第九話 始まる日常(非日常)
あらすじが変わりました。
普段の家族に加え、彼方、緋依、マユズミ、クロノスも交えてディナーと洒落込んでいた時、俺はクロノス戦から今に至るまでの経緯を聞く事となった。これは、何故クロノスが居るのかという俺の疑問から始まったのだ。
まず、クロノスと戦い俺が意味不明な行動をした時、クロノスは先程の説明通り腕を千切ってまで逃げたが、その先でも追撃が待っていたため仕方無くあの世界を崩壊させたらしい。
「そもそも、クロノスは何であんな事をしたんだ?」
誰もが感じるだろう疑問を、率直にぶつける。勿論、目の前に座っているクロノスに、だ。対するクロノスは食事する手を止め、持っていたフォークを真っ直ぐ持ち、こちらに向けた。
「あれですよ! 遥か昔に私が殺され、それから超長い年月を掛けて復活したので、試しに人類への宣戦布告をしようと思いましてぇ!!」
何が「思いましてぇ!!」だ。思いっきり戦争しようとしてるじゃないか……俺は苦笑いを返す。まぁ、回りが驚いていないし、既に話された事なのだろう。いや、だとしてもその時に何かあった筈だ。
「は、話を戻して……全部聞かせてくれ」
俺がそう言うと、丁度隣に座っていた彼方が話し出してくれた。
まず、クロノスが作り出した世界……仮に『停止世界』と称したとして、その世界が崩れた時、停止世界と現実世界がぶつかってしまった事で、時間の歪みや空間への干渉にアクシデントが起こってしまった。そして、それが引き起こしてしまった事は、まさにタイムリープ。というよりは、クロノス曰く『時間軸の変革』というものらしい。つまり、本来とは異なる世界が作られてしまった、という事になる。
何故そんな事に気付けたのか聞いてみたら、彼方の異世界を打ち消す力で、分かったとの事。しかし、誰もそんな事には気付かず、唯一知る彼方ですら証明のしようが無かった。その為彼方は、この事件の戦犯的人物であるクロノスを探す事になる。彼方はこれの過酷さを淡々と話していく。
その内容とは、上手く力が掴めたとしてもまたタイムリープが起こり、振り出しに戻る。これの繰り返しで先へ進めず、彼方は永遠に終わらぬ日常を過ごしていたらしい。しかし、この世界の影響を受けていない者はもう一人居て、それが事件の張本人クロノスだ。
そこの話を彼方がしている最中、クロノスも補足を入れたりして話が繋がっていった。クロノス自身も彼方の能力を自分なりに考察して、会えれば何か分かると考えたのだとか。それで、無限にあるルートの中から、偶然同じものを選ぶ事が出来、それで彼方とクロノスが出会えたらしい。勿論、幾つも試した結果になったとも言っているが。
ここでクロノスがさらに補足をし、このタイムリープする世界では時間を止めても、終わりの時間が制御出来なかったと言う。体感で三十秒の時もあれば、一年間も時が止まったままの事もあったらしい。さらに、一回のタイムリープにおいて一度しか停止世界を作り出せない事も分かり、非常に困難であったとの事。ちなみに彼方が作り出す世界には影響は何も無く、その事をクロノスは羨んでいた。
