↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/256

トキヤ~異世界③説明書の無い冒険~

『先制攻撃だ』


得体の知れない相手に対して、様子を見ながらまんべんなく相手にすることは危険なように感じられた俺は、1匹ずつ確実に始末していく方法をとった。

このやり方では、残りの2匹から多少攻撃をもらってしまうことになるだろうが、それは仕方ないことだ。少しずつ全部を相手にしていたら、余計にダメージをもらってしまうだろう。 

そこまで考えて、俺は我流拳法の構えをとり、踏み込む足に力を入れた。


「え?」


踏み込んだ次の瞬間、俺は驚いて声を出してしまった。

何をそんなに驚いたかというと、3メートル程度あったスライムとの距離が一瞬で詰まったのだ。

素早さが高いせいなのか、勇者補正のおかげなのかは分からないが、とりあえず目の前に迫ったスライムに対して適当に拳を突き出した。


「あ、スライムって打撃はあんまり……」


拳を繰り出してから気が付いたその言葉は、もはや無用のものであった。

俺に殴られたスライムが10メートルほど後方へと吹き飛んで行ったのだ。

その場に残された2匹のスライムと共に口をあんぐり開けて呆ける俺。


「いやいや。これって、力のステータスだけじゃこんな感じにはならないよね……」


あまりの威力に思わず心の声が漏れ出てしまった。

何かしらの力が働いていることは間違いないが、レベル1でこれだけの威力が出てしまったら、間違いなくバランスブレイカーに認定されるだろう。

運営からナーフされること間違いない。

だが、今はそんなことを言っている場合ではない。むしろ、この瞬間にナーフされたらとんでもないことになってしまうので、さっさと残りを片付けることにする。


そう思った俺は残りのスライムも同じように片付けていった。


『パラララッタッタッター』


残り2匹のスライムを片付けた後、突如として頭の中に音楽が響いた。

有名RPGのレベルアップ音をまるまるパクった音だ。

音楽に心当たりがあった俺は、半ば確信をもってステータス画面を開くと、ステータスに変化が見られた。



 ・名前   トキヤ

 ・性別   男

 ・年齢   15

 ・種族   ヒューマン

 ・職業   勇者の卵

 ・称号   なし

 ・レベル  2

 ・力    30  → 35

 ・素早さ  40  → 50

 ・体力   60  → 62

 ・賢さ   100 → 105

 ・運のよさ 5   

 ・最大HP 120 → 124

 ・最大MP 150 → 157

 ・攻撃力  60  → 70

 ・守備力  5   → 5

 ・装備品  布の服 布のズボン 靴

 ・所持金  0



やはりレベルが上がっていた。

レベルが上がったことにより、当然ステータスも上がっていたが、爆上げというほどでもなさそうだ。

しかし、これでは、俺のステータスがスキルの恩恵をどの程度受けているかどうかは分からない。

一定レベルまではステータスがサクサク上がるゲームもあるくらいなので、今のステータスの伸びだけで判断するのは難しいだろう。

それと、3匹でレベル1つということは、あのスライムは雑魚スライムの部類だと思われた。

もう少し強い敵というのであれば、レベルが2つくらい上がっても不思議ではないはずだ。


そんなことを考えながら、俺は最初に吹き飛ばしたスライムのもとへ向かった。


「うげぇ……」


倒したスライムを見て、俺は心底嫌そうな声を出した。

ここがゲーム世界であるならば、このスライムはポリゴン的な消滅をしているはずなのだが、目の前の元スライムだった生き物は、そのような死に方をしていなかった。

ただ潰れているだけだ。

ドロドロとした粘液が広がって、不快感を覚えたが、分からないことだらけでは何も始まらないので、とりあえず観察を始めた。


「この粘液は……気持ち悪すぎて触る気になれないな。スライムって、核を潰せば倒せるってのが有名なんだけど、打撃だけで倒せたってことは、ダメージ値を超えたか、核ごと潰したか……。まぁ、核が弱点なのかも分からないから、とりあえずオーバーキルってことにしておくか。」


スライムの死骸を見る限り、核がどれなのかも分からなかったので俺はそう結論付けた。


「さて、素材やらドロップやらはどうしたものか……。倒せば自動で入手できるのか……」


俺は視界端に目をやる。

アイテムが入るアイコンが必ずあると踏んで、それを見つけるためだ。

そして、俺は視界端に映るアイコンを拡大し、袋のマークのアイコンを発見。確信をもって、アイテム欄を見たいと念じるとアイテム欄がきっちりと表示された。

なぜ袋のアイコンがアイテムだと分かったかって?

