ルーナの婚約者 114
ルーナは、ハロルドの言葉を思い出しては顔を赤らめて大きく息を吐くを繰り返していた。
こんな事初めてであり、どうしたらいいかが分からない。
自分の部屋をうろうろとしていたその時、自分に来客が来たとの声がかかり、応接室へと足を向けた。
誰が来たのか聞いたが、誰も答えなかったので中に誰がいるかがわからない。
ルーナは扉の前で地位角息を吐くと顔を引き締め、扉を開けた。
部屋の中にいた人物は、この国の第一王子であり、元婚約者であった。
ルーナは表情に驚きを出さないようにしながら、優雅にカテーシーを行った。
そして、相手を伺いながらも促されるままにソファに腰を下ろす。
「突然の訪問、申し訳ない。」
「いえ。ですが、私達はもう婚約者ではございません。このように、不用意に二人きりで会うべきではございませんわ。」
「あぁ。分かっている。それでも、貴方には、もう一度、二人で向き合いたかったのだ。」
「何を今更。」
「あぁ。今更だ。ハロルドに連れて行かれる貴方を見て、自分の愚かさを感じた。」
ウィリアムの真剣な眼差しを、ルーナは真っ直ぐに見つめ返した。
「何をおっしゃりたいのです?」
「礼を。伝えたかった。」
「え?」
ウィリアムは、ルーナの前に跪き、そして言った。
「本当にすまなかった。そして、これまで私の横に立ってくれてありがとう。貴方の努力に報いる事のできなかった愚かな私を許してくれとは言えない。だが、貴方を失い、貴方の事を改めて考えた時、自分の愚かさに気づけた。」
ウィリアムは立ち上がると、微笑みを浮かべた。
「ハロルドと、幸せになってくれ。あれは我が弟ながら良い男だ。」
「ウィリアム殿下。」
「ルーナ孃。貴方の幸せを願うよ。ありがとう。」
「失礼とは思いますが、一言、よろしいですか?」
場の雰囲気を壊すような、鋭い声に、ウィリアムは思わず背筋を伸ばして、またソファに座った。
「、、、はい。」
ルーナは扇子をパッと開くと、ころころと笑いながら言った。
「殿下、そんなに甘くてどうするのです。」
「え?」
「いいですか?もし私がハロルド殿下と婚約すれば、もしかすると、殿下の即位にも大きく影響してくるかも知れないのですよ?」
「あ、いや、それは分かっている。」
「私に対して愛情が無かったのは、まぁ縁がなかったのでしょうがないと割り切り、殿下も早々に有力な後ろ盾のある婚約者を見つけなければなりませんのよ?」
「あ、、、あぁ。うん。」
「私は隣国の姫の血が流れているだけとは言え、後ろ盾が強い。そんな私との婚約がなくなった今、殿下は踏ん張り時ですわ。下手をすればハロルド殿下を時期国王になんて言い出す輩がいるやもしれません。」
「うぅ、、、あぁ。」
「ならばこんな所へと来るのではなく婚約者様を探してくださいませ!」
「うん。あぁ。ははっ!」
ウィリアムに笑われ、ルーナは目を丸くする。
「そうだったな!そう!私は貴方のそんな所が好きになれなかったのだった!」
「はぁ?」
「けれど、今はそれが清々しい!」
ルーナは眉間にシワを寄せた。
「ルーナ孃。これからは私の友になってはくれないか?」
その言葉に、ルーナは目を丸くした。
「私は愚かなのでな、側に、諌めてくれたり文句を言ってくれるものがいないと駄目なようだ。」
「なんですかそれは。」
「いや、昔から貴方とはよく言い合いをした。あれをすると、色々気付かされはしたが、婚約者に言われるとなんだか腹立たしくてな。だが、友ならば言い合うことが楽しいと感じる。」
「酷いいいようですね?愚かな人。」
「そうだな。男の矜持が壁になってな!」
だが、そう言いながらもルーナも同じような感情を抱いていた。
討論したり、言い合ったりするのは昔から好きなのだ。
「まぁ、、、仕方ないですね。良いですよ。」
ルーナは笑った。
「貴方と言い合いをするのは好きですから。」
「あぁ。私も好きだ。」
そこへ、怒りの表情を顕にしたハロルドがやってきた瞬間、場が凍った。




