第1話 灰色髪の少女との出会い
これは、とある少年の復讐の物語である。
貧民街に一人の少年がいた。
親に捨てられ、名前すら与えられなかった少年。
透き通るような水色の髪と黄金色の瞳を持つその少年は、痩せ細った体で毎日を生き抜いていた。
チンピラたちはそんな少年を見つけるたびに殴り、蹴った。
それでも少年は泣かなかった。
泣いたところで誰も助けてくれないことを知っていたからだ。
そんな生活が二年続いた。
七歳になったある日。
僕は路地裏で一人の少女と出会った。
腰まで伸びた灰色の髪。
深く澄んだ瑠璃色の瞳。
その少女はまるで汚れた世界には似つかわしくないほど美しかった。
「私の名前はイレイナ。君の名前は?」
僕は答えなかった。
「もしかして、名前がないの?」
僕は小さくうなずく。
すると彼女は優しく笑った。
「じゃあ、私が付けてあげる。今日から君の名前は――イア」
それが僕とイレイナの出会いだった。
イレイナは学校でいじめを受けていた。
家では虐待を受けていた。
それでも彼女は笑っていた。
「誰かに話すと少し楽になるね」
そう言う彼女に、僕は言った。
「ならまたここに来なよ。愚痴でも雑談でも何でも聞くから」
その日から僕たちは毎日会った。
話して、笑って、時には泣いた。
お互いにとって唯一の居場所だった。
ある日、イレイナは小さな箱を持ってきた。
「イア、これあげる」
中に入っていたのは雫の形をした青いネックレスだった。
まるで彼女の瞳の色を閉じ込めたような美しい宝石。
「綺麗でしょ?」
そう言って笑う彼女の顔を、僕は一生忘れない。
「なんで僕に?」
そう聞くと、イレイナは当たり前のように答えた。
「友達だから」
その言葉は僕にとって何よりも温かかった。
夕日に照らされながら笑い合う。
その時、僕は初めて思った。
――この時間がずっと続けばいいのに。
そんな日々が三年続いた。
しかし、その願いは叶わなかった。
ある日、イレイナは約束の場所に来なかった。
翌日も。
その翌日も。
嫌な予感がした僕は必死に彼女を探した。
そして見つけた。
冷たくなったイレイナを。
僕は彼女を抱き上げ病院へ向かった。
「お願いだ……イレイナを助けて……!」
何度も頭を下げた。
だが医師は静かに首を振った。
「申し訳ない。もう手遅れだ」
その瞬間、僕の世界は崩れ落ちた。
僕は一晩中泣き続けた。
後になって知った。
イレイナは殺されたのだ。
犯人は一人の政治家。
自分の誘いを断られたという身勝手な理由で。
裁判は行われた。
だが結果は無罪。
証拠不十分。
たったそれだけだった。
なぜイレイナが死ななければならなかったのか。
なぜ犯人は生きているのか。
なぜ世界はこんなにも理不尽なのか。
そして僕は笑った。
自分でも分かった。
その笑顔は壊れていた。
まるで死神が獲物を見つけた時のように。
あの日。
僕は全てを失った。
そして――復讐者が生まれた。




