#1『孤高なる学院生活?』
うまく纏まんらないものです。
書いても面白くなさそうな話があるのですが、それは学院編の閑話で書こうと思います。
庭に咲いているアヤメに似た花が風を受けゆらゆらと揺れている。花の名前は分からないが私の母親であったアイリスが植えたものであると庭師の方から聞いたことがある。母は花が好きだったのだろうか?私は半年ほど住んだ屋敷を出て今日からアトラス学院へ入学することになる。屋敷の方へ向き直り「行ってきます、お父様、お母様」そう言い放ち、住み慣れた屋敷を後にした。
アトラス学院は昔から多くの優秀な騎士や魔法使いを輩出してきた学校であった。しかし、近年行われた学校改革によって今は騎士科、魔法科、商業科、官吏科、特進クラスの五つの学科に分かれている。普通科はない。
学院は屋敷から正反対の場所にあり、歩いてに十分くらいの所に建っている。入学試験の前に一度、試験の日に一度の合わせて二度この場所に来ている。周囲には白の制服、緑の制服の人が学院方面へ歩いている。この学院では制服の色である程度の身分が分かるようになっていた。白の制服は貴族や王族が身に着け、緑の制服は貴族以外の所謂平民と呼ばれる人たちが着ていた。私の制服は白色。建前上は伯爵家が後見人となっているからだそうだ。建前上は。本当は陛下が「やはりアイリスと同じく白が似合う」と、余計なことを言い、半ば強制的に着ることになったのだが。さらに厄介なことに普通制服には着いていないはずの飾緒がつている。銀色の飾緒だ。王族は金色の飾緒をしているので分かるのだが、何故私も……色は違えどこんな目立つものをしなくてはいけないのかと内心思っていた。
後から知ったのだが、この銀の飾緒は成績優秀者がつけるものであり、新入生でこんなものを付けている人は帝国史上三人目らしい。一人はジェニアス皇帝、二人目はエイジス、私の父だ。そして三人目が私……平凡に普通に暮らしたいと言ったはずなのにこの仕打ちだ。嫌でも目立ってしまう。
今は目立たないように不可視の魔法をかけているからいいのだが、ふとしたことで魔法が解けてしまったら大変なことになるだろう。
学院の入り口で棒立ちしているわけにもいかないので講堂に向かうことにした。考え事は講堂についてからでもいいだろう。
講堂に向かって歩いている最中、人込みを見かけた。何やら揉めているようだ。近くにいた女子生徒に声を掛け話を聞きく。その生徒の話によると歩いていた女子生徒に男子生徒がぶつかって転ばせてしまったようだ。運が悪いことにその男子生徒はメルトシュニア伯爵家の子息で、ぶつかって倒れた女子生徒に傲慢な態度で接したらしく、一緒にいた友人らしき女子生徒との間で口論になったようです。今にも手が出そうな女子生徒、取り巻きの後ろに隠れ偉そうにしているお坊ちゃん、どう見ても悪いのはお坊ちゃんの方なのだが、取り巻きが前にいる以上女子生徒は手が出せないようである。
そうこうしているうちに、何やら三人程生徒が走ってきました。腕には腕章のような物を付けています。先頭を走ってきた白服の男子生徒が「生徒会だ、お前たち何をしている!」と声を荒げていました。
生徒会が来ると、お坊ちゃんは「行くぞ」と取り巻きを連れてその場を後にしました。倒れた生徒ともう一人は生徒会に事情を聴かれています。
生徒会の人たちが来て一先ず場が収まったので、他の生徒たちに紛れ講堂へ向かって歩いて行きます。
さて、多少の問題はあったもの入学式が始まりました。入学式と言っても学院長の話を聞くくらいでした。学院長は現皇帝の弟さんで今は臣籍しアルトハインツ公爵として学院の運営などを行っているとヴァルフレア伯爵から聞いた。
学院長の話が終わった後クラス分けが行われます。クラス分けは貴族平民混合のようです。新入生は一度すべての学科の授業を受けることになり、二年生になったら専門の学科に分かれるといったものでした。一年間で本当にやりたいことを見つけろという事なのでしょう。
入学式でクラスが発表され自分の教室に向かいます。途中、何人かの貴族生徒が私の方を見てヒソヒソと会話をしているのが見受けられましたが、気にせずに歩きます。
教室に入ると先に来ていた生徒と目が合いました。しかし、その生徒は目をすぐに反らし他の生徒と会話を始めました。
後から来た平民、貴族両方の生徒も私と目が合うと逃げるようにして別の生徒の所に行きます。
「これはもしかしてハブられている……」
つい声に出してしまいましたが、この世界にハブると言う言葉はあるのでしょうか?