袋といえばアイテムだ。

間違うはずがない。


「さて……ドロップは……」


自動でアイテムが入っていてほしいと願いながら、俺はアイテム欄を確認したが、残念ながらそこには何も入っていなかった。

どうやら自動ではないらしい。これはかなり残念だ。

何が残念なのかというと、敵を倒した後、いちいち素材やらアイテムを剥ぎ取る必要性が出てきてしまったのだ。

毛や爪程度であれば、我慢しながらでも剥ぎ取りは出来そうだが、腕やら内臓やらなんて言われると

、平和な現代日本で生きてきた俺にはさすがに無理だ。

アウトドアに精通しているとかいないとかの問題ではない。

現に、今も目の前のドロドロを触る気にはなれず、残念だが今回はこのまま放置だ。


もったいないが、こればかりはどうしようもない。


「それならなんでアイテム欄なんかあるんだ……。剥ぎ取りが基本で、自分で持ち運びしなきゃならないなら、そもそもアイテム欄必要ないよな。あれか?所持しているアイテムを表示するだけの機能なのか?いやいや。それだとあまりにも機能の無駄使いだ。ん、待てよ……」


そこまで考えていると、俺の頭の上で電球が光った。


「もしかして……」


俺は辺りを見回して、適当な大きさの石を手に取った。


『収納』


そう念じると、手の上にあった石がどこかに消えてしまった。

俺は急いでアイテム欄を開いた。するとそこにはさきほど消えた『石』の名前が記入されていた。


「よし!」


ひとまず実験は成功だ。

このやり方が通じるなら、触れるだけで素材を収集できるはずだ。

そして、俺は再びスライムの死骸と向き合った。


「うへぇ……」


触る必要があるのかどうかは分からないが、とりあえず最初なので触ってみる。べたべたした感触が気持ち悪いが、ここは我慢だ。

収納と念じると、スライムの死骸はきれいさっぱり消えてなくなり、アイテム欄を確認すると、「スライムの粘液」が追加されていた。


これで、アイテム収納については確認できた。


出す時はどうすればいいのだろうかと思ったが、これは収納と逆のことをすればよいだけだった。

アイテム欄を開いて、『石』と念じれば、目の前に石が表れた。

とりあえず、これくらい理解できていれば、あとはなんとかなるだろう。


所持金が増えていないことも確認できたが、魔物がお金を落とさないのは当然だ。あれはゲーム世界の設定であって、魔物がお金など持っているはずがない。

きっと、素材の換金や、討伐証明のようなものがあるのだろう。


ここまで検証して、俺は改めて戦闘を振り返ってみた。

先の戦闘で感じたことだが、身体能力が異常だ。

スライムの強さが分からないのではっきりとは言えないが、レベル1でスライムを吹き飛ばすというのはやはりおかしいと思う。

どのゲームでも、レベルが1であれば、スライムを倒すにも数発はかかる。

しかしまぁ、この世界の前衛職なら、それくらいのことは当たり前だというのであれば受け入れるしかないのだが……。

とりあえず、戦闘に関してもまだまだ検証が必要だ。

もう少しこの周辺で魔物を狩り続ければ、さらなるレベルアップも期待できる。しかし、敵の情報やコマンドのない戦闘がこれほどやりにくいとは思わなかった。

せめて自分のHP・MPゲージを見ることができれば、心理的に余裕をもって戦闘に臨めるのだが……。


そんなことを考えながら、俺はステータスを閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。