Prologue ~ 或る部活動のEpilogue ①~
桜が色づき始める3月…。
一面大きく開け放たれた窓に揺れるカーテン。
窓から入口の扉へ、心地よい風が通り抜けていく。
遡ること3年前…
運に恵まれ演劇部から移譲された、この…無駄に広い寄託部の部室。
つい2ヶ月前までは、学内・学外問わず寄託依頼品が犇めいていた。
しかし…今は、依頼品の処理を全て完了し、きれいに片付けられた整理棚の上には、4人分の賞状筒と卒業式の式次第が置かれている。
「なんだか…ウソみたい」
ゆう子が、ポツリと呟く。
すると、その言葉に和人 が素早く反応する。
「確かに、あれだけズルしてた誰かさんが無事卒業できるなんてね」
「ヒドイ、何てこと云うの! 最後の最後までホント意地悪」
“冗談、冗談”と笑って謝る和人に、むくれたゆう子がじゃれるように詰め寄った。
「だ・か・ら、そうじゃなくて…終わっちゃうんだよね、寄託部」
「まぁ…僕ら4人限定の時限部活だからね」
そう言いながら和人は、意味ありげに凪咲と颯一郎に目線を向ける。
と、タイミングを計ったが如く凪咲のスマホが鳴った。
「なーちゃん、誰から…?」
柔らかな表情で、颯一郎が訊ねる。
画面に表示された【Aurora Spencer Elliott】の文字をみんなに見せると、凪咲はニッコリと笑って通話をタップして、艶やかな栗色の髪を耳に掛け、スマホを耳に当てた。
「Hello.Aurora…」
『凪咲!? わたくしですわ…聞こえています?』
突然の日本語に目を丸くする凪咲…の表情を心配そうに見守る三人。
「叶羽? どうしたの、突然… ビックリするじゃない」
“ああ…義律女子学院の毬乃宮叶羽か”
…と、納得した三人は、やれやれと顔を見合わせる。
『まだ日本にいるんですの?凪咲。 早くUKにいらっしゃいな』
「義女院と違って今日が卒業式なんだから、無理言わないで」
『あら…そうでしたっけ?』
相変わらず、独善的というかマイペースな性格の彼女との関わりは…凪咲はもとより、颯一郎たちにとっても…結構、ハードなものだった。
「それよりも…どうしてオーロラの携帯なの?」
『それはあなた…わたくしからの着信だと、出ないでしょう?』
「そんな、失礼な事しないわよ!!」
珍しく声を荒げる凪咲に、今度はビクッとする三人。
叶羽との会話は、必ずと言っていい程、頭痛を伴う。
凪咲は、ん゛~と苦悶の表情で咄嗟の発言を反省しつつ…
「とにかく、ロンドン行の日程…後でメールするから、ね?」
会話が長々続きそうな雰囲気を、半ば強制的に終わらせる。
「あ、今の対応…失礼だったかしら…?」
待機画面に戻ったスマホを見つめながらポツリと呟く凪咲に、“全然問題なし”と言わんばかりに…力強く首を横に振る面々。
その時…
≪チャッチャッチャッチャッ≫
…部室の入り口付近から、聞き覚えのある足音が聞こえてきた。




