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トキヤ~異世界④確認~

念じるだけとは便利なものだが、視界に画面が直接出てくるため、慣れるまでは違和感があるだろう。

まぁ、慣れればいいだけの話なので、これ以上を求めるのは少々贅沢というものなのだが、探究する心だけは忘れないようにしよう。

そこまで思った時、俺は他のアイコンに意識を向けてみた。


「そういえば、他のアイコンはどうなってんだ?」


疑問に思った俺は視界端で小さくなっているアイコンを拡大してみる。

ステータスアイコンはもう知っているので、他のアイコンに注目する。


丸ネジのようなアイコン。剣や杖のアイコンまである。


空中タップが通じないことは分かっているので、俺は再び念じてみるのだが、もちろん適当に念じるわけではない。

隠れオタクを舐めないでいただきたい。今こそ、培われた知識を発揮する時だ。


まずは魔法一覧と念じてみると、視界に魔法一覧が表示された。

どうやらこの念じ方で正解なようだ。


「なになに……聖なる雷?これは勇者の固有魔法だな。属性は雷属性だろうけど、どうやって使うんだ?また念じればいいのか?それに、熟練度まであるのか。熟練度MAXになったら、きっと消費MP減少とか威力増加とかだろうな。とりあえず、魔法の検証を……」


そう思い、適当な距離の木に視線を向け、魔法名を念じてみた。



『聖なる雷』



雷雲でも立ち込めるのかと期待して待ってみたが、どうやら何か起こりそうな雰囲気ではない。

どうやら、この方法は間違っていたようだ。


『念じるだけではダメなのか。それとも、無詠唱スキルなんてものを手に入れていないとダメなのか……』


考えても仕方ないので、次は魔法名を言葉にしてみることにした。

もしかすると、魔法名はきっちりと『唱えなければならない』のかもしれないからだ。



「聖なる雷」



唱えた瞬間、僅かだが体の中から何かが抜けていくような感じを覚えた。おそらく、これがMPを消費するという感覚なのだろう。

その直後、狙いを定めていた木の上に小さい暗雲が出来たと思った瞬間、そこそこの音量を伴って雷が落ちた。

狙いをつけていた木の大きさが小さいものだったので、威力がどれほどかと言われると説明しづらいものはあるが、小さくても雷だ。

木がブスブスと焦げてしまっていた。


『威力がどうこうというよりも、人に向けて使わないようにしよう……』


異世界で初魔法を放った感想がこれというのも、どこか違う気もするが、これくらいの倫理観は持ち合わせておきたいと思っている。

チートを使ってやりたい放題したいわけではないのだ。

しかし、焼け焦げた木を見る限り、レベルが低い魔物ならば一撃で倒せそうだ。

仮に仕留めそこなったとしても、麻痺の追加効果が期待できるかもしれない。電撃で麻痺というのはもはやセットみたいなものだしな。

それに、魔力を込めれば威力が上がるということなので、魔力の込め方さえ分かれば、ある程度の魔物ならば、この魔法でどうにか撃退することが出来るだろう。ただ、魔力の込め方が分からないのはつらいところだが、それはこの先なんとかなるだろう。


「しかし……MPを使用する感覚ってのはあれだな……。どれくらいのMPを消費したかが分からないのが残念だけど、この程度の脱力感なら、けっこうな数を撃っても大丈夫そうだ。」


実際、呪文を唱えた時の脱力感はそれほどたいしたものではなかった。

体の中から何かが抜けていったという感覚は気持ちが悪いものであったが、そのうち慣れるだろう。


それよりも気になったのが、詠唱から事象発生までのタイムラグだ。


詠唱後、小さな雲が出来て雷が落ちる。

それが完了するまで、おそらく5秒もかからないのだが、すばしっこい相手なら、効果範囲から抜け出ることも可能だろう。


雷が落ちる前に魔物が避けてしまったらどうなるのだろか。


効果範囲を広げられるのかということも分からないが、今の状態を見る限り、この魔法は一本の雷が落ちるだけだ。効果範囲という意味ではそれほど広くはないだろう。

それに、追尾型の魔法ということもないだろう。そうなると、やはりこのタイムラグはネックだ。どうすればタイムラグをなくすことができるのかなど、検証しなければならないことが増えていく。


