか。




 そんな様子を見守る九人は大きくため息をついた。


「駄目ですわ。」


「すれ違ってる。」


「何故かしら?」


「どうしてそうなった?」


「まぁ、フィリアが可愛そうだわ。」


「いや、可愛そうなのはグリードさんだろ。」


「なんと出来ないかしら?」


「本当にまどろっこしい二人だなあ。」


 八人に対し、ニフエルはため息をつきながら言った。


「お前達は何をしているんだ?」


 八人はバッとニフエルを見ると言った。


『恋愛見守り隊です。』


 ニフエルはまた大きくため息をついた。


「人の恋路の前に、自分達が頑張るべきでは?」


『は?』


「人の一生は短い。その短い中で、どう相手と向き合っていくかで、人の一生は大きく変わる。長く生きている者からの助言だ。」


 八人はお互いの婚約者と向き合い、しばらく無言だったが、互いに手を取り合うとうなずき合い、ダンスホールへと歩いていった。


 ニフエルは、その様子を見ながら笑みを浮かべる。


「人とは、本当に可愛らしい生き物だな。」


 人の一生は短い。


 ニフエルは、すれ違うグリードとフィリアをじっと見つめた。


読んで下さりありがとうございました!

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