そこで、次からは完全な待ち合わせをし、何度も話し合う事で一つの結論に至ったのだった。それが、再び同じ現象を起こらせる事。これを元に、クロノスの記憶を頼りに二人で研究した結果、あの停止世界が崩壊した瞬間、俺が創り出したらしいエネルギーが各地で暴発し、停止世界にも現実世界にもないような力の波を作り出していた事が分かった。
さすが張本人、と言いたかったが熱意ある話は止まる事を知らずに続く。
さらに研究し、その『もう一つの世界』とも呼べる力の波長は、彼方の能力に似ている事が判明。いや、寧ろその波をより精密にしたら彼方の波長になると言える事までも研究し、早速実験に移ったらしい。それが、クロノスの作り出した停止世界内で、彼方の力を際限なく放出し、時間制限では無くその力で崩壊させるものだ。正直荒技過ぎるだろ、と俺は思ったが、とても熱く語っていたので敢えて言わなかった。
実験の結果としては、まだ力が足りず完成しなかった。しかし、少しは影響が出たらしく、一つ目は、クロノスの停止世界の継続時間、終了のお知らせをされるまでの時間の大凡の目安が付くようになった事。二つ目は、タイムリープされる時間が不規則になったという事。今までは大体二週間だったのが、早くて三日、長くて一ヶ月と、変化するようになってしまったのだ。
「しかし、停止世界の縛りが少しでも解かれた二人に、壁など無かった! より強大な力を生むため、出来る時間内で世界中を飛び回り、さらにさらに、私自身も攻撃される事でより再現度を高める事に成功!! だがやり過ぎも良くない為、飽く迄再現という事も弁えて正確かつ、慎重に最終実験を進めたのだ!!」
「……命令だ、落ち着け……」
「イエス! マスター!!」
「ごっほん、柴崎、続きを頼む」
何時の間にか、階段を使ってまで派手に再現しようとするクロノスを止める。素直の様で、只の変態だから嫌になる。
彼方の説明により、簡潔に纏められる。それは、上手く同じ様な崩壊がもう一度起こり、見事実験は大成功したことで世界は元の軌道に戻った。そして実験後の世界は、実際に停止世界が崩落した直後に繋がった。
……と、いうことだ。ちなみに、現在はあの停止世界事件が起こった日の夕方らしい。
「あっ、そうだ柴崎。繰り返してた時間って、いつの話だ?」
「まぁ、今の世界戦に当てはめると……カレンダー的に事件の日を境に、一週間ずつって所だ」
まぁ、多少後半における実験の副作用はあっただろうが、そんな毎日を繰り返していたのか。いや、世界が変わったから、事件も変わったりしたのか?
「なぁ! その時の俺達って、何してたんだ?」
純粋な心で聞いてみたかった。
「委員長は普通に委員長してた。マユズミも只の……いや、何故か中二病じゃなかったな。神宮寺家もごく普通の家族みたいな感じで……」
「俺は、俺は!?」
俺が聞くと、何故か顔を曇らせる彼方とクロノス。
「そ、その……神宮寺、驚くかもしれないが……」
「え? そんなに? まぁ、中二病とか変わりになってるかもしれないけど……受け止めてやる!」
「お前は……存在してなかったんだ……」
え? 俺が、消えていた?
「そ、それって……?」
「——絶対神様は、私たち二人意外の全ての人から、完全に、忘れられていたんです」
「……嘘……だろ?」
まさかの『神宮寺 秀春の消失』か?
