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雪女の娘の20億分の1の1日  作者: サラブレッド三世
1/9

第一撃 三大奥義炸裂 青年道端に死す

どうか最後までお付き合い下さい。

アーメン

 ……あ、俺死んだわ…

 そう思った瞬間、トラックは俺の身体に激痛を与えた。神様は無情の様だ。走馬灯で人生を振り替える暇もなく意識は遠退いていった。


 そして俺は星になった!



 

 はずだったのだが、気が付くとさっきまで歩いていた道路の隅で座り込んでいた。

 身体はどこも痛くない。

 とは言え、さっきのことが夢とは思えない。それにこんな道端で寝る何てあり得ない。


 たどり着いた答えは

「……まさか幽霊になったとか…」


 こんなところで座ってるにも関わらず、道行く人々は俺に見向きもしない。まるで最初から見えてない様に…


「考えても仕方ないか」

 立ち上がり、実験をすることにした。

 幽霊なら人に触れられない(イメージ的に)。ならば、人と接触すれば一目瞭然である。


 そして都合よく、明らかに密輸でもやってそうな黒スーツの怪しい男が通りかかった。


 まあ多分死んでるし、当たんないからいいよな…

「天誅!!」

 右腕は男の首辺りに向かって伸びていく。


【ウエスタン・ラリアット】


「ぐわあっ!」

 き、決まった。初めてしたけどチョー気持ちいい。

 ……決まった?

 後ろを見ると男はアスファルトの上で苦しそうに唸っていた。


 《俺的に説明しよう

 幽霊なら人に触れない

 逆に触れれたら幽霊でないのである。》


 

 ……逃げよう…

 俺は世界記録を塗り替える勢いでその場を後にした。

 あんな密輸組織の男(多分)につかまったら、間違いなく日本海に沈められる。





 ―――同時刻 某ラーメン屋――

 

 小さいながらその店は賑わっていた。

 そして驚くべきは、その店で働いているのは高校生ぐらいの少女ひとりだった。少女は人間離れしたペースでラーメンを作っていた。そのペースは開店の11時から始まり、3時間たった今も衰えることはなかった。外ではラーメンを食べに来た客が長蛇の列を作っていた。

 無表情で作り続ける少女はふと顔をあげた。そしてうなずいた。


 止めたその手にはいつの間にか赤いメガホンが握られていた。

「…………閉店……」

 少女の声はとても静かである。ただ、メガホンの音量はMAXだった。


 店が揺れた




 ―――PM19――


 辺りはだいぶ暗くなってきた。

 黒スーツから逃げた俺は、思わず家とは反対方向へ行ってしまい迷子になった。高校を卒業し、就職のため自炊を始めてまだ1ヶ月ほどだ。この辺りには詳しくない。


「いつになったら帰れるんだよ。」

 横には墓場が広がっていた。どこをどう来たらこんなところに出たんだが…

「幽霊でも出そうだな。」

「それはあんたでしょ。」

「?」

 後ろから声がした。

 振り向くと巫女服を着て狐のお面を被った子と、長身でショートヘアの金髪の女がいた。金髪が話しかけてきたみたいだ。

「あんたを霊法第三条に乗っ取り、現世から追放するからね。」

「はい!?」

 聞き返してしまった。やっぱ俺死んでるの?というより霊法って何?幽霊にも決まりがあるのかよ。よも末だな。あ、死んでるからもう末か。


「で、俺が何したって言うわけ?」

「霊はいかなる場合も人間に危害を与えてはいけない。常識でしょ?」

 常識って言われてもな。死んだばっかりだし…

 まあ、思いっきり黒スーツに傷負わせたのは確かだけれども。

 金髪は巫女コスの子と何か話し始めた。そして二人で頷き合うと、おもむろに金髪が口を開いた。

「あんたには黙秘権がありますが拒否権はありません。」

 おいおい、酷い話しだな。


「だいたい、現世から追放ってどうなるわけ?」

 金髪は人指しを立て満面の笑みで一言。

「また死んでもらいます♪」

「え?」

「さ、コユキちゃん。殺ってあげて♪」

 巫女コスがうなずいた。

 コユキと言う名前らしい。伸長は150cmぐらい。細身で、腕にいたってはすぐに折れそうなくらい細い。

 いくらなんでもこの子には負けないだろ。ケンカはやったこともないけど、空手を習っていた時期もあった。第一、胸も発展途上の女の子に男が負けるはずない。


「勘弁してくれよ。胸もない幼子を殴るのは趣味じゃないんだ。」


 ―ゾクッ


 あれ?急に寒くなったような…

 見るとコユキは腰を落として構えていた。お面で見えないもののその目は確実に俺を睨んでいた。今にも向かって走ってきそうだ。

 不意に金髪が叫んだ。

「あ、宇宙人がいる!!」

「マジか!?………なにもいないじゃな…」


 あれ?巫女コスがいつの間にか目の前にいた。そして、俺に向かって飛び込んできたと思うと、その頭が俺の腹部に…


【スピアー】

 ――ドスッ


「ぐはっ!!」

 全身に激痛が走った。おかしくないか?死んだ時より、今の頭突きのが痛い。しかも、典型的な方法で注意をそらされてしまった。なかなか恥ずかしい。


「……余計な……こと…」

 巫女コスが金髪に文句を吐いている。

「だってコユキちゃんの三大奥義でしょ?外したら横にいるアタシまで恥ずかしいわ。」

「…………………………………………外さない…」

「この前見事に避けられて、自滅しそうになったのは誰だったかしら?」

  「………」

「コユキちゃん、分かってると思うけど、そっぽを向いても事実は変わらないのよ。」


 完璧に言い負かされてる巫女コス。笑ってやりたいけどその体力さえ残っていない。立ち上がることもできない。

 三大奥義とか言ってたけど、巫女コスの最強の技なのか?

 しかし、

「なんで頭突きごときが最強技なんだよ?」

「……スピアー…」

「すぴあー?なんかのモンスター?」

「……ぷr「みゃあ~」

 何か言いかけたのを遮ったのは黒猫だった。いつからいたんだか。……?何故か尻尾が三本ある。


「みゃ―」

「……了解……」

 猫と喋れるのか?流石は幽霊。何でも有りだ。

 すると金髪が近づいてきた。こいつに見下ろされると無性に腹が立つ。常に人をおちょくる様な顔をしている。

「あんた、命拾いしたね。それじゃ、バーイ。」

 二人と一匹は夜の闇に消えていった。




「俺、生きてる。」

 いや、死んでるけどね。

 まだ痛みで立ち上がることもできない。

 でも、どうやら助かったみたいだ。幽霊になってまで死にたくない。そうなったらどうなるのだろう?天国とやらにでも行くのだろうか?

 まあいいや。

「俺、生きてるし。幽霊として。」


 



作者的説明


ウエスタン・ラリアット

プロレス技。最初のラリアットで様々なバリエーションがある。腕をすれ違い様に相手の胸や首にぶつける技。



スピアー

プロレス技。スピアー・タックルと呼ばれる場合もある。ラグビーのタックルの様に相手の懐に入り頭からぶつかっていく体当たりである。強力ではあるが外すと自滅する場合がある。コユキの最強技の一つ。



更新遅いのですが、これからも

よろしくお願いします。

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