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現代知識で異世界村を救う  作者: バクリ
New Season

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95/95

第95話保管場所のジレンマ、あるいは極端すぎる解決策

「このプロジェクトに関わるのは簡単だと思ってたが、想像以上だったな」


「ああ……全くだ。場所も材料も足りないせいで、予想以上に時間がかかってる」


ウェインと話し合いに行っているジョーを追おうとしていた俺の耳に、ふと中年男二人のぼやきが飛び込んできた。幸いなことに、彼らは俺に背を向けて座っていたため、俺が通りかかったことには気づいていないようだった。


この照りつける太陽の下、本来ならもう服を一着作る試作に取り掛かっているはずだった。


だが、作業を行うための場所がまだ確保できていないせいで工程は完全にストップし、彼らの貴重な時間を無駄に奪ってしまっているのだ。


「ウェイン様もこのプロジェクトが進んでることはご存知のはずなのに、どうして空き部屋の一つも手配してくれないんだろうな?」


「さあな……俺にもよく分からんよ! たぶん、シャキールの件がまだ片付いてなくて、そっちに掛かりきりなんだろう」


(シャキールの件、だと?)


昨日ウェインは、あのクソ野郎ヴィンとの問題はすでに解決したと言っていなかったか? まさか、シャキールがシャングリーへの復讐を未だに諦めきれていないとでもいうのか?


(ああ……くそっ! 考えても仕方ない!)


あいつらの問題を深掘りしたところで頭が痛くなるだけだ。今は目の前のプロジェクトをどうにか進めることに集中しよう。ここまで進めてきた工程を、絶対に頓挫させるわけにはいかないのだから。


男たちから八メートルほど離れたところで、ようやくジョーが息を切らして走ってくるのが見えた。


「どうしたんだ、ジョーさん? 野犬にでも追いかけられたみたいな顔して」


「いや、実はだな……」ジョーはそこで言葉を区切り、荒い息を整えた。数秒後、呼吸が落ち着いたのを見計らって再び口を開く。「道具の保管場所について、ウェイン様に掛け合ってきたんだが」


「それで、場所はどこになったんだ?」


「それが、一番の問題なんだよ!」


「は? 何が?」


「もう、村には道具一式を置いておけるような空き部屋が一つもないんだ。サンドラがこの村に定住すると決める前は、あの小屋が最後の頼みの綱だったんだが……」


「ええと……つまり?」

話の意図が見えず、俺は首を傾げた。


「要するにだ。背に腹は代えられない状況なら、サンドラには別の場所へ移ってもらうしかないということだ」


「サンドラに別の場所へ移ってもらう? それじゃあ、ウェインがサンドラを村から追い出すってことか?」


「違う違う、そうじゃない! サンドラはそのまま村に住み続ける。ただし、その代わりとして……彼女を君たちの家に住まわせてやってほしいんだ」


俺は再び、ジョーの回りくどい言い回しに頭を抱えそうになった。だが、最後に発せられたその言葉の意味を理解した瞬間、俺の脳細胞は普段の数倍のスピードで回転し始めた。


「……『君たち』って、まさか」


「はぁ……」

唐突に、ジョーは深刻な面持ちで深いため息を吐いた。


「タカヒロくん。サンドラを、君の家に居候させてやってくれないか」


(……はぁ?)


サンドラが俺の家に同居する!? あのクソジジイ、頭でも狂ったのか? いくらなんでも、俺が別の女を自分のあばら家――いや、今やすっかり立派な家になったあの場所に住まわせるなんて正気の沙汰じゃない。クトリが何て言うか考えただけでも恐ろしい。間違いなくブチギレるに決まっている。


「俺は――」


くそっ! 俺が反論しようとした矢先、ジョーがそれを遮るように口を挟んできた。


「もしどうしても抵抗があるなら、タカヒロくんが昔みたいに私の家で寝泊まりしてもいいんだぞ?」


「俺がジョーさんの家に住んだら、クトリたちを見捨てるのと同じじゃないか! そんなことしたら、村の連中からどんな目で見られるか分かったもんじゃないぞ!」


「ああ、そうだったな! すまんすまん、すっかり忘れていたよ」


(……この問題については、変な噂を立てられないよう、後で俺なりに上手い言い訳を考えるしかないか)


とにかく、これで道具の保管場所という最大の課題はクリアできた。プロジェクトを再開し、試作に取り掛かるには十分すぎる朗報だ。


◇◇◇


予期せぬトラブルをいくつか乗り越え、三人はようやく目的のカフェへとたどり着いた。この街の出身であるサンドラは、ケイトとヴィオラが席でゆっくり休めるよう、気を利かせて自分から注文を取りに行く役を買って出た。


「注文はそれだけ?」


「はい、私はラテアートだけで十分です。ケイトはどうだか知りませんけど」


そう話を振られたケイトはといえば、まだ手元のメニュー表を食い入るように見つめていた。店に到着してからすでに三分が経過しているというのに、彼女はいまだに何を頼むか決めあぐねているのだ。


「……ケイト」


「ちょっと待ってよ! 今考え中なんだから邪魔しないで!」


「てめぇ……結局、注文する気があるんですか、ないんですか?」


「だから待てって言ってんでしょ、耳塞がってんの!?」


「あんたたち……! こんな所でまで揉め事を起こさないでくれる!?」

ついに堪忍袋の緒が切れたのか、サンドラが低い声で唸った。


その騒ぎを聞きつけ、カフェにいた他の客たちが「何事だ」とばかりに一斉に鋭い視線を向けてきた。


さすがに度が過ぎたと悟ったサンドラは、周囲の客に対して居心地の悪さを感じた。ケイトとヴィオラの中で唯一の『大人』として、このくだらない口論を終わらせるべく、彼女は自ら行動を起こした。


「み、みなさん……! うちの妹たちが騒がしくしてしまって、ほ、本当に申し訳ありませんっ!」


そんな周囲の客たちの中に、メインのテーブルから少し離れた部屋の隅から、サンドラから片時も目を離さずにじっと見つめている一人の男の姿があった。


男は帽子にマスク、さらにはサングラスまで身につけ、素性を隠すように全身をすっぽりと布で覆い隠している。


「……やっと見つけたぜ」


男はマスクの下でニヤリと口角を上げ、低く確信に満ちた声を漏らす。その鋭い眼光は、ペコペコと頭を下げて謝り続けるサンドラの姿を、まるで獲物でも見つけたかのように確実にロックオンしていた。

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