彼方はその事にすぐ気づき、その為にも絶対に帰ろうとしていたらしい。だから、元の世界に帰った時には直ぐに俺を探し、一緒に休んでまで看病をしてくれたとか。
「良い友達を持ったわねぇええぇぇえぇぇ!!」
レナが目から水を流し、それを拭きながら俺の背中を叩いて来るが、紫色の物質が丸見えだ。だが、本当に優しいものだと思えた。レナ曰く、俺が少し唸っただけで様子を見に来たり、腕を動かせば観察したりし続けていたと言い……いや、ここまで来たら最早過保護じゃないか? と言いたかったが、善意からのその発言は、少し嫌に思えたため控えた。
それはそうと、俺の症状は特殊だったらしく、気絶したように倒れたのに、途中からは目を覚まさない睡眠のようになっていた為、皆不安だったと口々に言う。まぁ、今までボッチを極めていた俺に、いきなりこのような幸せはもう無いと思っているのも、現状だ。
「ありがとう……皆……」
その後は少しだけパーティーを続けていたが、食べ物が終わると、緋依は門限だからと言って帰ってしまった。その後、今回一番頑張った彼方も、疲れたからという事で帰っていった。そして……。
「おい、マユズミ! 早く帰れ」
「な、何故我だけ命令口調なのだ!? 酷過ぎるぞ!」
「いや、案外お前のせいでもありそうだからな……」
「何だその言い掛かりは!?」
俺はマユズミをいじめながら帰らせる。この時間も、案外楽しいものかもしれない……何て言い出したら、その人は狂ってるから気をつけるべきだ。
「そうだマユズミ、春休みの旅行って誰と行ったんだ?」
「あ! そ、それは……父や祖父母とで……。でも、母はやはり仕事のようで……」
そうか。
「お母さんとお父さんは、今も仲が悪いのか?」
「い、いや! もう仲良くなれてる!! その……お陰さまで……」
「え? お陰さま——?」
「い、いいから!! 我はもうアジトに帰還する! さらばだ!」
なんだかんだ言って、皆上手く行ってるんだと実感した俺であった。さて、片付けを——。
「絶対神様ぁああぁあぁああ!!」
やばい忘れてた!! このクロノスが居たんだった……。なんだかんだで上手く行く訳ないだろ!!
「お、お前はどこにも行かないのか!?」
「はい! 常に絶対神様のすぐ傍で……」
「は、離れろ! あと、何なんだ!? その絶対神って? そもそもお前も何なんだ!?」
結構本格的な内容の質問をしたが、このままだと居座られそうなので聞いてみる。すると、クロノスは一瞬で動きを止め、向き合った。
「……話すと、長くなりますよ? それでも——」
「あ、やっぱ良いです……」
「な、何でですかぁ!?」
こいつの長い話は本当に長そうだからやめておこう。だが、一応聞いておくか……。
「それじゃあ命令だ。二十字以内で、簡潔に、答えろ!」
「うーん……簡潔に、ならば……『全ての始まり』……」
『全ての始まり』だけ、トーンを下げるクロノス。まさか、そんなに大事な?
「……そして……」
ごくりと息を飲み込む。
「私のお婿様ですぅうぅうぅぅぅう!!」
結局こいつはこいつだった。
仕方無いので『絶対神様』を廃止し、『秀春』と呼ばせる事にする。さらに、条約も決め、今日は取り敢えずプライバシーの侵害、及び邪魔をしない事とされた。
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夜が明け、登校をしている俺は、今までに無い程大変な思いで道を急いでいる。
「何でお前が付いて来てるんだよ!?」
「いやぁ、秀春様にお仕えすることこそ! 私目の一番の使命なのですから!!」
今日の朝、いきなりドアをこじ開けて入って来たクロノスのせいで、全然満足のいかない目覚めをしてしまい、さらにそのクロノスは俺が家から出ても尚付いて来ている。
さっきのように帰宅を促しても、『使命』とか、『マスター』とか言って誤魔化し、何度も引っ付いては俺が引き剥がす事の繰り返しだ。
「いいか!? 別にな、付いて来る事は良いんだよ? だがな! 学校までは絶対に入らないよな?」
「……………………はい」
何なんだ今の間は!? 今、仕付けておかないと絶対に『俺が』恥をかくこととなるだろう。とにかく、今はこの変態を留置出来る場所を探さないといけない。一番簡単で、安心出来る場所と言えば……。
「ここだ!」
「——え? ここって何処のこと?」
俺はクロノスの頭を鷲掴みにして、路地裏の青いゴミ箱に突っ込む。そして、恐らく野良猫の侵入を防ぐ為にあるのだろう石を、その上に乗っける。少し重かったが、これで何とかなった筈だ。ゴミ箱の中ではドサドサと何かが蠢く音が聞こえるが……気のせいだな。
「よし、これで——」
「秀春様ぁ! 酷過ぎますって!!」
元の路地に戻ろうとすると、そこには先程ゴミ箱に監禁した筈のクロノスが立っていた。
「はぁ!? ふざけるなよ!! 何でここにいるんだよ!?」
「まぁ、仮にも『時空神』ですからぁ……」
確かに、その事を忘れていた。てっきり只の変態だと、思い込んでいたようだ。
「そうだな……お前は神だったな……」
「はい! ですから……って何でそんなに口角が吊り上がっているんですか!?」
俺の表情の癖が出ている。
「そ、そうだな……呆れたからかな?」
「いや! す、すみませんでした!! 調子乗りました! 秀春様ぁ、どうかお許しを!!」
半泣きで縋って来るクロノスに対し「ヘッ!」と嘲笑い、その場を後にする。
……したかったが。
「お前、本当にどうしたいんだ?」
「学校にも付いていきますよ?」
案外純粋な目で言うクロノス。
「じょ、冗談だよな?」
「いや? だって透明になる事が可能ですから」
「は?」
すると、そこにいた筈のクロノスが一瞬で消え、俺だけが路地裏に居る様な構図となった。俺は辺りを見回してみるが、誰も居ない……。本当に透明なのか?
