聖なる地 77
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フィリアはグリードに駆け寄ろうとしたが、目の前に透明の壁があり、グリードのそばへ行けず、壁を何度も叩いた。
「グリード!グリード!」
ガチャリと重たい鎖の音が響く。グリードはフィリアの声に目を見開いた。
だが、次の瞬間壁が白色に変わり、グリードが見えなくなってしまう。
「グリード!グリード!」
「呼んでも無駄だ。」
フィリアが振り返ると、聞き覚えのある声の男がそこに立っていた。
あの日、グリードが連れ去られた時に聞こえた声の主だ。
「貴方が誘拐犯ね。」
男の黄金色の髪がふわりと舞い、金色の瞳を不機嫌そうに細めた。
「私は、忘れろと言ったはずだが?」
「大切な家族を連れ去られて、ハイそうですかと言いなりになると思うの?」
男は大きく息を吐いた。
「とにかく、貴方には聞きたい事がある。ついて来なさい。」
男に誘導され、フィリアはしぶしぶといった様子でついて行った。
何度も振り返り、グリードに会いたいという気持ちを抑える。
連れて行かれたのは綺麗な龍が描かえた門を潜った先のテラスであった。
机の上には淹れたての紅茶が用意されていた。
「座りなさい。」
フィリアは、しぶしぶと椅子に腰掛けた。
ゲームであればすぐに称号をもらえるはずだが、ストーリーからずれてしまっている今、安安と進む様子ではなかった。
「聞きたい事がある。」
「答えたらグリードを返してくれますか?」
「それは無理だ。」
「じゃあ答えません。」
その言葉に、男の眉間にシワが寄った。
「私はニフエル。聖なる乙女の選定者であり、封印の守り手だ。私には聞く権利があると思うが?」
「無理やり人を誘拐する人が、権利など主張しないで下さい。」
厳しい口調のフィリアに、ニフエルは目を瞑った。
「怒っているのか?」
「大切な人を奪われ、それで、怒らないでいられますか?」
ニフエルはその言葉に笑みを浮かべた。
「その言葉そっくりそのまま返そう。私が何百年と封印してきた者を、奪ったのは貴方だろう。」
フィリアは机を叩きつけて立ち上がった。
「仲間を苦しみから開放も出来なかった貴方に、一度も会いにも行こうとしなかった貴方に、そんな事を言う資格は無い!」
「見守ってはいた。ただし、この数年は誰かさんがかけた幻惑の魔法のせいで、まんまと騙されていたがな。」
「あら、子どもの魔法に騙されるなんて、未熟ですこと。」
「子ども?ふ、、、子どもかな?化物の間違いではないか?何故騙されていたのか判明する迄にかなりの日数を要する程の巧妙な魔法であった。」
「あら、お褒めいただきありがとう。」
ニフエルは神妙な顔を浮かべる。
「やはりあの魔法を築き、グリードを連れて行ったのは貴方だったか。」
フィリアは、自分が誘導尋問にまんまとハマった事に、息を呑み、そしてため息と共に座った。
「そうよ。グリードを開放したのも、バレないように魔法を施していたのも私。」
「何故、あそこにグリードがいると分かった?」
フィリアは、表情を消すと、以前から考えていた真実ではないが、嘘でもない内容を、言葉にする。
「私には5歳の頃から、人には知り得ないことが分かり、そして、聖なる力を得た。何故かと問われても困る。ただ、私には、あそこにグリードが居るのが分かり、助ける事が私の使命であると感じたの。」
その言葉にニフエルは、目を丸くする。
「神託、、、か。」
フィリアは平気な顔で何も言わない。相手が勝手に勘違いをするのを待つ。
前世でゲームなんて内容は、伝えてもメリットはない。だから、嘘はつかずに、相手が勘違いしてくれるのを待つのみだ。
ニフエルは目を輝かせた。
「だから貴方には、試練を乗り越えずにグリードを開放出来たのか。、、、今回の試練も難なく乗り越えた、、、なるほど、貴方は聖なる乙女なのだな。」
自分で納得してくれるニフエルに感謝である。
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