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――
―――
入学式から一週間が経ちました。私は未だにボッチです。このままでは死ぬ前と何も変わらない学院生活が……鬱です。
一週間も経つとクラスの中ではグループが作られ、学院全体では一種の派閥のようなものまで出来上がっていました。グループに関しては、まぁ置いておきましょう。この学院には三つの派閥があります。一つは第二皇子ヴェロッサの派閥、二つ目がデュアリス公爵家令嬢のフランの派閥、最後に大商人の子息オルガの派閥。正直な話派閥には興味がないので今までは放置してきたのだが……
「貴女がルーフェミア・ローツェですわね」
私はこの学院では名前を偽っている。まぁ呼んでくれるのは先生くらいなのだが、この学院に入学してから初めて他の生徒に名前を呼ばれた。呼ばれたのは嬉しいのだが、相手がよりによってフラン・デュアリス侯爵令嬢だ。取り巻きを四人ほど連れてのご登場だ。周囲の視線が私たちに向けられています。
「はい、そうですが。私に一体どのようなご用件でしょうか?フラン・デュアリス様」
「どのような用件?貴女は私の差出した招待状をご覧になってていないのですか?」
招待状?何でしょう?そのようなものを受け取った覚えは無いのですが……もしかして、三日ほど前に机の上に置かれていたポエムの事でしょうか?意味が分からなかったのでそのまま収納魔法のストレージで仕舞っていたのですが……
「あの、もしかしてコレのことですか?」
私はストレージからポエムと言う名の招待状を取り出した。私が無詠唱で魔法を発動した瞬間教室中がざわついた。しまった、ストレージ自体は大したことのない魔法なのだが無詠唱ともなれば上級魔法並の技術が必要となる。そんな事を入学したての生徒がやってしまえば……
「おい、見たか」
「無詠唱だったよね?」
「無詠唱って先輩達でも難しいはずなのに」
ヒソヒソ、ヒソヒソ、周囲でこちらを見ていた生徒や取り巻きの生徒たちは目を丸くしながらそんな会話をしていました。ただ一人を除いては……
「ふふ、素晴らしいは!ルーフェミア・ローツェ、私が目を付けただけの事はありますわ!」
「は、はぁ……」
別に目を付けられるようなこと何もしていないはず、いや今つけられてもおかしくない事したけど。
「貴女、私の派閥に入りませんこと?私自ら声を掛けているのですから光栄に思って頂いて結構ですわ」
高笑いをキメているフランですが、正直に言って興味は無いのでお断りしましょう。
「申し訳ないのですが、お断りさせて頂きます」
断ると、フランの顔がこわばった。断られるとは思っていなかったのであろう。取り巻きの生徒達も余程の衝撃だったのか唖然としている。
「な、なんと無礼な!フラン様がわざわざお声をお掛けしたというのに」
取り巻きの一人がそう口にすると他の取り巻き達も口を揃えて非難の言葉を浴びせてきました。そんな中
「おーほっほっほ!貴女、面白い方ですわね。この私が直々にお誘いしているというのにそれを断るだなんて!そうですわね、気が変わりましたらいつでも声を掛けてくださいませ」
そう言い残しフランは立ち去っていきました。それに続き取り巻き達も去っていきましたが、一人だけガンを飛ばしていった人がいました。
その後、私が三大派閥の一つを断ったと言った話が学院に流れ道行く人に好奇な目で見られる事になったのは言うまでもない。
午後の授業を終えた生徒たちは各々部活に精を出している。部活動は強制参加ではないので一部の生徒は帰宅部である。私は未だにどの部活にしようか悩んでいた。
ほぼ日課になりつつある構内の散策をしていると演習場方面へ走っていく生徒を見かけた。一人や二人ではない、多くの生徒が走っていった。通り過ぎていく生徒が決闘だだの試合だのと言っている。
この学院において、決闘などは日常茶飯事な事だ。元々が騎士などを輩出していた学校なだけに、実力を競い合うためにこのようなことをしている。尚、決闘を行う際は教員監視の下で行われる。
演習場に向かってみると二百人程の人が集まっていた。中央には四人の生徒と教師が一人立っていた。
四人の内三人はメルトシュニア伯爵家のお坊ちゃんとその取り巻き。残された一人は入学式の時にお坊ちゃんにぶつかられた女子生徒だった。
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――
―――
「セシルちゃん遅いな……もうすぐ始まっちゃうよ。」
私の名前はシャロン。今日は友人のセシルちゃんとメルトシュニア伯爵家の子息の方たちと決闘をすることになっていました。一週間前の事をセシルちゃんが根に持っているようです。私は気にしてないって言ったのですが、セシルちゃんは「あんな人を見下すような奴、あたしがぶっ飛ばしてあげる!」と意気込んでいました。
決闘の開始時刻までもう間もなくとなるのにセシルちゃんが現れません。少し不安ななっていると
「おやおや、君の友人は君を置いて逃げ出したようだね?」
「言い出しっぺが逃げ出すとは……これだから平民は」
取り巻きの人たちがそんな事を言って高笑いをしています。セシルちゃんが逃げ出すはずがありません。きっとやむを得ない状況で遅れているだけ。
「そろそろ時間だ、どうせ待っても奴は来やしない、早く始めようか?」
「待っても来ないって……どういうことですか!」
「君が知る必要はないな」
どどどどうしましょう!このままセシルちゃんが来てくれなかったら……わ、私防御魔法くらいしか使えないのに……しかも、男の人三人と戦うだなんて…絶対に無理です!
時間は刻一刻と過ぎていき……
「さて、時間だ。お友達は来なかったようだな」
「そ、そんな……」
セシルちゃんは演習場に現れませんでした。信頼していた友人に裏切られた気持ちになり、その場に座り込んでしまいました。
「ふふふ、正直言うとだね、君のような小娘を相手にするほどの時間は僕にはないんだ。だから優しい僕は、この決闘を無かったことにしてあげるよ?」
「ほ、本当ですか?」
私は俯いていた顔を上げ、彼を見ました。
「そうだね、その代わり条件が一つ」
彼は毅然とした態度で
「僕に逆らったあの女、そうセシル・リッツォがこの学院を退学するならこの決闘無かった事にしてやるよ」と言い捨てました。
あぁ、なんだかグダグダしてきたような感じが……しますよ!
この話で戦闘に入るか入らないか…考えた末入りませんでした。
次回は、戦闘から始まりますが戦闘シーンは短いです。
だって、噛ませのお坊ちゃんだもの!
暫くはダラダラとした展開が続いて行く予定でいます。戦闘シーンとかにがt
補足:名前の出たキャラは今後もいかしていく予定です。多分