「え、言ってませんでしたっけ?」
その場で、クロノスの気が抜けた声が、まるで近くで喋った様に聞こえてくる。
やっぱりこいつは神らしい。
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何だかとても久しぶりな気がする高校だ。前の席では、いつも通り彼方が眠そうに座っていて、緋依も自然とこちらに寄って来る。そして……。
「来たか、創造者……闇は既に動き出している。闇は光を求めるのだ」
そんな痛い発言をしながらも、こいつは俺の目の前に現れる。それにしても、マユズミは転校してからまだ三日目という訳だ。俺は昨日休んでいたから分からないが、上手くやっているのだろうか?
「邪魔だぞ? あと、うるさい……」
「ッチ! 仕方無いか……その願い、甘んじて受け入れようではないか!」
お前は国語の勉強もしろ、と言いたくなる様な、意味被りのあるセリフだが、一応素直だからよろしいっ!
「おい神宮寺、クロノスは?」
俺が変にツッコミを入れていると、彼方がすぐに話し掛けて来た。勿論、本当に近くに居る保証はない、だが透明になっていると伝える。彼方の事だから見えている筈が、彼方にも見えないという事から、俺的クロノスの神度が少し上がった。
ちなみに神度とは神としての信憑性の事だ。
「本当は光の屈折なんですよ?」
その瞬間、いきなりクロノスの声が囁く様に聞こえた。そのクロノス曰く、空間を少し曲げる事で大きく光を屈折させ、それで透明にみえるようになっているのだとか。ということは、彼方にはエネルギーだけが見えている状態なのだろう。
「神宮寺君? 今日は何も無かったわよね?」
俺と彼方でクロノスの話をしていると、緋依が割って入る。そして、俺の肩をグッと力強く持ち、とてつもないプレッシャーと共に質問を投げかけて来る。
「そ、それは……何の事でしょうか?」
「クロノスと何かあったりした!?」
「あぁ〜、それは……その……」
無かった、と言ったら嘘になるかもしれない。確かに早朝、クロノスが押し掛けて来たから咲希に頼んで撃退してもらった事はあったけど、それくらいだし……多分大丈夫。
「まぁ、問題無いって! 委員長もそんな気張んなくても、何とかなるさ……」
この答えで良い筈だ。完全に言い切ってしまうと、あの変態の場合は保証が出来なくなってしまうからな。それに、緋依は知識欲が豊富だが、身内には甘い所もあるので、「何とかなる」の言葉は間違っていないと、後付けで言えるだろう。
だから、これでいいのだ。
「は? 何を言って——」
まだツッコミ所があるらしい緋依をあしらいつつ、俺はいつも通り机に伏せる。これが日常になるんだとすると、よく考えて疲れるしか無いのかもしれない。まぁ、楽しそうではあるがな。
次回は一旦、休憩を挟ませて頂きます。




