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リサ~異世界㉔城内へ~

「そうです。我々のステータスが倍加したということは当然ご存知ですよね。そうすると、当然ですが、魔力量も倍になっています。」


どうしてそこで魔力量まで倍になるのかが理解できなかったが、とりあえず、私のスキルの恩恵で、現在、悪魔さんたちのステータスは以前の倍となっている。しかし、それが魔法をすり抜けることと一体何の関係があるのだろうか。


「魔力が倍になったということは、操ることのできる魔力も倍になったということになります。我々魔物は、元来魔力を操ることに長けている種族なのです。まぁ、魔力の操作が出来ない者もいますが、それは訓練を怠っているだけで、きっかけさえあれば、呼吸をするかの如く出来るようになるものなのです。」


メタきちさんとキラー君が、魔力を操作していた記憶が無いのだが、今はそういうものなのかと納得するしかないので、私は黙って頷いた。


「メタきちとキラーは冒険者との戦闘時に使っていましたよ。瞬発力や攻撃力を瞬間的に上昇させるには、魔力を操作しなければ不可能なので、見る者が見ればすぐに分かるんですよ。」


またも心を読まれたようだ。

この悪魔さんもかなり要注意人物だな。

しかし、確かに、メタきちさんを助けに入った時のキラー君の動きは凄かった。あれが魔力を操って得た力なのか。

私も出来るようになるかな。

そんなことを思いながら、悪魔さんの話を聞く。


「それでですね、魔力を操作して、あそこに張られた魔法と同じだけの魔力を身体中に張ってしまえば、魔法はそれを「同質」のものとみなしてしまうのです。今まであの魔法を突破出来なかったのは、我々の魔力量が低かったからです。」

「魔力っていうのは、見ただけで分かるものなんですか?」


実際に、魔法をすり抜けているのだからそんな間抜けな質問をしても意味はないのだが、とても便利そうな技なので、ぜひとも習得しておきたいと思ったのだ。


「誰にでも出来るわけではありませんが、マスターなら使えますよ。ほら。マスターのスキルに、私たちのスキルを使えるという特性があったでしょう。」


そういえばそんな特性もあったなと思いながらも、どうやって使っていいものか分からず首をかしげてしまった。


「いきなりは無理です。慣れるまではかなりの期間を要するでしょうから、今回の作戦には使えませんでした。」


さすが悪魔さんだ。その辺りも考慮済みとは恐れ入る。


「では、そろそろ行きましょう。私の合図で、時魔法の連続使用をお願いしますね。」


私はそのまま悪魔さんにお姫様抱っこをされて、魔法のある場所へと向かった。




「ここです。」


飛び立って数秒ほどしか経っていないが、悪魔さんが進むことを止めた。

どうやら、手を伸ばした先に魔法が張ってあるらしい。


「マスター。私の合図で、正面に向かって時魔法を連続して5回使用してください。では、お願いします。」


これまで、連続して魔法を使用した経験はないのだが、悪魔さんが言うには、イメージがしっかりしていれば案外なんとかなるということなので、私はそれを信じてみることにした。


「マスター。抜けましたよ。」


どこをどう抜けたのかは全く分からなかった。

悪魔さんも、数メートルほど前に進んだだけだ。

これだけ何もないと、本当に魔法など張っていたのかさえも怪しく思えてくる。


「お見事でした。かなり余裕を持って抜けられました。」


悪魔さんからお褒めの言葉を頂戴したのだが、素直に喜べない自分がいた。


「もっとはっきり見えればいいのに……。」


あまりのあっけなさで、達成感を感じられずにいた私は、思わずそんなことを呟いてしまった。


「フフフ……。あんなものは前座も良いところです。マスターの見せ場はこれからですよ。」


おかげで、悪魔さんに思考がダダ漏れだ。

その後、メタきちさんとキラー君と合流して、私たちは誰に見つかることもなく、城壁を登っていった。

城壁の途中、死角になっている場所を発見したので休憩をとることになった。

すると、いまだに私を抱えている悪魔さんが満足そうに話し始めた。


「順調ですね。ハーピィーの攻撃がよほど効いたのでしょう。城の警備がかなり薄いですね。」


確かに、ここまではかなり順調だ。

時折、城の左右にある鉄塔の見張り台や、城のバルコニーのようなところから人が顔を出すくらいで、定点で見張っている人間などはどうやらいないようだった。

それが、人が出払っているからなのか、もともとそのような体制なのかは分からないが、手薄であることには違いない。


「けどよ。王様の護衛なんてのは残ってるわけだろ?そいつらはどうすんだよ?」


メタきちさんが悪魔さんに質問する。城内の警備は手薄になっているだろうが、メタきちさんの言う通り、王様の護衛までいなくなるわけではないだろう。

それに、この国で1番偉い人物の護衛なのだから、かなりの実力者なのは間違いないはずだ。

そんな人を相手にして、果たして作戦が上手くいくのかどうか不安になってきた。


『悪魔さんは余裕そうだけど、魔物対策の魔法か何かがあったらどうするつもりなんだろ……。』


私は、思いつく限りの『最悪』を想像してみるのだが、ゲームやらアニメやらの知識が乏しいせいもあり、ほとんど何も浮かんでこなかった。唯一浮かんだ魔物対策の魔法という言葉も、具体的にどんな魔法なのかさえ思い浮かばない始末だ。

きっと、兄ならば私の想像を遥かに超えた事態までも想像できるのだろうが、今、ここにいない兄のことを考えていても仕方がない。


『最悪、何もせずに逃げることも考えておかなくちゃ……』


森を守ることも重要だが、命あっての物種だ。

失敗して、警戒されてしまっても、生きてさえいればまた戦えるのだ。


「強い奴いる……。」


決意を新たに、気合を入れなおした私の耳に、キラー君の声が届いてきた。

私は静かにキラー君を見ると、犬歯を出して警戒の色を強めていた。


「キラー君?」

「ん?」


私が声をかけると、キラー君はいつものキラー君に戻っていた。

見間違いかもしれないと思ったが、私はこの時、得体のしれない不安に襲われた。


「あの……」

「何ですかマスター。」


私は、キラー君の呟きも含めて、今感じている不安をみんなに聞いてもらった。


「なるほど。しかし、私の魔力感知ではそれほど強い人間の存在は確認できません。が、油断は禁物ということですね。分かりました。奇襲や罠なんかには特に警戒しましょう。」


そう言って、悪魔さんはぶつぶつと独り言をつぶやき始めた。

きっと、新しい場面の脳内シミュレーションが始まったのだろう。


『そんな程度で大丈夫かな……』


私は、なんとなく上手く纏められてしまったと思いながらも、うまく説明できない自分のふがいなさを嘆いていた。


「嬢ちゃん。何をそんな不安がってるかは分からねぇが、いざとなったら逃げればいいだけの話だ。安心しな。無茶はしねぇからよ。」


メタきちさんが声をかけてくれた。

メタきちさんにはなんとなく伝わっているようだが、やはり「なんとなく」でしかない。

私は消すことのできない不安を抱えたまま、城内へと侵入することになった。


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