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アイデール王国 101


 フィリアは、中庭まで来ると足を止め、アレクシスに向き直ると睨みつけた。


 その姿に、アレクシスは戸惑い、表情を固くした。


「貴方、なんの意図がってこれを、わざわざ持ってきたの?」


「え、、、いや、、フィリア孃に似ていて、、それで。」


「こんな時に、ただそれだけで持って来たの?貴方、自分の国の危機をちゃんと考えなさいな。」


 不敬にも程がある。


 だが、事実でありアレクシスは何も言えない。


 フィリアは怒りに燃える瞳で言葉を続けた。


「それに、この絵本の意味や結末を知っていて、持ってきたなら、悪趣味だわ。」


「何故?悪い終わりではなかったと思うが。」


 アレクシスの言っている事は正しい。


 だが、この絵本はゲームを全てクリアした時に出るものである。つまり、フィリアとグリード(暗黒龍)がハッピーエンドのシナリオの絵本ではない。


 絵本のストーリーは、暗黒龍が復活し、闇に世界が包まれる。その時、四人の貴族と共に聖なる乙女が暗黒龍を聖龍へと戻し、世界を平和にする。聖龍は空を舞い、フィーリタ王国に光をもたらし空へと消えていく。聖なる乙女は、四人の貴族らと共に皆に感謝され、末永く幸せに暮らしました。


 というもの。



 そう。


 フィリアを残して、グリードが空の何処かへと行ってしまう。


 そんな終わり。


 フィリアにしてみれば、グリードに捨てられて終わるのだ。


 そんな絵本を見たいだなんて思うわけがない。


 しかも、フィリアがグリードにこの絵本を見せたくないのは、レクスが描いたという所にもある。


「先程、レクスを知っているかと尋ねましたね?」


「あぁ。」


 フィリアは、アレクシスを睨みつけながら言った。


「レクスは呪われた王子。かつて、聖龍を災の魔力の元に封じ、暗黒龍へと変え、自らは、災の魔力に取り憑かれた呪われた王子の名だわ。」


「え?」


「しかもね、その呪いからレクスは未来を見る力があると言われているの。」


 フィリアは、王子版のゲームとこの世界が連動していると今まで考えたこともなかった。


 だからこそ、油断していた。


 フィリアは、大きくため息を付いた。


「貴方は意図してなくても、レクスが描いたという事実だけで、未来、暗黒龍が暴走するのではと勘ぐるものが出てくるわ。それに、暗黒龍、、、グリードがこれを見たら、、、私が、、捨てられたらどう責任を取るつもりよ!」


 その最後の言葉に、アレクシスはポカンと口を開けた。


 あぁ、この二人だけては場の収集が付きそうにないなと察した後ろから見守っていたルーナは、小さくため息を漏らすと姿を二人に見せた。


「フィリア様、アレクシス殿下を虐めるのはそのくらいで止めてくださいな。」


 二人は驚いてルーナを見ると、ルーナは言った。


「はいはい。そんな危ない絵本は燃やすか封印してしまいましょう。はい、アレクシス殿下はこの忙しい時に自分の好奇心を優先し、乙女の心を傷つけたのだから謝って。はい、謝る。」


 ルーナに押されるように、アレクシスは頭を下げた。


「す、、、すまなかった。」


「フィリア様、本当にごめんなさいね。この人昔からこういう所があるの。はい、次、その絵本貸してくださいな。」


 フィリアの手からルーナは絵本を取ると、魔法を掛けた。


 鎖が何十にも絵本に巻かれていく。


「はい。これで、私以外には開けられませんわ。フィリア様、いかが?」


 淡々と仕事するようにそう言ったルーナに、フィリアは呆気にとられたまま頷いた。


「ええ。あの。はい。」


「はい。それではアレクシス殿下はお戻りになって。はい。行く!」


「あ、、?あぁ。はい!」


 アレクシスが去るのを見送ると、ルーナは、フィリアの近くに歩み寄ると、フィリアの手を取りにこりと笑った。


「大丈夫?」


「え、、、えぇ。」


 ルーナ。


 さすが悪役令嬢。


 場を仕切るチートかもしれないと、フィリアは内心思った。





読んで下さりありがとうございます!

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