『そろそろ覚えきれなくなってきた……』


覚えることは増えてきたが、ここまでの検証は順調だ。


これまでのアイコンは、その形から意味を想像しやすく、念じることも簡単だ。

しかし、この『剣』のマークはどう念じればいいのだろうか。

いわゆる武器なのはなんとなくわかるのだが、装備というわけではないだろう。

そうなると、やはりスキルの類なはずだ。しかし、単純に『スキル』と念じるべきなのか、『戦闘系スキル』と念じるべきなのか。はたまた、『武器スキル』でいいのだろうか。

この辺りは曖昧だが、とりあえず、全て挑戦してみることにした。


まず、スキルが見たいと念じる。


「お……。」


『勇者補正』などのスキル一覧が表示された。

ステータス画面から飛ぶ必要がなくなった。どうやら、念じることでショートカットも出来るようだ。

思わぬ収穫に頬が緩む。



次に戦闘系スキルと念じてみた。


「ん?」


『聖なる雷』と書かれた画面が現れた。


魔法一覧に飛ばされたのか。それとも、他にスキルを覚えていないから、これだけが表示されているのか分からなかったが、とりあえず戦闘で使えるスキルのページが開かれた。

しかし、勇者スキルの武器適性で、武器固有スキルを使えるようになっているはずなのだが、ここには表示されていない。これは武器を装備していないせいなのかもしれないが、無手のスキルだってあるはずだ。それとも、武器の分類に無手は含まれないのだろうか。

まぁ、よく分からないからとりあえず放置だ。


最後に、武器スキルと念じてみた。


「んん?」


今度は装備一覧が出てきた。


本当に良く分からない。


あくまで想像だが、武器になにかしらのスキルが付与されていた場合ここで確認することができるのではないかと勝手に思っておくことにした。


「結局、戦闘系のスキルについてはあんまりよく分からなかったな。」


そうぼやきながら、俺は丸ネジのアイコンの解読に挑んだ。と、大げさに言ったが、俺はこのアイコンの意味に心当たりがあった。


設定を呼び出すアイコンだ。


設定なんてものを呼び出せる世界など、ゲーム以外で存在するのかと疑問に思ったが、メニューウインドやスライムが存在する時点で、この世界を受け入れなければならない。

否定してばかりでは前に進めないのだ。

そう考えて、俺は設定と念じる。


「おぉ!」


出た。設定だ。


 

・表示



大げさにリアクションしてみたが、やはり1つだけだとそこまで気分が盛り上がらなかった。

 

「表示だけか。あとは……ロックされてる。」


設定画面をよく見てみると、鍵のついた項目の背景に、何かしらの言葉が書かれていた。これに関して言えば、このロックされている部分は、勇者スキルと同じくレベル上昇やイベントなどで開放されるのだろう。

そういうことであれば、今はどうやってもここの鍵は外せない。

そうして、俺はそこの解析を諦めて、表示についての設定を行いだした。

表示設定を開いてみると、かなり細かな設定が可能だった。


まず、『視界に何を表示させるか』を選択することができるようだ。

俺はテキストを見ながらONに切り換えていく。最終的にONにしたのは次の通りだ。



 ・自身のHP・MP(数値)

 ・相手のHPバー

 ・敵の名称(魔物図鑑登録済み種族)

 ・人物名称(自己紹介済で個体認識可の場合のみ)

 ・所持金

 


もっと細かな表示が出来るかと思っていたのだが、他の設定と同じくロック状態であった。

敵のレベルや体力数値なども表示可能だったのだが、これもしっかりとロックされていた。

こちらに関しても、何かしらの開放条件があるようだ。


「おー。」


自分のHPとMPが見えることがこれほど便利だとは思わなかった。

文字調整も何度か練習すればバッチリだった。HPに少し意識を向けると、画面の邪魔にならない程度に大きくなったのだ。


満足げに俺は次の検証へと移った。


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