ミサイル・ハンティング-2
グルジア某所 6月7日 1745時
MQ-9が鬱蒼と広がるグルジアの森林の上空を飛んでいる。無人機は、機首の光学/赤外線カメラと機体下に取り付けられたISRレーダーで地上を捜索する。画像はリアルタイムでサンガチャルイの司令部と地上部隊が持つタブレット端末、AWACSに送信され、MFDのある戦闘機にもデータリンクで表示されるようになっている。この作戦では、傭兵部隊は戦闘機、ヘリ、装甲車等にイスラエル製のデータリンクシステムを統一して搭載している。よって、全ての部隊で情報が共有でき、作戦はより効率よくなっていく。その後方では、AH-64とCV-22が飛んでいた。
「こいつはいい。数キロ先が見えるから、何を避ければ良いのかが一目瞭然だ」
シモン・ツァハレムはアパッチのMFDに映るUAVから送信されてきた画像を見ている。
「だな。それに、地対空ミサイルがあったとしても、身代わりになってくれる機能も付いているからな。素晴らしい」
戦闘機やヘリが無人機の近くで作戦を行う場合、UAVには赤外線フラッシュやレーダー発信装置が取り付けられ、囮の役目をすることがある。これはイスラエル空軍がよく使う手であり、実戦で幾つか成果を上げた。PLOやハマスといったテロリストがアパッチやブラックホークを狙って撃ったSA-7やSA-16が、UAVの妨害装置に引き寄せられて、あらぬ方向へ飛んで行くのだ。しかも、人が乗っていないから、撃墜されても人が死傷することは無い。この機能は、すぐにNATO各国の軍やPMC等に導入され、メーカーであるIAI社やノーロップ・グラマン社はこれで巨額の利益を上げている。
オスプレイはアパッチの後ろから付いてきていた。
「降下ポイントまであと5分。用意せよ」
ジェームズ・ルークが手のひらを全員に見せて合図した。3人の地上部隊員がM4に弾倉を入れ、撃鉄を起こした。カーゴランプが下がり、地上約50メートルのところでホバリングを始める。
「用意・・・用意・・・降下!降下!」
ロス、バーク、クラークの3人は鬱蒼と茂る森の中へと降りていった。
グルジア上空 6月7日 1801時
「"ゴッドアイ"より"ウォーバーズ編隊"へ。敵機の接近を確認。方位001。正面です」
リー・ミンが飛行中の仲間に警告した。
「こちら"ウォーバード2"、敵機を捉えた。マッハ1.2で急速に接近中。射程距離まであと3分」
ジェイソン・ヒラタはマスターアーム・スイッチをオンにした。AN/APG-80レーダーが辺りを捜索する。彼のF-16はAIM-120を2発、AIM-9Xを2発、GBU-38を8発と増槽を3本搭載している。彼はIFFを一度、確認した。応答は無い。
「こちら"ウォーバード2"、正面の機体にIFF反応は無し。敵機と断定。交戦する」
敵機はMiG-25RBだった。どうやらPMC部隊の様子を覗きに来たようだ。この偵察機はMiG-25戦闘機を複座化しており、かなり不格好な見た目をしている。このマッハ2.9という驚異的なスピードで飛ぶ飛行機は偵察機ながら、AA-11で武装していた。
「こちら"ゴッドアイ"、敵機はマッハ2.7で飛行中。MiG-25またはMiG-31と断定。注意して下さい」
リー・ミンが注意を促した。
MiG-25RBとF-16はマッハ2ですれ違った。ものすごい速さだったため、相手が武装しているかどうかはわからなかった。しかし、ヒラタはすぐにF-16をスプリットSで反転させるとミグの後ろに回り込んだ。
地上では戦闘機の爆音が響いている。時折、低空でジェット機が森を掠めていく度にジャック・ロスらは茂みに身を隠した。Su-25が低空飛行で機銃掃射や空爆をしていかないとも限らない。
「くそったれめ。まさかSu-25じゃないだろうな」
ロスがぼやく。
「あれに見つかったら最悪だ。ハインドの次に出会いたくない」
デヴィッド・バーグが銃を点検しながら言った。
「ああ。SA-16を持ってきたが、気休めにしかならないだろうな」
「くそっ」
「上空の連中頼みだ。なんとかしてくれることを祈ろう」
F-16はMiG-25よりも動きは敏捷だが、速度では劣る。だから、ヒラタはロックオンと同時にAMRAAMを放った。
AMRAAMは自身のレーダーで敵機を捉えた。ミグのパイロットはミサイルアラートが鳴るのと同時にチャフ撒きながら反転しようとした。だが、ミサイルは騙されなかった。ミグの近くに来た時に近接信管を作動させ、弾頭を起爆させた。ミグは片方のエンジンを破壊され、離脱しようとした。が、無理な機動をしたため、その負荷に傷ついた機体が耐えられず、空中分解を起こした。
『こちら"ウォーバード2"、1機撃墜』
ヒラタの声が佐藤が乗るF-15Cの無線から聞こえてきた。
「油断するなよ、またお客さんだ。こいつは・・・・何だ?」
南カフカス連邦のMi-24"ハインド"が1機、パトロール飛行をしていた。どうやら、アルメニア軍やアゼルバイジャン軍の動きを監視していたらしい。Mi-24はオスプレイとアパッチを発見し、接近してきた。
「10時方向、ハインドだ!やっぱり来やがった!」
ロバート・ブリッグズは毒づいた。アレに狙われたら一溜まりもない。
『お前らはとっとと前哨拠点に逃げ込め!ヤツの相手はこっちに任せるんだ!』
無線からツァハレムの声が聞こえた。
「了解だ!奴を撃ち落としてくれ!」
オスプレイはローターを前方に傾けると、最大速度で離脱していった。一方、アパッチは旋回しつつ、突撃してくるハインドに向かった。




